ユーベ(ユベントス)を率い04−05・05−06季と連覇を達成した名将カペッロ監督だが、実績とは裏腹にイタリア国内での人気は凋落する一方。スキャンダル判決“04−05・05−06季の優勝剥奪、−17ポイントの罰則を含むセリエB降格(20日現在)”に加えてカンナバーロ、ザンブロッタ、エメルソン、ビエィラ、トゥラム、イブラヒモビッチが本拠地トリノから去るなどサポーターが味わった屈辱は計り知れない。

厳しい現実を叩き付けられたサポーターの心情も時間とともに変移、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙の調査によると52.9%が「もう法廷争いに終止符を打つべきだ(20日付)」と思っている事が判明。名門崩壊の現実を受け入れてセリエBからの再出発を応援するサポーター間に流れる暖かい空気とは対照的に、カペッロ監督に対する風当たりは強い。04−05季開幕前に就任したカペッロ監督は愛弟子エメルソンを軸に連覇を達成したが、カペッロ在籍期間にクラブのシンボルであり国民的英雄デル・ピエロが先発メンバーに名を連ねる事はほとんどなかった。伝統の白黒を無機質な灰色に染められた失望からくるサポーターの不満を優勝と言う結果で抑えてきたカペッロ監督だったが、名門クラブ史上最大の危機に一人だけ逃げる準備を整えていたのではサポーターの怒りを抑えられるはずもない。

スキャンダル騒動に明け暮れる中、レアル・マドリー幹部とのディナーがスクープ撮されたカペッロ監督。W杯期間中に起きた“ペソット自殺未遂事件”の際にはデル・ピエロ、ザンブロッタがアズーリ(イタリア代表)を代表して一目散に病院へ向った。再建に向けユーベ会長コボリ・ジリが大勢のサポーターの前で「カペッロ続投」を公約した数日後、レアル・マドリー就任が正式発表されている。

B降格が噂されていた中で真っ先に「自分はユーベに残る」と宣言したデル・ピエロ、「代理人にはもう移籍先を探さないで」と頼んだネドベド。新シーズン初公式戦となった19日、イタリア杯マルティーナ戦に駆けつけた6760人のサポーターを前に、新生ユーベは3−0勝利をプレゼントした。

スタンドにはユーベを心から応援するサポーターの姿とともに、「カペッロ:メルチェナリオ(守銭奴)、デル・ピエロ:レジェンダリオ(伝説)」の横断幕も掲げられた。的確な状況判断で華麗な経歴を築き上げたカペッロ監督だが、今回は状況判断が速過ぎたようだ。デル・ピエロの名門再建に対する姿勢から大物選手達の移籍に涙を呑んだサポーターも、カペッロ監督の勝ち逃げだけはどうしても許せなかったのだろう。