なぜ?「空自次期戦闘機に似すぎ」な戦闘機案、仏でほぼ同時に出現! ソックリ機なのも仕方ない?
日・英・伊の3か国共同開発との発表にともなって公開された航空自衛隊の次期戦闘機の新イメージ。実はこの少し前に、仏国でそれにあまりにも似たイメージをもつ機体が公開されています。なぜでしょうか。
そっくりな要因は「V 字尾翼」?
航空自衛隊の次期戦闘機は、2022年12月9日に日・英・伊の3か国共同開発と発表されました。実はその8日前、仏が独とスペインと共同開発する次世代戦闘機(NGF)について仏メーカー、ダッソーの発表がありましたが、2枚の戦闘機のイメージ図は、「同じ機体?」と思わせるほどでした。そっくりなのを特徴づけたのは「V 字尾翼」ですが、なぜこうも似たのでしょうか。
日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:防衛省)。
航空自衛隊の次期戦闘機のイメージ図は、これまでの発表と空気取り入れ口上の主翼の前縁に違いがみられるものの、水平尾翼と垂直尾翼をまとめたV字の尾翼が描かれています。
一方、仏NGFは2019年のパリ航空ショーで発表された実物大のコンセプトモデルはシャープさが際立ち、様相は次期戦闘機と異なっていたものの、ダッソーが2022年12月1日に、公式サイトに載せたエアバスとの「産業的合意」と次のフェーズへの移行を伝える報道があった際にアップされた、仏NGFのイメージ図は次期戦闘機にそっくりでした。こちらも突き出た尾部にV字尾翼を描いています。
ただ、そもそも似た性能や機能を求めれば、航空機の外形は似てくるというのは珍しいことではありません。それでも、ふたつの機体が似ていると思わせたのは、V字尾翼のためでした。
2機が似た「V字尾翼」採用の理由…なぜ?
航空機は安定性が確保できれば、米空軍のB-2や12月に公開された米空軍の新型機B-21「レイダー」のように、垂直尾翼が無くても飛行に支障がありません。無くすまでいかなくても、2対の尾翼を1対にまとめれば空気抵抗は減り、“突起”をなくすことでステルス効果もより期待できます。
アメリカ空軍の最新ステルス爆撃機B-21(画像:ノースロップ・グラマン)。
ステルス機能が取り入れられる前でもV字翼を持つ機種として、仏のフーガーCM.170「マジステール」という練習機や、V字尾翼で試験が行われた米空軍のXF-91などがありました。
ただ、航空自衛隊の次期戦闘機と仏NGFのふたつのイメージ図に、V字尾翼が描かれたのは、以下の「性能以外の目的」というのも推測できるかもしれません。
「性能以外の目的」とは国民への情報発信、すなわち「広報」です。
世界初の本格的なステルス戦闘機は米空軍のF-22ですが、それと採用を争ったノースロップ・グラマンのYF-23は、F-22より未来的な姿をしていました。ステルス性は良好だったとも伝わる、この未来的なYF-23を強く印象付けたのが、菱形をした主翼と共にV字尾翼でした。
これから開発をスタートし、近い未来に活躍する戦闘機をアピールするには、その印象を強くしなければなりませんし、開発費に税金を充てる以上、国民への「訴求力」も必要です。このため、次期戦闘機も仏NGFも「未来的でカッコいい」という印象を与えやすい、似たイメージ図になったとも思われます。
実際は、次期戦闘機と仏NGFはどのような姿で現れるのでしょうか。これらはあくまでイメージ図。 “似たもの同士”だった2つの計画が、今後どのような差が出るかは、徐々にベールを脱いでいくことになるでしょう。それだけに2つの新戦闘機の開発の今後の展開は一層注目を集めることになりそうです。