ワールドカップ初戦でドイツから奪った歴史的勝利から一転、続く第2戦では、日本はコスタリカに0−1であっけなく敗れた。

 よくも悪くも、日本の力はこんなもの。結果が出た今言えることは、そんなところだろうか。

 確かに、ドイツ戦後半の逆転劇は見事だった。だが、前半の戦いに目を向ければ、ドイツの攻撃、とりわけ中盤でのテンポのいいパスワークについていけず、後手を踏むシーンは多かった。守備に追われ、反撃するどころか、敵陣に入ることすらままならない時間が長く続いた。

 その主な原因のひとつには、フォーメーションのミスマッチがある。相手チームとのフォーメーションの違いからポジションのミスマッチが起きてしまうと、その対応に手間取ってしまう。そんな日本の課題は以前から見られたものだ。

 そして、ワールドカップ本番でも課題は解消されないまま、ドイツ戦の前半に同じことが起き、コスタリカ戦でも再び起きた。言い換えれば、日本が抱える明らかな欠点を、コスタリカは確実に突いてきたにすぎない、ということだろう。

 コスタリカ戦の序盤、3−4−2−1のコスタリカに対し、4−2−3−1の日本は高い位置からボールを奪いに行こうとしても、プレスがなかなかハマらなかった。

「いい守備ができていなくて、そこからいい攻撃につなげることができなかった」(MF鎌田大地)

 いい形でボールを奪い、速い攻撃につなげることができない日本は、結局、ボールを保持する時間を作ったとしても、その時にはすでにコスタリカの堅牢な守備組織は構築済み。

「あれだけコンパクトに、アグレッシブに守られると、どの国の代表でも(崩すのは)難しい」(鎌田)

 しかも、日本は前半30分過ぎに3−4−2−1へと布陣変更し、コスタリカとのミスマッチを解消することを優先したが、裏を返せば、日本の攻撃に対してもコスタリカの守備ががっちりとハマるということにもなった。

 日本は最後までコスタリカの守備を破ることができなかった。


コスタリカの守備を打ち破ることができなかった日本

 それでも日本には、初戦でドイツから奪った勝ち点3というアドバンテージがあった。コスタリカに勝てずとも、勝ち点1を加えることができれば、悪くない結果のはずだった。

「0−0で終わっても悪くはないという感覚でやっていた」(鎌田)という日本は、「不用意に縦パスを入れて(ボールを失って)カウンター(を受ける)というのは嫌だった」(鎌田)。

 だからこそ、横パスやバックパスが目立つことになり、攻撃が消極的に映った感はあるものの、それは現実的な選択とも言えるものだった。

 ところが後半、日本はMF伊東純也、MF三笘薫を相次いで投入したことが功を奏し、次第にチャンスの数を増やしていった。ゴールの予感がにわかに漂い始めていた。

 だが、その代償として、「ちょっと(両チームが攻撃し合って)オープンになったところで、どっちが1点とるか、みたいなゲーム展開になった」(MF遠藤航)。

 そこで起きた痛恨のミス。DF吉田麻也が、自陣でDF伊藤洋輝がヘディングしたボールを簡単にクリアせず、MF守田英正につないでマイボールにしようとしたところを奪われ、逆にゴールを許してしまう。

 結局、勝ち点3どころか、勝ち点1すらも失ってしまったのだから、あまりにも痛い結果だった。

「最低限引き分けたかったっていうのが、正直なところ」(遠藤)
「一番起きてはならない展開になってしまった」(吉田)

 ドイツ戦でのせっかくの歴史的勝利も、その価値は瞬く間に半減した。

 前のドイツ戦から先発メンバーを5人も入れ替えたことを敗因とする見方もあるだろうが、メンバーの入れ替えについては、森保監督の選択を100%支持する。

 先発メンバーをほぼ固定して戦えば、目先の結果はよくても、最終的にガス欠になってしまうことは、東京五輪をはじめとする過去の経験が証明している。日本は力がないからメンバーの入れ替えは無理、ではなく、力がないのにベスト8を目指すのだから入れ替えるべき、なのだ。

「そのために全員で準備して、全員が同じコンセプトをしっかり理解することを共有していた。上に行くためには多くの選手が結果を出して活躍しなければいけない」(吉田)

 目標から逆算してグループリーグを戦うことは当然の策である。それよりも、むしろ主たる敗因はすでに記したように、ずっと抱えていた課題をクリアできなかったことにあるのだろう。

 ドイツ戦後半での成功体験がそうさせたのかもしれないが、森保監督も前半終了を待たずに4−2−3−1から3−4−2−1へと変更し、目先の手当てを優先させた。だが、結果として、その判断が試合をこう着させた面があることも否定できない。

 守備がハマっていなかったのは確かでも、コスタリカ戦はドイツ戦と違い、それほど危ういピンチがあったわけではない。勝ち点3がほしいなら、もう少し我慢して様子を見る手はなかったか。

 4−2−3−1のまま、両サイドに三笘と伊東を投入できれば、コスタリカとのミスマッチを逆手にとり、彼らのドリブル突破がもっと威力を増した可能性も十分ある。

 指揮官の采配に、初戦で"ボーナス"を手にしたことから生まれる余裕は感じられなかった。

 とはいえ、大会前に想定していた星勘定からすれば、2試合を終えて勝ち点3なら御の字。3戦目のスペイン戦で、勝てば自力でグループリーグ突破を決めることができるばかりか、引き分けでもドイツvsコスタリカの試合結果次第で突破の可能性が残るのだから、それほど悪くない状況にある。

「(勝った)ドイツ戦のあとにも話したが、まだ何もつかみとっていないし、何も失っていない。(これまでと)変わらずに、チームとして勝ち点をとりにいかなければいけない」(吉田)

 よくも悪くも、日本の力はこんなもの。急に悲観的になる必要はない。