2022年は、比較的小さいサイズのジェット旅客機・プライベートジェットが多く脚光を浴びた年となりました。振り返ってみると、それぞれに大きな特徴がありました。

異例のコンセプトの新型エアバス機が見参

 2022年は、比較的小さいサイズのジェット旅客機やプライベートジェットが多く脚光を浴びた年となりました。このなかには日本に関わりのあるものや、革新的な技術を備えたものなど、それぞれに特徴がありました。


「A321XLR」初飛行の様子(画像:エアバス)。

●異例のコンセプト「単通路なのに長距離」エアバスA321XLRが飛ぶ

 2022年6月、エアバスが開発を進めている新鋭旅客機「A321XLR」が初飛行しました。この機は、エアバスのベストセラー単通路旅客機、A320ファミリーの胴体延長タイプ「A321neo」をベースとした派生型ですが、このクラスの旅客機としては異例の特徴をもっています。

 それは、約8700km(4700海里)という長い航続距離です。A321neo長距離型であるA321LRよりも、さらに15%距離が伸び、「単通路型で最長」とされています。東京を起点とした場合、シドニーやデリー、アンカレッジ(アラスカ)までノンストップで飛行できてしまうのです。なお型式の「XLR」は「エクストラ ロング レンジ(超長距離)」の略です。

 A321XLRでは通常の主翼部、中央翼(主翼と胴体の結合部)部分の燃料タンクに加え、中央翼の少し後ろに「リアセンタータンク(RCT)」と呼ばれるタンクを設置。このことで従来機より1万2900L多く燃料が搭載可能となり、長い航続距離を実現しています。

 これにより、比較的需要が小さい長距離路線にも就航できることから、「新たな航空路線の開拓につながるモデル」とされています。日本ではこの機の導入計画はありませんが、すでに20社超から500機以上の注文を獲得しているそうで、就航は2024年初頭を目指しています。

かつて運航停止の「737MAX」、日本では大きな動きが

●ボーイング「737MAX」を国内航空会社が相次ぎ導入決定

 2022年7月にANA(全日空)が、そして11月にスカイマークが、ボーイングの新鋭旅客機「737MAX」の導入を決定しました。737MAXは2016年に初飛行した、ロングセラー機737シリーズの最新モデル。大型で効率の良いエンジンの採用や操縦システムの改修などが加えられています。

 一方737MAXは、2018年にジャカルタで、2019年にエチオピアで連続して墜落事故が発生。これにより、各国の航空当局で1年9か月ものあいだ運航停止措置が下されていました。ボーイング社では、停止期間中に、事故の発端とされた「迎え角センサー」システムの誤作動防止や異常検知機能の追加、迎え角センサーの警告表示の見直し、飛行マニュアルの改定などを実施。2020年12月の運航開始後は安全に運航を続けています。

 ANAではもっと早く737MAXを導入する見込みでしたが、根本的な事故原因の究明や適切なシステム改修が進み、運航停止措置の解除がなされるまで、正式な購入契約の取り交わしを見送っていました。これが、再開後の実績から“解禁”となったかたちです。

 同社での導入は2025年度以降になり、「737MAX」のスタンダードモデル「737-8」を確定発注20機、オプション10機の計30機の購入契約を交わしています。


ANAの「ボーイング737MAX」イメージ(画像:ANA)。

 ついで2022年11月、スカイマークが「737MAX」の導入を決定。こちらも2013年にはすでに737MAXを導入する意向を発表しているなど、かねてより将来の新型機として、この機を選定する意向と見られていました。

 一方、スカイマークでは、「737-8」のほか、「737 MAX」シリーズの胴体延長タイプ737-10も導入される計画です。こちらは、国内の航空会社としては初導入のモデルとなります。737-10は2021年初飛行。歴代の737シリーズでもっとも長い、43.8mの胴体をもち、最大230席を搭載できます。

 同社ではまず「737 MAX」シリーズの標準タイプ、ボーイング737-8を6機、リース契約を締結し導入。さらに、737-8、737-10を計6機(確定4機、オプション2機)の発注についてボーイング社と基本合意しています。これらの機材は2026年度より順次導入する計画です。

「ビジネスジェット」部門は「ホンダ」がやってくれた!

●大ヒット「ホンダ発のビジネスジェット」に新たな1ページが

 ホンダの航空機事業子会社の米国ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が2022年10月、好調な売り上げを記録し続けている“ホンダ発のビジネスジェット”「HondaJet(ホンダジェット)」シリーズの新型モデルの製造を決定しました。


ホンダジェット エリートII(画像:ホンダ エアクラフト カンパニー)。

「HondaJet エリートII(Elite II)」と名付けられたこの機は「クラスで最速、最高、そして最も遠くまで飛ぶ航空機」とのことで、燃料タンクの拡張および最大離陸重量の増加により、航続距離を従来モデルより204km長い約2865km (1547海里)まで拡大しました。離陸・着陸時の性能向上も図られています。コクピットの自動化機能も強化され、2023年末までに緊急自動着陸装置などを導入することも計画しているとのことです。

「エリートII」の客室定員は4名で、内装にはモダンなグレーを基調にした「スチール」と暖かみのあるベージュを基調にした「オニキス」の二つのデザインが追加。機内通路の床材には、従来のカーペットのほか、木目調のデザインを選択できるようになりました。また、機内壁の遮音材を刷新し機内に流れ込む風切り音を抑える設計とするなど、ノイズ低減の工夫を施したことで客室全体の静粛性の向上を図ったとしています。

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 このほか、2022年は日本のLCC(格安航空会社)のピーチ、ジェットスター・ジャパンが新型機「A321LR」を導入。ちなみに、ターボプロップ旅客機まで範囲を広げると、新潟の新規航空会社「トキエア」が導入1号機として「ATR42-600」を受領するなど、各地で動きのある1年となりました。