日英伊3国の共同開発「次期戦闘機」…アメリカは蚊帳の外? 参画が必要な理由
日・英・伊の共同開発に決まった航空自衛隊の次期戦闘機は、実は運用するシステムまでを含めると、それに米国を加えた4か国と見るべきかもしれません。どういった理由からなのでしょうか。
「システム」で見れば日・英・伊…そして米?
2022年12月9日、日・英・伊の3カ国による共同開発に決まった航空自衛隊の次期戦闘機は、日本が武器輸出に大きく舵を切ったことも示し注目を集めました。ただ、それを運用するシステムまでを含めると、この開発は日・英・伊、そして米国の4か国と見るべき、と筆者は考えています。
日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:防衛省)。
この次期戦闘機の発表ととともに、実はこれに関連して、もうひとつ陰に隠れてしまった印象がある情報が発表されています。それは、「随伴無人機の開発は米国と連携」するという内容です。次期戦闘機と随伴無人機は一つの「システム」で、切っても切り離せない関係にあります。
軍用の無人機は、米国のMQ-1「プレデター」、MQ-9「リーパー」や、ロシアによるウクライナ侵攻でトルコの「バイラクタル」TB2などが注目されました。ただ、先述した3例が偵察・対地攻撃型であるのに対し、次期戦闘機の随伴無人機は用途が異なります。――「ロイヤル・ウイングマン(忠実な僚機)」と呼ばれ、有人戦闘機と編隊を組んで使われるというものです。
次期戦闘機は2021年夏頃には、既に日・英での共同開発の調整に入ったと伝えられ、随伴無人機も同じころ、日本が開発に乗り出すとニュースになっていました。しかし、次期戦闘機ほどニュースに取り上げられはしませんでした。
当時まだ、無人機が大きな役割を占めることは、日本では関心をあまり集めなかったほか、次期戦闘自体の開発が、正式に決まらなかったことなどが理由に考えられます。また、単純に、有人機の方が注目されやすいといったシンプルな事情もあったでしょう。しかし、無人機に対する社会的な関心はウクライナ侵攻を契機として一気に高まりました。
なぜアメリカが「随伴無人機」で参加が必要なのか
しかし、次期戦闘機に随伴する無人機は、高度な技術が求められます。
空戦に鉄則の「Stay with Leader(編隊長と共に)」を「忠実」に行い、レーダーやIRST(赤外線追尾装置)で守りを固め、将来は接近する脅威をミサイルで排除する機能も求められます。こうした高度に自律した飛行が不可欠であることから、機体には、AI(人工知能)の搭載が必須とされています。
米国は既に豪と共同でMQ-28「ゴーストバット」を飛行させているほか、米国内で同じようなほかの機体も造られはしています。
「バイラクタル」TB2(画像:バイカル・テクノロジー)。
一方、英国は2022年6月、「LANCA(軽量で低価格な無人戦闘用航空機)」と呼ぶ、随伴無人機の技術立証機「モスキート」の中止を発表しています。いまのところ日本も開発に乗り出すと報道されましたが、具体的な機体はありません――つまり、直近で近しい国と開発を模索するなら、“ものになりそうな”機体は米国にしかないことになります。
必ず成功させなければならない次期戦闘機の開発にあたり、この無人機の実用化が必要なことも明らかです。両機の密接な連携へ向けて、開発は必然的に日・英・伊に加えて、米国とも関わり合いを深くせざるを得ないでしょう。
次期戦闘機は3か国の開発主体メーカーがエンジンを含めて決まりました。日本では、三菱重工が中心となります。一方、随伴無人機は日米ともに、目標性能や契約が公になるのはこれからです。空自のT-4、T-7練習機の後継機選定も囁かれ、日本の“防空の未来”が大きく方向転換を見せそうななか、随伴無人機を担当する日本メーカーはどこになるのでしょう。これも合わせて、先行きは次期戦闘機そのものと同じほど気になるポイントです。