使用済み下着と排泄物を売買…35歳男性が「変態性欲者向けフリマサイト」運営で実感した"驚きの需要"
※本稿は、中村淳彦『同人AV女優 貧困女子とアダルト格差』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
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■デジタルによって女性の裸の価値は下がったのか
本書はアダルト業界に詳しくない編集者が企画し、「デジタル化によって女性の貧困や格差が進んでいるのではないか?」という彼の仮説から始まっている。
確かに紙のエロ本は消滅といった状態となり、女性の参入過多が原因の裸とセックスのデフレが起こり、かつては異常に利益率が高かったAV業界(適正AV業界)の衰退が続いている。
AV新法の規制強化がトドメとなって、出演料の低下と撮影数の減少が止まらなくなって生活できない女性が続出している。
デジタルによって女性の裸の価値はさらに下がったのでは? という仮説から始まった取材だったが、それはまったくの杞憂(きゆう)だった。
テクノロジーの進化によって素人が個人でアダルトビデオを制作できる時代に突入し、同人AVやポルノハバーという新しい潮流が誕生した。進化したデジタル機器やプラットホームを駆使した者から合理的に稼いでいる。
旧態依然として最大手企業の独占によって搾取され、誰にも認められない自主規制にがんじがらめになりながら貧困化する適正AVに固執する者と、一歩外に踏み出して同人AVやポルノハバーに挑戦する者との間に壮大なる格差が生まれていた。
■「上場企業の部長くらい稼ぐ」変態向けの古物売買サイトの運営
先に紹介した村上太郎のスタジオからの帰り、最後に景気のいい話を聞きたいと歌舞伎町に寄ることにした。
思い浮かんだのは、歌舞伎町二丁目で複数の事故物件が報告されている分譲マンションの一室に籠りながら、変態性欲者向けの古物売買サイトを運営する岸田悠馬(仮名、35歳)だった。
彼は5年前に変態性欲者向けのフリマサイトの運営を始めて、売買価格20パーセントの手数料収入で暮らしている。
年収はうなぎのぼりで、「まあ、上場企業の部長くらいは稼いでいるかも」と言う。突然、歌舞伎町の自宅を訪ねたが、個人名&サイト名を匿名という条件で取材を受けてくれた。
岸田悠馬は大学卒業後、サラリーマンを経験し、10年前に辞めたあと、ITを独学で学んでエンジニアになった。
そして、5年前に広告代理店が運営する売上の低かった古物売買のブルセラサイトを任された。自宅に籠って何度もリニューアルを繰り返しながら人気サイトに育てている。
売上が月100万円くらいの段階で事業の立て直しを任されて、いまはそれが5〜7倍になった感じ。使用済み下着だけじゃなくて足専門とか熟女専門とか、いろいろ横展開をやっているうちに「5ジャンル5サイト」になった。
エロのニッチな部分でいくと、売上は上がる。ニッチも深掘りすると、とことん需要があるのでそれがエロの面白いところ。
■女性が落札した男性に排泄物を冷凍して送る
彼が運営しているサイトでは、女性たちがこぞって使用済みの下着や排泄物を出品している。日々、熱量を感じる取引がモニター上でされている。
女性利用者はシングルマザーとか、就労収入が低い地方の貧困女性が中心で、ブルセラで生計を立てるというより、お小遣いの足しになっている。
だいたい稼いでいる人で月20万円で、その領域では頂点。ほとんどは月3〜5万円が平均です。パート代にプラスアルファみたいな感じです。
女性利用者は8割以上が地方在住という。使用済み下着を販売する女性は18歳〜20代後半がメイン、購入する男性利用者も8割以上が地方在住で、年齢は40代、50代だという。
あと重要な要素は、臭い。臭ければ、臭いほど人気と価格はあがります。“あまりにも臭い”って人気を博している女性もいます。
■「わいせつ物とならない映像」が販売の前提条件
岸田悠馬は、Macのキーボードを叩くと、運営するサイトを見せてくれた。使用済み下着、熟女、靴下、排泄物とサイトが分かれている。
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メインの使用済み下着に行くと、ランクインする若い女性たちの写真がズラリと並び、出品が新しい順番に販売されている下着が並ぶ。価格は2000円、3000円が多く、あらゆる分泌液で汚れまくった6500円の下着が最も高かった。
そして排泄物のサイトに行くと、女性の年齢は少し上がる。大便の排泄自画撮り動画の販売が中心で、価格は2000〜3000円。尿、大便そのものも販売されるが、ともに2000〜3000円くらいの価格帯だった。
大便の排泄動画を撮る女性たちは、性器が見えないように工夫を凝らし、わいせつ物とならない映像が販売の前提条件だと言う。変態向けに自分自身の排泄映像を販売するのは、立派な同人AVである。
大便はタッパーに入れてそのまま送ったり、冷凍する人もいて、それぞれ。僕も誰が買うのって信じられなかったけど、日本は変態性癖の男性が多くて、驚くほど需要がある。
■大便を売る女性は30代が中心なワケ
利用する女性たちは、いきなり大便を販売しているわけではない。
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使用済み下着から始めて、慣れていくうちに排泄物に移る。少し年齢層が高いのは、使用済み下着は若い女性たちの激戦区となっているからだろう。
地方の女性が中心となると、多くは家庭持ちだ。販売サイトにアップしているそれぞれの画面撮りから、何となくの背景は想像がつく。
売買の作業をするのは夫と子どもが不在の平日昼間、自宅リビングや近隣のショッピングモールで撮影をしている。
排泄映像は自宅トイレではなく、自宅リビングのテーブル上やショッピングモールの広いトイレで撮っている女性が多かった。
それとコロナで下着や排泄物を売りたがる女性はより増えた。出品する女性同士の競争も生まれて、どんどん価格が安くなったり、汚れが激しくなったり、大便に移動したりしています。
排泄物が好きな変態男性にも、性癖はいろいろある。女性の排泄を見たい、ウンコが欲しい、尿が欲しい、排泄物の臭いを嗅ぎたい、食べたい、など本当に用途や目的は細かく分かれている。
お小遣い稼ぎで参入した女性たちは売買に慣れてくると、変態男性たちのニーズを察する。オプションで大便がついた使用済みトイレットペーパーをつける、排泄時に拭かないなど、女性たちはそれぞれ工夫をして販売している。
岸田悠馬は腕を組んでそう言い、日本人男性たちの底なしの変態性欲に感心していた。
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中村 淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター
1972年生まれ。著書に『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)、『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮新書)『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)など。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買、介護、AV女優、風俗などさまざまな社会問題を取材し、執筆を行う。
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(ノンフィクションライター 中村 淳彦)