アップルの独自設計による「Apple M2」チップに、よりパワフルな「M2 Pro」と「M2 Max」が追加されました。2月3日には、上位のM2チップが選べる14インチ・16インチの「MacBook Pro」と、初めてのPro系チップも選べる「Mac mini」が発売されます。各実機によるファーストインプレッションを報告します。

M2 Maxを搭載する16インチの「MacBook Pro」と、M2 Pro搭載の「Mac mini」のファーストインプレッションを報告します

MacBook史上最強のモンスターマシンが誕生!

Apple M2チップは2022年のWWDCで発表され、現行の13.6インチ「MacBook Air」と13インチ「MacBook Pro」で初めて搭載されました。M2チップは、秋に発売されたiPad Proにも広がりました。新世代の5ナノメートルプロセスノードにより製造されるM2チップは、先代のM1チップからCPU・GPUのパフォーマンスと電力効率が向上。Neural Engineとの連携により、精度の高い機械学習処理をこなします。

新しい14インチ・16インチのMacBook Proには、M2チップのアーキテクチャを拡大し、CPUとGPUのコア、ユニファイドメモリが充実したM2 ProやM2 Maxを選んで載せることができます。価格は、14インチのM2 Proモデルが288,800円から、16インチのM2 Proモデルは348,800円から。

MacBookシリーズの中で最大のディスプレイサイズを誇る16インチのMacBook Pro。心地よいタイピング感を実現したバックライト付きMagic Keyboardを搭載しています

今回、筆者はM2 Max搭載、12コアCPU/38コアGPUのフラグシップ仕様である16インチMacBook Proを試す機会を得ました。メモリは32GB/64GB/96GB、ストレージは1TB/2TB/4TB/8TBから選択できます。

外観は、2021年秋に発売したM1チップ搭載の16インチMacBook Proから変わっていませんが、中味は大きく進化しています。

M2 Pro・M2 Maxチップにより負荷の高いタスクの処理能力が向上。バッテリーパックのサイズは変えず、チップの電力効率を高めることでバッテリーによる駆動時間を延ばし、なおかつ電源に接続している状態と変わらないほどパフォーマンスを安定させています。あくまで目安ですが、筆者が新しいMacBook Proを電源につながず、原稿を書いたり、写真の加工編集、動画や音楽のストリーミング再生に使い倒したところ、24時間以上しっかりと持ちこたえてくれました(24時間経過時点のバッテリー残量は約30%でした)。

16インチのMacBook Proには140W USB-C電源アダプタが付属します。高速充電にも対応します

安全なMagSafe 3端子。Thunderbolt 4/USB-Cポートも本体の充電に使えます

高速ワイヤレス通信は、6GHz帯を使う新規格のWi-Fi 6Eをサポートしています。これを活用できる環境が整えば、速く安定したWi-Fi通信が可能になります。

HDMIポートは外部8Kディスプレイへの出力と、マルチチャンネルオーディオにも対応しました。

本体の質量は、16インチのMacBook Proが2kgを超えていますが、14インチのモデルは1.6kg台。1.4kgの13インチMacBook Proと比べても遜色のないポータビリティを実現しています。飛行機などによる長旅の道中にも、4K動画編集などの重いタスクがこなせます。「できるビジネスパーソンのモバイルノート」としてもおすすめです。

Mac miniはエントリー機なのにプロ並みの性能

Mac miniのシステムチップはM2、またはM2 Proチップが選べます。M2搭載のエントリーモデルは84,800円から。価格も手ごろ感があります。本体のほかにディスプレイやキーボード、マウスなどの周辺機器を別途揃える必要はありますが、上手にコーディネートすればトータルでM1搭載24インチiMacの174,800円からという価格よりも安く、「デスクトップのMac入門」が果たせます。オールインワンのiMacに対して、Mac miniはアップル純正品を含むさまざまな周辺機器の中から使いやすさ、デザインなどを吟味してカスタマイズを楽しめる良さもあります。

スマートなデスクトップスタイルのMac mini。サイズは縦横19.7cm、高さが3.58cm

Mac miniも、2020年に発売されたM1チップ搭載モデルから本体サイズはほぼ変わっていません。デスクトップなどに置くことを想定している場合、縦横19.7cmのスペースが必要になることも覚えておきましょう。

中味はシステムチップがアップグレードされたほか、メモリはM2モデルが最大24GB、M2 Proモデルは最大32GBまで強化できます。ストレージの最大容量もM1モデルは2TBでしたが、M2 Proモデルは予算が許せば8TBまで盛れます。ちなみに、M2 Pro搭載Mac miniのカスタマイズ可能なハードウエアを“全部乗せ”にすると、価格は実に632,800円になります。

背面に並ぶインターフェースは、M2とM2 ProモデルでThunderboltポートの数が異なり、M2 Proの方が2基多い計4ポートです。USB-Aポートは引き続き搭載されました。筆者は、ハイレゾ対応のDAC内蔵ヘッドホンアンプなど、変換アダプターを使わないとUSB-C接続ができないデスクトップオーディオ機器をいくつか使っているので、USB-Aポートに愛着を持っています。M1搭載のiMacにはないMac miniの魅力のひとつです。

M2 Pro搭載機は、4つのThunderboltポートを搭載しています。USB-A端子やイーサネット端子が残されているところもうれしいポイントです

Mac miniも、高速ワイヤレス通信は新規格のWi-Fi 6E対応です。HDMIポートはマルチチャンネルオーディオ出力に対応します。たとえば、AVアンプなどを経由してマルチチャンネルスピーカー環境につなげば、Apple TV+のドルビーアトモスによる空間オーディオ対応の作品が大迫力のイマーシブ環境で楽しめます。マルチメディアプレーヤーとしてもMac miniは優秀です。

M2、M2 Proチップを搭載するMac miniには、動画ファイルの処理に特化するメディアエンジンが初めて搭載されました。最大5本の8K/30pのProRes動画、最大23本の4K/30p ProRes動画を同時に再生できるスペックを備えているそうです。そこまでタフな作業をMac miniに任せる機会はなかなかないと思いますが、つまり新しいM2搭載Mac miniはプロのムービークリエイターも満足できる最小サイズのデスクトップMacだということです。

4Kビデオ&空間オーディオ再生の決定版

新しい14インチ・16インチのMacBook Pro、M2搭載Mac miniを試してみると、すこぶる優秀なエンターテインメントマシンであることがよく分かりました。これから購入を検討する際にチェックしてほしいポイントがあります。

MacBook Proは、やはり圧倒的に高画質なLiquid Retina XDRディスプレイです。アップルによるHDRムービーのナチュラルな画づくりを堪能できるMacは14インチ・16インチのMacBook Proだけ。または、とても高価なApple Pro Display XDRをゲットして、据え置きタイプのMacにつなぐしかありません。

さらに、14インチ・16インチのMacBook Proならば、内蔵するスピーカーがドルビーアトモスによる空間オーディオ再生にも対応しています。単体でApple TV+のオリジナルコンテンツなどを迫力の映像+サウンド環境で楽しめる最良の選択肢になります。

MacBook Proが搭載する6スピーカーサウンドシステムは、Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオコンテンツのサウンドを驚くほど包囲感豊かに再現します

iPhoneで撮影したProRes動画や、Dolby Visionの4K/HDR動画をAirPlay経由で再生してみると、14インチ・16インチMacBook ProのLiquid Retina XDRディスプレイに映すビデオの高い没入感が実感できると思います。色合いやコントラストのバランスがとても自然に再現されるので、iPhoneで映像を撮った瞬間を何度も巻き戻せるような楽しさがあります。

iPhone 14 Proで撮影した4K/HDR動画をAirPlayで飛ばして再生。時を超えて撮影した場所の情景がLiquid Retina XDRディスプレイに再現されます

内蔵スピーカーによる空間オーディオも迫力たっぷりで最高ですが、AirPodsシリーズ、またはBeats Fit Proがあれば「ダイナミックヘッドトラッキング」を効かせることもできます。

Mac miniは、予算の折り合いが付くならばApple Studio Displayと組み合わせると、これ以上ない極上のデスクトップシアター環境が誕生します。Studio Displayには空間オーディオにも対応する6スピーカーシステムが搭載されているからです。

Studio Displayを相棒にできたら、Mac miniでApple Arcadeのゲームも楽しむべきです。最新のmacOSはPS5用ワイヤレスコントローラー「DualSense」などさまざまなBluetoothゲームコントローラーに対応しているので、人気のゲームコンソールを超える没入体験が味わえるかもしれません。

Bluetooth対応のワイヤレスゲームコントローラを接続。Mac miniとStudio Displayの組み合わせでApple Arcadeのタイトルなど、ゲームコンテンツが最高の映像とサウンド環境で楽しめます

最後に、MacBook ProとMac miniはともに、ハイインピーダンス仕様のハイエンドヘッドホンを力強く鳴らせる3.5mmヘッドホン出力を備えています。しかも、内蔵するDACは最大96kHz/24bitの「ハイレゾ対応」です。Apple Musicがハイレゾロスレス音質で配信している楽曲が、CDを超えるクオリティで楽しめる最もシンプルなオーディオシステムをぜひ楽しみ尽くしてください。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら