沖縄県の宮古島などには、観光客が見たら思わず二度見したくなるような、キャラが濃過ぎるおまわりさんの立ち人形「まもる君」がいます。インパクト大のマネキンですが、中高年にとっては、ちょっと懐かしさを覚えるかもしれません。

南国、なのにやけに美白!

 沖縄県の宮古島などには、観光客が見たら思わず二度見したくなるような、おまわりさんの立ち人形がいます。若い方であれば「ヤバ!」という反応でしょうか。しかし、中高年の方には「懐かしい」と目を釘付けにするかもしれません。彼らの名前は「宮古島まもる君」。やけにリアルで、そして南国にいるにも関わらずやけに美白なマネキンです。


「まもる君」シリーズの一部。

「宮古島にインパクトの強い人形がいる」――。筆者は知人に教えられ、対面したまもる君は、確かに「ヤバ!」でした。彼と1対1で見つめ合うと、眉と目は濃く、微妙に引き締めた口元を持つ表情に、「負けた!」という感情がよぎります。調べてみると、インターネット上にも根強いファンもいるようで、誕生のいわれや肩書、エピソードが記されています。

 島内にひっそり立つ程度かと思っていましたが、大型スーパーマーケットに入って、ここでもびっくり。菓子やお酒などの土産物コーナーがあり、「すすむ君」や「いさお君」など兄弟やクローンが紹介されていました。

 どうやら設定上、「まもる君」は20人兄弟で、それぞれに名前がついているようです。長男である「まもる君」は宮古島警察の入り口に、唯一の女性兄弟である「まる子ちゃん」と並んで立っています。

 宮古空港の土産物店にも、「まもる君ブラザーズ」はしっかりいます。観光ガイドの表紙にもきちんと登場します。

 もうこの地域は「まもる君」だらけですが、筆者は彼らから目を離せないのは、懐かしさも覚えたからです。

「まもる君」たちはなぜこの地に?

 まもる君を「懐かしい」と思った人は、1970年代に少年期だった人でしょう。

 この頃は、地方の道路沿いに警官の姿をしたマネキンがありました。筆者の住んでいた地方では、夜間の速度違反や飲酒運転へ警告し、防止するため、ベルトや肩掛けのストラップ、ヘルメットには反射材が塗られ、検問かと運転者をドキリとさせていました。

 しかし、当たり前ですが正体はすぐにばれます。腹いせなのでしょう。顔に赤いペンキを塗られたり壊されたり、“公務執行妨害”にあった哀れなマネキンもいました。いつしかマネキンはなくなりましたが、「まもる君」たちを見て再会した気持ちになるのです。

 さらに、白い顔に濃い目元は、亡くなったタレントの志村けんさんのコント「バカ殿」や、1970年代の有名映画の登場人物を思い出させます。横溝正史の長編推理小説を映画化したこの作品の登場人物は今も不気味なだけに、余計「まもる君」たちへ目は行くのです。筆者の知人はその姿を見て、あまりの白さに「ビジュアル系バンドかよ!」「某『美白の女王』じゃないですか!」と話していました。


筆者が撮影した旅行誌にも「まもる君」が全面に押し出されていた。

 そして、やや垂れた、重い思いに耐えているかのような目と、少し「へ」の字に曲がった口元をしたまもる君を見つめていると、想像は一層膨らみます。

「まもる君」は、この地区の交通安全協会が設置したもので、交通安全への願いや法令遵守のために設置されたとされています。島民や観光客が交通事故に遭わないよう、風雨はおろか台風の日でも背筋を伸ばして、道行人や車を見守っている――というわけです。

 しかし「まもる君」たちは、速度違反をするクルマが絶えず、心配が尽きないと思っているようにも感じます。彼らが目を離せないキャラなのは間違いありません。宮古島に行く度に目がいきそうです。