道路の白線が、不規則にボコボコしている、凹凸がある、規則的なスジが入って――これらは、滑りにくく視認性をアップさせる工夫です。しかし、そうした工夫されたペイントはそれほど多くは見かけません。むしろ見かけたら、注意すべきかもしれません。

形状変更で表面に水を貯めない


リブの入った車線。この凹凸で振動と音が発生する(小林祐史撮影)。

 バイクや自転車などはもちろん、歩行中においても、雨に濡れた横断歩道や車線(区画線)に滑ってヒヤッとした経験のある人もいるのではないでしょうか。こうした道路標示で滑ることなどを防ぐ研究は日夜続いています。

 たとえば、そのひとつが横断歩道のデザインの変更です。かつての横断歩道は「はしご型」でしたが、1992年、排水の改善と国際的なデザインに合わせるなどの理由で、長辺のない現在の「ゼブラ型」に変更されています。

 排水の関連でもうひとつ研究されたのが、雨の夜間、路面標示にクルマのヘッドライトなどが照射されると、表面を覆った雨が乱反射して見にくくなる、という問題です。1989年の建設省(当時)告示「雨天(夜間)時に視認できる区画線の開発」以降、視認性が改善された道路標示の工法が多数、実用化されました。

 改善された道路標示は、表面形状が不規則にボコボコしている、リブ(突起)のような凹凸がある、規則的なスジが入るといった特徴のほか、従来のものより反射率が高くなるような工法の改良が盛り込まれました。

 表面形状が不規則にボコボコなものは、大粒のビーズを混ぜているためです。表面がボコボコしていれば、高く出っ張った部分は水たまりに沈みにくくなるほか、大粒のビースがライトを反射しやすくします。

 リブのように規則的な凹凸があるものは、ボコボコのものと同じように、凸部が水面から出て反射しやすくなります。また凸部を高くすると、クルマが白線上を通過する際に小刻みな振動や規則的な音が発生します。これによって道路標示の外側に危険があることを運転者に知らせることができるため、中央線などでの採用が想定されています。

 また、規則的にスジの入ったものは、表面張力によって溜まる水の量を減らし、スジに沿って排水できるといった効果が期待できます。このタイプのものは横断歩道に利用されるケースが多いようです。

でもあまり見かけない?

 このように表面形状を工夫した滑りにくく見やすい道路標示は、平成の初めに実用化されたものの、現在でもそれほど頻繁に目にすることはありません。その理由は、従来のものよりコスト高だからです。材料、工法の両面で費用がかかります。

 このため、重大事故の発生率が高かったり、交通の要所であったりする道路に優先して施工されているそうです。そういった道路では、2種類以上の道路標示が同じ場所に存在しているケースもあります。筆者は、都内の十字路にかけられた4つの横断歩道が、凸凹とスジ入りの2種類で構成されているのを見たことがあります。

 もし歩行中、このような横断歩道に気づいたら、周囲に注意したほうがよいかもしれません。そこは事故が多発する道路かもしれないからです。また、クルマの運転者でこのような横断歩道や車線に気がついた場合も同様に注意するべきでしょう。変わった道路標示を見かけたときは要注意、ということです。