移籍マーケット最終日(8月31日)に決定した、FWカルロス・テベスとMFハビエル・マスチェラーノのウェストハム入り。ドイツ・ワールドカップでも活躍したアルゼンチン代表2人のプレミア中堅クラブ加入はイングランドサッカー界に衝撃を与えたが、一方で、今シーズン終了後にチェルシーやアーセナルといったビッグクラブへの売却を想定した、“腰掛移籍”との疑惑も飛び交っている。

 噂を否定するウェストハムだが、22歳のアルゼンチン代表コンビ獲得に必要とされる4000万〜6000万ポンド(約88億〜132億円)の資金を捻出できる財政状態にないのは明らか。ハンマーズ(ウェストハムの愛称)の買収に乗り出しているといわれるメディア・スポーツ・インベストメント(MSI)社のキア・ジョオラビキアン社長が、その足掛かりとして、保有権を持つ両選手を移籍させたとの説も浮上している。

 そして、詳細が不透明な今回の移籍に、UEFA(欧州サッカー連盟)が懸念を表明している。

「今回の移籍には、不可解な点があると指摘せざるを得ない。サッカー界において、ビジネスの占める割合は増え続けており、クラブへの忠誠心や愛情といった面が時代遅れと捉えられるような傾向がある。しかし、サポーターと同じく、サッカーはビジネス以上の存在である、と我々は考えている。彼ら2人が才能のある選手であることに疑いはない。今後10年間、ウェストハムでプレーするのであれば、それは素晴らしいことだ。しかし、同時に疑念を抱くのも仕方がないといえるだろう」

 一方、張本人のテベスは、ビッグクラブからの勧誘を認めながらも、ウェストハム入りを決断した理由を、次のように語った。

「イングランドサッカーを知るという意味でも、ウェストハムが一番だと思ったんだ。他にも興味を示していたクラブは2つあったけど、彼らはFWを4〜5人抱えるようなクラブだった。僕にとっては、プレーすることが一番重要だ。ビッグクラブにこだわるつもりはないよ」

 疑惑が渦巻くハンマーズの大型補強。真相が判明するのは、現在進行中のクラブ売却交渉の終了を待ってからになりそうだ。