去年に続き東急バスと東急が、横浜市郊外の公道で自動運転モビリティの実証実験を行いました。今回は地域住民も乗車。どう感じたでしょうか。また、バス営業所に設けられた遠隔監視設備も公開されました。

坂の多い住宅街を走行

 東急バスと東急が2023年3月7日(火)から約1週間、横浜市郊外に位置する青葉区すすき野エリアで、自動運転モビリティの実証実験を行っています。同エリアでの実験は、昨年に続き2回目。今回は、地域住民を乗せて実施されています。初日である7日、その様子が報道陣に公開されました。
 
 自動運転モビリティは8人乗り(運転手・助手を除く)で、マイクロバスのような車両。タジマモーターコーポレーション製です。リチウムイオン電池で走行し、自動運転に必要なレーダーやカメラ、ドライブレコーダーを搭載しています。最高速度は19km/hです。


自動運転モビリティ(2023年3月7日、大藤碩哉撮影)。

 実験コースは一周2.0kmほどの公道で、起伏に富んだ地形であるほか公園やスーパーマーケットなどもある住宅街です。歩道つきの片側1車線道路で、途中には信号交差点もあります。

 さて、子ども2人を含む住民5人を乗せた自動運転モビリティは、虹が丘営業所を出発(左折出庫)。そのまま緩やかな坂を上り、虹ケ丘公園の脇を通り突き当りの信号交差点まで進みます。

 交差点では道路工事が行われており、片側交互通行となっていました。障害物を検知した自動運転モビリティは一時停止。ただし今回は安全を最優先し、ここでのみ手動運転に切り替え。普段は東急バスの運転士を務める運転手が、手際よくハンドルをさばきます。

 交差点を右折し、再び自動運転モードへ。カーブを通過し、最初の停車ポイント(仮のバス停)に向かいます。左のウィンカーを点滅させ、所定の位置で自動運転モビリティは停車。後続車の運転手が、物珍しそうに眺めながら追い抜いていきました。

いざ無人 → 周囲の配慮が不可欠…?

 自動運転モビリティは、2か所目の信号交差点を難なく左折。先述の通り付近は住宅街のため、信号機のない横断歩道も多数存在します。自動運転モビリティは都度、横断歩道の手前で減速。もはや徐行に近いものでした。

 3か所目の信号交差点を左折後は、営業所まで1本道。途中にはスーパーマーケットなどがあり、路上駐車するクルマが見られました。自動運転モビリティは、対向車もしっかり認識しながら確実に避けていました。


前方に路上駐車を認識(2023年3月7日、大藤碩哉撮影)。

 とはいえ速度や機敏さを見ても、人間が操作するにはほど遠い印象です。自動運転モビリティの助手として乗車した東急の担当者は「いざ無人運転になったら、ほかのクルマのドライバーなど周りの人が『あのバスは自動運転だから』と配慮してあげるといった、地域ぐるみでの協力が不可欠でしょう」と話しました。

 15分足らずで営業所に帰着。乗車した50代の男性は乗り心地について「揺れは少なかった」としたうえで、「坂が多く、高齢化率は50%近いすすき野エリアは、病院や役所などへ向かう足が不十分だと感じている。自動運転モビリティが走ることで、それが興味をひくツールのひとつとなり、若い人にも魅力を感じてもらえると嬉しい」と話しました。

 小学生の子どもを持つという女性は「両親が今後、運転免許を返納した際や、子どもが習い事で少しだけ乗車するといった際に、役に立つと思う」と話しました。

子どもたちはどう感じた?

 そして2人の子どもと一緒に乗った母親は「公園やスーパーマーケットなどの前を通り便利だと思う。乗車中は沿道の方が手を振ってくれた」と話し、子どもたちも「楽しかった」と笑顔を見せました。

 東急バスと東急は「“移動”に関してこれまで以上のきめ細やかなサービスが求められている」とし、コロナ禍以降のライフスタイルの変化に加え、坂が多い地区での高齢化、運輸業界のドライバー不足といった数々の課題を、自動運転技術で解決したいといいます。


今回は地域住民が乗車(2023年3月7日、大藤碩哉撮影)。

 なお今回は、自動運転モビリティの遠隔監視設備が報道陣にのみ公開されました。場所は営業所の2階。大きなモニターが並んでいます。

 ここでは、自動運転モビリティに取り付けられたカメラの映像を合成し、人の視野と同等の映像が映し出されています。GPSで走行位置が地図に表示されるほか、運転手らと音声のやり取りもできます。ハンドルやアクセルなどが付いた、レーシングゲームのコクピットのようなマシーンを動かせば、営業所にいながら遠隔操作も可能です。

 ところで、自動運転において生命線ともいえるのが通信回線です。今回の実証実験では、大手3キャリアの回線を同時に用いているとのことですが、これは万一どれかが障害を起こしても確実に通信・制御するため、三重系になっているのです。その回線状況は、モニターの一番左側にリアルタイムで表示されています。