普通に自転車持ち込んでる!? 電車で“チャリ通”が日常 車社会のローカル私鉄
群馬のローカル私鉄、上毛電気鉄道は、通常運賃で自転車を車内へそのまま持ち込めます。いまでこそ自転車を持ち込めるサイクルトレインの運行が増えてきていますが、ここではすでに“日常”です。
「電車に自転車」が当たり前の光景 チャリ通・チャリダーいらっしゃい
群馬県前橋市の中央前橋駅と桐生市西桐生駅を結ぶ上毛電気鉄道は、ワンマン列車が走る典型的なローカル私鉄のひとつで、駅もほとんどが無人です。しかし、同線にはひとつ大きな特徴があります。通常運賃で、自転車を持ち込めるということです。
ママチャリが車内へ持ち込まれている上毛電鉄の列車内。自転車は後方車両へとの案内がある(斎藤雅道撮影)
ロードバイクを折りたたんだり、専用の袋に入れて持ち込む輪行ではなく、走行可能な状態でそのまま自転車を持ち込めます。こうした列車は「サイクルトレイン」と呼ばれ、いまでこそ大都市の路線でも、自転車の愛好家向けに運行が増えてきていますが、ここではもはや、日常の風景となっています。
上毛電鉄がサイクルトレインを実施したのは2003年から。駅員さんに聞いた話によると、利便性の向上と、赤城山麓サイクリングコースを使うロードバイカーの利用促進という狙いがあったそうです。2両編成の後部車両のみに自転車を持ち込め、着席もできますが、自転車が倒れないように手でささえている必要があります。
持ち込み時間は、平日に関しては中央前橋8時00分発から、西桐生7時47分発から、それぞれ終電まで。土休日および春・夏・冬休みは、終日持ち込みが可能です。夏祭りや行事などによる混雑時は断られる可能性もあるそうですが、基本的には予約なしで利用できます。乗ってみると、休日でもロードバイク以上にママチャリのような普通の自転車が多く、通勤・通学で利用されていることがわかります。
現在このサイクルトレインは年間約4万回以上の利用があるそうです。群馬県は2021年の自家用乗用車の世帯当たり普及台数が全国4位というクルマ社会、そのローカル私鉄としては、注目すべき数字ではないでしょうか。なお、中央前橋駅、大胡駅、赤城駅、西桐生駅では、無料で自転車の貸し出しも行っています。
ちなみに、上毛電鉄は古い鉄道施設がよく残っていることでも知られます。大胡駅の駅舎や電車庫などは登録有形文化財・県近代化遺産に登録されているほか、1928年の開業に際して造られたデハ100形電車は不定期で臨時運行されることもあります。有人駅の場合、改札で切符をパンチされるのも、今ではなかなか体験できないことかもしれません。