ボーイング・オーストラリアが開発中の無人戦闘機MQ-28「ゴーストバット」は、搭載する高度なAIによって、単独で長距離を飛びミッション遂行も可能だとか。ただ、実機を見てみると有人機が必要なくなるというわけでもなさそうです。

MQ-28が従来の無人機と異なるポイントは?

 オーストラリアのビクトリア州で2023年2月28日から開催されている国際エアショー「アバロン2023」。この会場で、ボーイング・オーストラリアが開発中の最新型MQ-28「ゴーストバット」が展示されました。同機は2021年2月に初飛行した多用途無人機ですが、実機が一般公開イベントで展示・披露されたのは今回が初めてです。


ボーイング・オーストラリアが開発中の多用途無人機MQ-28「ゴーストバット」(布留川 司撮影)。

 MQ-28は全長11.7m、全幅7.3m。外見上は昨今のステルス戦闘機を一回り小さくしたようなデザインですが、通常の有人戦闘機に対応できる加速性能と(飛行速度は現時点で非公開)、2000海里(約3700km)以上の航続距離を持っています。

 オーストラリアでオリジナル軍用機が開発・初飛行するのは実に半世紀振りのことであり、前出のボーイング・オーストラリアのほかに同国内55社がサプライヤーとして開発に協力しているそう。ゆえに、愛称の「ゴーストバット」というのも、オーストラリア固有の蝙蝠(コウモリ)に由来するといいます。

 2023年現在、軍用機の世界では、無人機自体はそれほど珍しい存在ではなくなりつつあります。しかし、MQ-28のコンセプトは有人機と共同で作戦任務(ミッション)にあたること。その点を計画当初から念頭に置いていたのが、従来の無人機とは異なる特徴だといえるでしょう。

 だからこそ、当初は「ロイヤル・ウイングマン」、日本語に訳すと「忠実なる僚機」というプロジェクト名で呼ばれていました。

多用途性に優れているのも大きなポイント

 MQ-28「ゴーストバット」は、AIによって制御され自律的な飛行と作戦遂行も可能ですが、前述したように単独任務だけでなく既存の有人軍用機と連携して行動できるのが一番の特徴です。

 これまでは航空戦で投入戦力を増やすには、より多くの有人戦闘機を出撃させる必要がありました。しかし、どの国の空軍でもパイロットや機体の数に限りがあり、また先進諸国では人件費の高騰や少子高齢化の進展などといった諸問題も抱えています。そういった懸念点を無人機で払拭しようという考えからMQ-28は生まれたといえるでしょう。


2人乗りのF/A-18F「スーパーホーネット」戦闘機と編隊を組むMQ-28「ゴーストバット」のイメージイラスト(画像:ボーイング)。

 また、攻撃や偵察といった任務中の危険な部分を有人機の代わりにMQ-28が担当することで、敵の反撃によって撃破・損耗しても、人的被害を軽減し、「戦闘」にかかるコストを低くする効果もあります。

 そのため、MQ-28はさまざまな任務に対応できるよう、機体先端のノーズ部分がモジュラー式ペイロードとして設計されています。ノーズ部分は任務に応じた複数の種類が用意され、それぞれにセンサーや用途に応じた搭載物が組み込まれ、これらを交換することでMQ-28は戦闘、偵察、電子戦など様々な任務で使えるそうです。

 ゆえに、ボーイング・オーストラリアの説明によると、MQ-28は新戦力というよりも、既存の軍用機(コンセプト画像や動画などでは戦闘機だけでなく、E-7A早期警戒管制機と連携する姿も描かれている)の能力を「拡張」するための無人機だといいます。

 MQ-28の開発完了と配備開始のスケジュールはまだ公式に発表されておらず、現時点では「AI制御による有人機との連携」というコンセプト自体も未知数の部分が多いともいえます。

 少し前までの無人機や人工知能について語る場合、戦場の完全無人化といったイメージが強かったのに対し、このMQ-28はそこまで飛躍したものではなく、あくまでも「有人機との連携」というものです。筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)としては、この発想の方が、無人機としてはより現実的で具体的なものなのだろうと感じました。