「世界最大の飛行機」「ジャンボ」終焉 「世界最大の旅客機」は新たな旅へ 巨大機の2022年
航空ファンの注目を集める「超大型の民間機」。2022年はロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、現代の世相を色濃く反映し、歴史に名を残す巨大機たちに大きな転機が訪れました。
「世界最大の飛行機」ロシアに壊される
「超大型の民間機」は、常に航空ファンの注目を集める存在です。2022年はそれら巨大機たちに大きな転機が訪れました。
●「世界最大の飛行機」アントノフAn-225「ムリヤ」が大破
ウクライナ・アントノフ社が旧ソ連時代に手掛けたAn-225「ムリヤ」は、年内ではもっとも多くの人から注目を集めた飛行機といえるでしょう。「世界で最も巨大な飛行機」とされるこの機が2022年2月末、ロシアによる軍事侵攻によって、拠点となるウクライナのキーウで破壊されてしまったのです。
アントノフAn-225「ムリヤ」(画像:Antonov Company)。
An-225「ムリヤ」の最大離陸重量は“世界最大”となる640tで、全長は84m、全幅は88.74m破壊された運用可能な唯一の機体は、当初、ソ連版スペースシャトル「ブラン」を胴体の上に積んで空輸する目的で開発されたもので、紆余曲折を経て、破壊される直前までアントノフ航空で貨物機として運用され、その巨体が生かされてきました。日本にも、救援物資の輸送のために複数回飛来しています。
2022年11月にはアントノフ社が公式SNSで、大破した「ムリヤ」を、終戦後に修理する計画があると発表しています。具体的な計画は発表されていませんが、この機が再び空を飛ぶことができるのか、ウクライナ情勢の終結とともに関心を集めるところです。
「世界最大の旅客機」には新たな役割が
●エアバスの超巨大機「A380」初号機、「空飛ぶ先端技術研究所」に
ANA(全日空)も運用していることで知られる総2階建ての胴体をもつ”世界最大の旅客機”「エアバスA380」。すでに生産が終了しており、新型コロナによる需要減退も相まって、世界的に見ても、その稼働機数は減りつつあります。そのようななか、2022年2月、製造メーカーのエアバスが、この初号機「MSN001」について、新技術を検証するデモンストレーター機として使用することを発表しました。
デモンストレーター機となるエアバスA380「MSN001」(画像:エアバス)。
現在航空業界の世界的トレンドとなっている「二酸化炭素排出量ゼロ」へむけ、エアバスでは改良したガスタービンエンジンで水素を燃やして推力を得るという新たなスタイルの旅客機「ゼロエミッション機」の設計案を固めています。
この「MSN001」では機体に備え付けられている4発のジェットエンジンとは別に、胴体後部に水素エンジンを搭載し、新技術をテストする予定です。まず地上で実施され、5年以内をめどに、上空で飛行した状態での試験も計画されています。
終焉を迎えた「The・超大型機」
●半世紀以上製造されたThe・超大型機「ジャンボ」が生産終了
2022年12月、「ジャンボ・ジェット」と呼ばれ半世紀以上にわたり生産された「ボーイング747」の最終機が完成しました。このシリーズは2020年に生産終了が発表されており、これまで、発注を受けた残りの機体の製造にあたっていました。
最後の機体はアメリカの貨物専用航空会社、アトラス航空向けのもの。これまでの製造機数は1574機となっています。
ボーイング747は1968年9月にシリーズ初号機が完成披露(ロールアウト)しました。大量の乗客を一度に運べる利点から、多くの航空会社が長距離国際線へ投入。航空券の価格を手頃にし、海外旅行の大衆化の立役者のひとりとなりました。近年では旅客機としての活躍は年ごとに減ってきてはいるものの、その巨体を生かし、貨物機として利用されるケースが多くなっています。
そして、「もっとも多くの747を購入した航空会社」として、JAL(日本航空)があがることでわかるように、日本で747はとくに馴染み深い旅客機でした。国際線はもちろん、羽田発着の国内線などにも747が投入されるなど、日本ではユニークな使われ方もしています。
ボーイング747の最終号機(画像:ボーイング)。
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超大型の民間機は、かつてに比べると徐々にその機数が減りつつあります。しかし一方で、2023年以降もいくつかの超大型機がデビューする予定です。
例えば約77mの全長を持ち、実用化されれば“もっとも長い旅客機”の記録を塗り替えることとなる、「777X」シリーズの「777-9」は2025年にサービス開始予定です。またサイズこそ777Xには及びませんが、2023年には、JALに国際線主力機として「エアバスA350-1000」が導入される計画です。こちらの全長は73.9mとなっています。