横浜「上瀬谷ライン」結局どうなった 不採算は自明? 2027国際博覧会と“その後”の課題
横浜市瀬谷区で開催される2027年の「国際園芸博覧会」。その輸送手段として新交通システムの整備が検討されていましたが、現在その計画はどうなっているのでしょうか。
上瀬谷の鉄道計画の発端といきさつ
横浜市臨海部で運行される新交通システム「横浜シーサイドライン」(画像:横浜シーサイドライン)。
横浜市は2022年11月29日(火)、市内で2027年に開催予定の「国際園芸博覧会」について、国際条約に基づく国際博覧会として認定されたと発表しました。
その会場となるのが、瀬谷区と旭区にまたがる、旧米軍上瀬谷通信施設跡地の再開発エリアです。国際博覧会の終了後は、テーマパークは物流拠点、公園施設などで年間1500万人の訪問客を見込むまちづくりが計画されています。
鉄道空白地帯であるこのエリアに、鉄道を含む新交通の整備計画がありますが、現在どうなっているのでしょうか。
まず、ここに新交通システムの建設構想が持ち上がったきっかけが、2016年の都市交通審議会答申です。ここでは「LRT 等の中量軌道等の導入について検討が行われることを期待」という表現で書かれており、これをもとに新交通システムの検討が始まったのです。2020年7月には鉄道建設にかかわる環境アセスメントの手続きを開始しました。
しかし、すでに市内で新交通システムを運営している「横浜シーサイドライン」に横浜市が参画を打診したところ、2021年11月に「現時点で、参画するという判断はできない」と回答。これで新鉄道の実現は暗礁に乗り上げたという報道もありました。
このことや総合的な計画をふまえ、2027年の国際博覧会は、新鉄道での輸送が断念されています。博覧会協会による「基本計画案」では、公共輸送の手段として、瀬谷駅・三ツ境駅・十日市場駅・南町田グランベリーパーク駅の3社線4駅からの「シャトルバス運行」で進められています。
で、博覧会終了後はどうなるの?
では、博覧会終了後の恒久的な交通は、結局どうなるのでしょうか。これについては、今まさに横浜市により再検討が行われようとしています。9月末に検討業務委託が公告され、担当コンサルの選定が進んでいます。
業務委託の内容は、「新たな交通の設計・建設から維持管理、運営までの最適な事業スキームの選定にむけて、関係者へのヒアリングや事業スキームの概略検討を行うもの」としています。
この「新たな交通」について都市整備局 上瀬谷交通整備課にたずねたところ、「鉄道やBRTも含め幅広い輸送システムについて検討していく」と話しました。また合わせて、事業手法やリスク分担を整理し、事業主体など事業スキームについても予備検討するとしています。
横浜シーサイドラインが参画に難色を示したのも、事業をやっていくだけの十分な需要や採算が見込めないことが理由として挙がっています。将来的にテーマパークの内容を含めたまちづくり計画をしっかり深化させ、確実に事業として成り立つとすれば、横浜シーサイドラインを含め、あらためて参画に意欲を示す事業者が現れる可能性があります。市としてはそれを視野に入れて、最適な交通システムを練り直していく段階に入ります。
実は先述の「答申」でも、「開発等の状況とそれに伴う輸送需要の動向を踏まえつつ、まずはBRTを導入し将来的に中量軌道等に移行するなどの段階的な整備も視野に入れるべき」という「ただし書き」が付いています。まだ漠然とした開発方向性があるのみの段階で、ネットワークも形成しない「1エリア向けピンポイント鉄道」の整備についての答申は慎重にならざるを得なかったのかもしれません。
横浜市長は国際博覧会の認定について「横浜という街が持つポテンシャルを最大限に発揮し、国内外からいらっしゃる皆様を心温まるおもてなしでお迎えできるよう、引き続き、オール横浜で準備を進めてまいります」とコメント。2025年の大阪万博に続いて、ホストシティとしての街づくりに期待がかかっているのは確かです。