築58年のビルをオフィス、サウナなどの複合施設にリノベーションした神田ポートビルで、2021年グッドデザイン賞受賞した建築家の須藤剛さん。好きな建材は「なにでできているかわかるもの」だと言います。理由はラワンやフレキシブルボードなどの普遍的な素材こそ、取り入れ方でおもしろさが出せるから。おすすめの建材設備の魅力を詳しく聞いてみました。

ラワンの建具やタイルともマッチする「高圧木毛セメント板」

木毛セメント板とは、細長く削り出した木材(木毛)をセメントペーストで圧縮成型したもの。それより木毛が細かく、強度が高いのが特徴。写真は築33年の集合住宅をリノベしたスペース。

「上の写真の事例では、コンクリート現しにした天井や壁となじませるために、エントランス側の壁を高圧木毛セメント板で仕上げました。リノベーション向きの素材といってもいいかもしれないですね」。ラワンの建具やタイルともマッチしています。

 

グレーの素材と相性がいい「マルシカセラミックスのダークテラコッタ」

「釉薬がかかっていない、材料の色が分かるタイルを使いたい」と探していて偶然見つけたのが、同じく上の写真の床材です。

「素焼きのタイルというと南欧風のオレンジ色のものを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、こちらは濃い茶色で、落ち着いたシックな印象。コンクリートや高圧木毛セメント板などグレーの素材と相性がいいところも気に入っています」。屋外まで連続させて使用することで、のびやかな空間に。

 

さまざまな使い道ができる「ラワン無垢羽目板」

「ラワンは南洋材なので強度があり、無垢、ベニヤ、ランバーと使い分けられて、さまざまな使い道があるのでよく使います」

写真は木造3階建ての住宅をリノベした特殊塗料メーカーのオフィス。外壁の一面を、幅の狭いラワン無垢羽目板を縦張りにして仕上げました。

「住宅地ということもあり、近隣の建物との調和を意識しました。また、外壁にも室内にもラワン材を使うことで、屋外と室内の境界を曖昧にしたい、というねらいも」。

 

天井現した木製サッシのと相性も抜群「フレキシブルボード」

「フレキシブルボードは本来は下地材ですが、床や壁の仕上げとして使うことも多いです。昔からある素材で市場に広く流通している点、原料はセメントと補強繊維、とシンプルな点も僕好み。いろいろなメーカーから出ていますが、よく使うのはチヨダセラフレキという商品です」

写真は築35年の一戸建てをリノベしたお宅のLDK。キッチンの通路と、その先に続く廊下をフレキシブルボードで仕上げています。「現しにした天井や木製サッシとの相性もよく、掃除がしやすいのもメリットです」。

「TOTOアンダーカウンター式洗面器」&「toolbox混合水栓」

「洗面ボウルは埋める派ですね(笑)。見た目がスッキリしますし、手入れもしやすいので」という須藤さんがよく採用するのはTOTO のアンダーカウンター式洗面器L505。

同様の理由で水栓も壁づけにすることが多いそう。写真の新築住宅で採用したのは、toolboxの壁づけセパレート混合水栓L175。

「質感が上品で、指紋が目立ちにくいので、ニッケルサテンメッキ仕上げのものを選びました。主張しすぎない、さりげないデザインなのもいいですね」。

●教えてくれた人:須藤 剛さん

1980年埼玉県生まれ。北川原温建築都市研究所、ジャムズなど設計事務所勤務を経て2012年須藤剛建築設計事務所設立。築58年のビルをオフィス、サウナなどの複合施設にリノベした神田ポートビルで2021年グッドデザイン賞受賞