日本近郊だけやけに「デカい飛行機」が多いのは理由があります。

北東アジアは「ワイドボディ」の需要が高い傾向

 新型コロナウイルス感染拡大により受けた大きな打撃から、徐々に復調の兆しを見せている航空業界。その現状について、アメリカの航空機メーカー、ボーイング社の同社の民間航空機部門 マーケティング担当副社長、ダレン・ハルスト氏が来日し、報道陣に対し説明会を実施しています。

 同氏によると、稼働する旅客機の数は、2019年12月に比較して93%まで回復。旅客数や便数はその数値より下回るものの、「航空業界は回復力がある。需要の急回復で供給が追いついていない地域もあるほどだ」とコメントしています。これを牽引するのが、通路1本で比較的小型な胴体をもつ「シングルアイル機(単通路機)」です。ボーイングでいえば737シリーズがこれに該当します。


ボーイング777Xのスタンダードモデル「777-9」(画像:ボーイング)。

 同氏は「シングルアイル機は柔軟性が高く、どのような路線にも乗り入れられます。コロナ以前は1万7000の路線にシングルアイル機が飛んでいましたが、運航をやめた路線もあった一方で、新規路線も開拓しており、路線数で見れば、現在ではほとんど回復しているといえるでしょう」としたうえ、今後20年で新たなジェット旅客機は4万1000機の需要があり、うち75%がシングルアイル機が占めるともしています。

 その一方で大型で客室通路を2本有する「ワイドボディ機(複通路機)」の需要は、18%にとどまります。現在のボーイング社のラインナップでは787シリーズ、そして現在同社が開発を進めている新型の大型旅客機「777X」がこれにあたります。

 ただ、日本を含む北東アジア地域では、世界的な潮流である「シングルアイル優勢」とは少し異なる状況です。同氏の説明によると、北東アジア地域で今後20年で見込まれるシングルアイル機の需要は740機、ワイドボディ機の需要は550機。ワイドボディ機が全体の41%の需要を占めるのです。

「777X」は2025年納入できる?「797」は?

 これは、日本でいえは羽田〜新千歳、福岡、那覇、伊丹線など世界屈指の運航密度を持つ路線が多い傾向があることも一因でしょう。2019年にダレン・ハルスト氏の前任者ランディ・ティンゼス氏も「北東アジアはワイドボディ機の需要が高い」とコメント。ダレン・ハルスト氏によると、この傾向はコロナ禍を経ても「バランスは大幅に変化したとは思っていない」と話します。

 そのなかでも実用化が待たれるワイドボディ機が、先述の「777X」です。この機は国内航空会社でもANA(全日空)が発注済み。ただ、顧客への納入は当初の計画よりかなり後ろ倒しとなっており、現状では2025年に納入予定とアナウンスされています。また、直近では搭載エンジンが飛行試験中にトラブルが発生し、運航を停止しているとも報じられ、一部ではさらなる納入遅延を懸念する声もあがっていました。


ボーイング民間航空機部門 マーケティング担当副社長、ダレン・ハルスト氏(乗りものニュース編集部撮影)。

 ダレン・ハルスト氏はこれについて「プランの変更は考えていません。これまでどおりサービス開始予定は、2025年と考えています。エンジン問題はテストのなかで通常起こりうることで、結果は分析中ではありるものの、それよってスケジュールに影響を受けることはありません。また、777Xの飛行試験はこれまで2400時間実施しており、もう(飛行試験の)終了間近のところまで来ています」と現状を説明しています。

 ボーイング社では今後、シングルアイルの737MAX、ワイドボディの787、大型ワイドボディの777Xの3機種に絞って、旅客機を製造していく予定といいます。

 なお、かつては、これらに加えて「797」とも呼ばれる新型旅客機案「NMA(New Midmarket Airplane、新中型機)」を追加するプランもありましたが、こちらは凍結状態となっています。同氏は「NMA」について、「現在市場の潜在的なニーズや、どのようなテクノロジーを使うことができるのかということなどを見極めてようとしている状態で、いますぐにローンチ(開発スタート)する予定はありません」と話します。