ドイツとスペインを立て続けに撃破し、E組1位でグループリーグ突破を決めた日本。次の決勝トーナメント1回戦で対戦するのは、F組を2位で勝ち上がってきたクロアチアである。

 4年前の前回大会では、準優勝という快挙を成し遂げているヨーロッパの強豪であるにもかかわらず、変な強国意識を持たず、常にチャレンジャーとして戦える、日本にとっては非常に厄介な相手だ。

 チームの中心は、MFルカ・モドリッチ。キャプテンでもあり、ナンバー10を背負う大黒柱は、類まれなテクニックを自在に操り、チャンスを創出するばかりでなく、37歳とは思えぬ運動量を生かし、的確なプレスバックでボールを奪う。今大会でも、モドリッチの働きは攻守両面で目立っている。

 そのモドリッチとともに、4−3−3の中盤トライアングルを形成するのが、MFマテオ・コバチッチとMFマルセロ・ブロゾビッチのふたり。高い技術を備えながら、ハードワークをいとわない中盤トリオが、チームの心臓部となる。

 その他、20歳のDFヨシュコ・グバルディオル、24歳のDFボルナ・ソサら、前回大会後には若いタレントも台頭してきており、準優勝の遺産でながらえているチームではない。モドリッチや33歳のFWイバン・ペリシッチなどのベテラン選手からイメージするほど、高齢化が進んでいるわけではない。

 ドイツやスペインほどのインパクトはないが、日本から見れば明らかに格上であることは間違いない。

 日本とクロアチアは過去、1998年大会(0−1)と2006年大会(0−0)で対戦。これが3度目の対戦となる。不思議とワールドカップで縁のある対戦国だ。

 今大会のクロアチアは、グループリーグを1勝2分けで突破してきた。2分けという結果は、勝ちきるだけの決定力に欠けたとも言えるが、裏を返せば、簡単には負けなかったとも言える。

 そんなクロアチアの負けない戦いが色濃く表れていたのが、グループリーグ最後のベルギー戦だった。

 今大会で優勝候補のひとつと目されていたベルギーは、初戦でカナダに勝利したものの、続く第2戦ではモロッコに金星を献上。クロアチアとの最終戦を、負ければもちろん、引き分けでもグループリーグ突破が難しくなる状況で迎えていた。

 しかし、必死の猛攻を仕掛けるベルギーに対し、クロアチアは粘り強い守備で応戦。最後はベルギーのFWロメル・ルカクがことごとく決定機を逸するミスにも助けられ、スコアレスドローに持ち込んだ。

 相手をねじ伏せるような強さはないが、だからといって、取りこぼしもない。クロアチアらしい、グループリーグの締めくくりだったと言えるだろう。

 とはいえ、このベルギー戦には、クロアチア攻略のヒントも存分に詰まっていた。

 4−3−3のクロアチアに対し、本来3バックをベースとするベルギーは、守備時には4バックで対応(右アウトサイドMFのトーマス・ムニエが右サイドバックに下がる)。それでいて、攻撃時には右のムニエ、左のMFヤニック・カラスコを高い位置に押し出す3バックの形に戻し、サイドからの攻撃を有効活用した。

 クロアチアは、このサイド攻撃にサイドバックが対応しようと外に開けば、中央が空いて中盤が下がらざるをえず、かといって、中盤を前に出そうとサイドバックが絞れば、外が空いてウイングが下がらざるをえない。

 いずれにしても、ベルギーはふたつの顔を攻守で使い分けることによってサイドの攻防を制し、クロアチアを押し込むことに成功した。結局、引き分けに終わりはしたが、ベルギーが特に後半、多くの時間で主導権を握ることができた要因である。


クロアチア戦で勝利のカギを握る存在となる三笘薫

 翻(ひるがえ)って、クロアチアに勝って目標のベスト8進出を狙う日本である。

 今大会の日本は4バックと3バック、ふたつのフォーメーションを使って、ここまで勝ち上がってきた。どちらかというと、従来は4バックが主戦システムだったが、今大会ではどちらかというと3バックが軸に変わりつつある。

 おそらくクロアチアに対しても、攻撃時には3バックが有効策となるはずだ。MF伊東純也やMF三笘薫が両サイドで高い位置をとって押し込み、中央2列目ではMF鎌田大地、MF堂安律、MF久保建英らが、相手の中盤を引きつける。

 そうした展開に持ち込めれば、得点の可能性が高まるばかりか、カウンターを受けるリスクを減らすこともできる。

 そのためには、左アウトサイドMFでの三笘の先発出場があってもいいし、ケガの状態次第ではあるが、右にはDF酒井宏樹を先発起用して守備時の4バックに対応し、勝負どころで伊東へスイッチ。そんな展開に持ち込むことができれば、勝負は面白くなるはずだ。

 ふたりのインサイドMF+アンカーで中盤を構成するクロアチアに対し、日本は2ボランチ+トップ下なのだから、守備時に左右アウトサイドMFがともに下がって、後ろが重くなりすぎないこと。そして攻撃時には、幅を使ってボールを動かし、右の伊東、左の三笘という切り札の能力を最大限生かすこと。それができれば、自ずと勝機は見えてくる。

 両サイドの攻防を制するか否か――。ベスト8進出のカギである。