「電子車検証」詳細明らかに 紙は存続&値上げ 出向く必要も一部あり でもメリット大!
2023年から新たに導入される「電子車検証」の詳細が明らかになりました。結局、紙の車検証は存続し、手数料なども値上げ。一部手続きでは陸運局に出向く必要もあります。でも、メリットはけっこう大きいです。
車検証に所有者が書いてない!
2023年1月4日からの新規、継続検査(車検)で「電子車検証」が採用されます。有効期限など書き換え可能なデータは、車検証に貼り付けられたICタグに記録。使用者など大枠が変わらない限り、同じ車検証を使い続けることができます。サイズも従来の約3分の1に小さくなります。
従来の車検証の上にあるのが電子車検証。サイズは約3分の1。記載事項も少なくなった(中島みなみ撮影)。
電子車検証は、写真のプリント紙くらいの厚みがある紙です。大きさは集合写真などで使われるキャビネサイズの長片を少し伸ばした縦105mm×横177.8mm。記載欄の左に余白があり、裏返すと電子化を示すICタグが貼り付けてあるのがわかります。
今回の電子車検証は記載されたすべてのデータをオンライン上でやり取りするフルデジタルではなく、必要最小限のデータを電子車検証の紙に残す形。記載内容が変わる可能性があるデータは書面上では省略され、パソコン上で汎用のICカードリーダーを使ったり、スマートフォンのアプリを使ったりして読み取ります。
「所有者の氏名・住所」と「使用者の氏名・住所」は従来の車検証では必須で記載でしたが、電子車検証では「使用者の氏名・住所」だけ。「有効期間」も記載がありません。現記載されていない事項は、ICタグの中です。
この電子車検証のメリットは何か。例えば、有効期限が延長されると、これまでは更新した有効期限が書き込まれた車検証の実物を受け取る必要がありました。電子車検証では、車検証はそのまま使いまわし、記載内容データだけを書き換えることになります。運輸支局などに出向いて、新しい車検証を受け取る必要がありません。
ただ、電子車検証に記載された事項が変わるような場合、例えば使用者の変更、ナンバーの管轄が変わる使用者の住所変更、仕様が変わる改造などがある場合は、新しい電子車検証が交付されるため、従来と同じで運輸支局などに出向く必要があります。
電子化を主導した国土交通省自動車局自動車課は、一時、電子車検証をカードサイズにすることも検討しましたが、記載項目が書ききれないことや、手数料の値上げがさらに予想されるため「コストが抑えられる紙に決まった」と、話します。
値上げされる手数料 それでも大きなメリット
検査手続きの手数料は、新規検査の窓口申請は1200円から1500円に。継続検査の窓口申請は1200円を1400円に、それぞれ値上げされます。そのほか関連手数料も値上げです。
それでも、運送事業者や車検を請け負う整備事業者にとって、電子車検証の運用は、とてもメリットがあります。車検に係る車両管理がやりやすくなるのです。
電子化に伴い、PC版とスマートフォン版の閲覧用アプリが無償で用意されました。電子車検証のICタグを読み取ることで、24時間いつでもオンラインで閲覧可能。取得したデータは取り込みPDFファイルとして保存できるようになります。
営業車などの管理もしやすくなる。写真はイメージ(画像:写真AC)。
個人ユーザーはさておき、多くの車両を保有する事業者の場合、ドライバーの点呼でも車検証を確認するものの、ぎりぎりまで気が付かず、あわや“車検切れ”というケースも。車検の有効期間の管理だけでもわずらわしいものでした。これをパソコン上で管理することが、わりと簡単にできるようにあるため、抜け目のない運行管理が実現できます。
また、保有台数が少なく白ナンバー車を主に扱う小規模事業者でも、スマホの閲覧用アプリを使うと、有効期間の終了予告をプッシュ通知で待ち受け画面上に表示させることができます。
読み取ったデータをOSS申請(自動車保有関係手続のワンストップサービス)の入力作業などに応用して省力化することも可能。リコール情報も参照できます。
もちろん、これらの機能は、車検のある自動車の全ユーザーが使うことができます。