東京〜大阪間には多数の夜行バスが運行されています。中でも2列シートの個室バスは2種類しかなく、そのひとつが最高設備「プレシャスクラス」を備えたJRバスの「ドリームルリエ」号です。どのような接客設備なのでしょうか。

値段はやや強気?

 東京と大阪を結ぶ夜行バスの草分けは、1969(昭和44)年の東名高速道路全通と共に誕生した「ドリーム」号です。当初は国鉄バスのみでしたが、1980年代後半の規制緩和で民間バス会社が参入したことで、日本一競争が激しい区間となっています。

 2023年1月現在、夜行バスで最高グレードである2列個室シートを備えたバスが複数運行されているのは、東京〜大阪間だけです。それはJRバス「ドリームルリエ」号の「プレシャスクラス」と、関東バス・奈良交通の「ドリームスリーパー」です。


東京〜大阪間の夜行バスとして運行されるJRバス「ドリームルリエ」号(2022年12月、安藤昌季撮影)。

 今回、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は「ドリームルリエ」号に乗車しました。これは西日本ジェイアールバスとジェイアールバス関東の共同運行で、2017年から運行されています。なお、2018年に登場した2代目車両では、「プレシャスクラス」が4席から6席に増やされました。

 ベース車両は日野自動車の「セレガ」で、追突被害軽減ブレーキシステムや衝突防止補助システム、ドライブレコーダーを備えたハイテク仕様です。

「ドリームルリエ」号は2クラス制。1+1列配置の「プレシャスクラス」が1万3000〜1万8500円、1+2列配置の「アドバンスクラス」が1万〜1万3500円です(いずれも東京〜大阪間の通常運賃)。同じJRバスの「青春エコドリーム」号は最安4000円。また、同区間を新幹線自由席で移動すると1万3870円ですから、強気の運賃設定です。

ほかにバスあるも「ドリームルリエ」号のみ満席

 筆者は東京駅八重洲口を火曜日の23時に出発。10分前に「青春エコドリーム17号」、10分後に「グランドリーム27号」、そして「ドリームルリエ21号」と同時に「青春エコドリーム23号」も運行されています。その空席状況ですが、平日なのに「ドリームルリエ」号だけが満席、前後の2本は「◎」(空きあり)となっていました。

「プレシャスクラス」はバスの運転席直後に設けられています。個室の入口部分にカーテンがあり、閉めると個室となります。ただし上部の壁は開いているので、ほかの乗客が立っていると頭頂部が見えます。

 座席は幅61cm、リクライニング角度156度を誇る、大型リクライニングシートです。「座席ファン」として、日本中の乗りもの座席に座った筆者ですが、この「プレシャスクラス」は日本国内の乗りもの全てと比較しても、最高レベルの座席だと思いました。

 リクライニングと連動して上がる座面、柔らかい枕、低反発素材を用いたクッション。近年の座席は「堅い」セッティングが多いですが、柔らかい方が疲労を感じないと筆者は思います。レッグレストはヒーター付き。フットレストと連動し、最もリクライニングした際は、無理ない姿勢で横になれます。座席幅も十分で、シートベルトをする必要がありますが、寝返りが打てるほどです。

 特筆すべきは、機能的な個室内の設備です。フットレストが開閉式で小物が収納できますし、頭上の取りやすい位置に荷物置き場があり、フック付きの網があります。単なる荷物置き場と異なり、荷物が落ちてくる心配がないため安心感があります。

「アドバンスクラス」も取材

 個室前方の壁には小さなネットとドリンクホルダーがあり、側窓の下の使いやすい位置にコンセントもあります。通路側の個室側壁にはフレシキブルアームの読書灯と、タブレットが載る程度の小さなテーブルも備わります。

 惜しむらくはテーブルが小さく、安定性がやや悪いことです。個室内で食事をした際に、食べ物の置き場がありません。ほかの個室を備えたバスでは、個室の前壁に折り畳み式の大型テーブルを設けている例もあります。

 アメニティは毛布、ウェットティッシュ、耳栓、アイマスクです。アイマスクが暖かいのは、とてもありがたいことです。総合すると「プレシャスクラス」はとても機能的な配置もあって、数ある個室バスでも最上位の快適性だと感じました。


「ドリームルリエ」号の「アドバンスクラス」(2022年12月、安藤昌季撮影)。

 さて、車内後部にあるのが「アドバンスクラス」です。後日、ジェイアールバス関東の車庫を取材し、その際に座らせて頂きました。

 座席幅は46.5cm、リクライニング角度148度と、「プレシャスクラス」よりやや狭いですが、背もたれと座面が連動するゆりかごのようなクレイドルシートは素晴らしい出来栄えで、無理なく眠ることができます。

 座席以外の設備は「プレシャスクラス」と同等で、座席上など、荷物置き場も必要十分でした。プライベートカーテンも個室感があり、いわゆる「3列シート」のバスでは最高レベルの快適性だと思います。ただ、やむを得ませんが、窓側の席から通路に出るのは気を使う感じがあり、選べるなら通路側の席の方がいいかもしれません。

夜間でもカーテンを開けられる 個室ならでは

 なお、長距離バスですから、バスの後部にトイレも備わっています。ただ「アドバンスクラス」の通路が狭めなので、筆者は気兼ねして、SA・PAの休憩設備を利用しました。

 個室バスの良いところは、夜間でもカーテンが開けられること。「プレシャスクラス」でも1番・2番個室は、側窓と座席の位置が合っており、景色が見やすいです。


平日利用にもかかわらず「ドリームルリエ」号だけが満席だった(2022年12月、安藤昌季撮影)。

 バスは東京駅を出発したあと、バスタ新宿に立ち寄ります。10人ほどが乗車して、バスは満席となりました。バスタ新宿出発後、消灯されます。かなり真っ暗になるので、照明が必要なときは、手元の読書灯が便利です。

 途中、高速道路上の2か所で休憩が入ります。場所はSA・PAの混雑状況次第のようです。気になったのが、出発前に運転手が個室のカーテンを少し開けて、戻っているかを確認していたこと。事前に確認しない旨が自動放送で流されたものの、運転手が放送で訂正していましたから、休憩場所で戻ってこない乗客がいたのだと思われます。こうしたイレギュラーなケースに対し、例えば「座席に一定以上の重量がかかっている場合には運転席のランプが点灯する」ような仕組みがあるとなお良いですね。

 大阪駅には翌朝7時31分着の到着。「プレシャスクラス」利用で、ほとんど疲労は残りませんでした。


※一部修正しました(1月23日10時37分)。