今秋の東京開催も、はや最終週。フィナーレを飾るのは、国際招待競走のGIジャパンC(11月27日/東京・芝2400m)だ。

 海外からの招待馬4頭を含め、今年も昨年に続いてフルゲート18頭が出走するが、コントレイルが有終の美を飾った昨年とは異なり、今年は確たる主役が不在。伏兵の台頭も十分に考えられ、激戦が予想される。

 実績的には、昨年のダービー馬で、今春には海外GIのドバイシーマクラシック(3月26日/UAE・芝2410m)を制したシャフリヤール(牡4歳)が大将格となるが、ここ2戦が今ひとつ。2走前はイギリスに遠征してGIプリンスオブウェールズS(6月15日/イギリス・芝1990m)に挑むも、見せ場なく4着に終わった。

 続く前走のGI天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)でも、上位陣にはやや離されての5着。絶対的な信頼を置くまでには至らない。

 一昨年の三冠牝馬デアリングタクト(牝5歳)も、かつての輝きが失われている。長期休養明け2戦目のGI宝塚記念(6月26日/阪神・芝2200m)こそ3着に入って復調気配を見せたものの、秋初戦のGIIオールカマー(9月25日/中山・芝2200m)、続くGIエリザベス女王杯(11月13日/阪神・芝2200m)と、いずれも"らしさ"をまったく見せることなく、6着に沈んだ。

 そうなると、勢いある3歳馬ダノンベルーガ(牡3歳)に目がいくが、ここまでGIでは善戦どまり。前走の天皇賞・秋でも圧巻の末脚を見せたものの、逃げたパンサラッサを捕えることはできず、3着に終わっている。

 そうした状況にあって、日刊スポーツの松田直樹記者もこう語る。

「ジャパンCにおける外国招待馬の優勝は2005年のアルカセットが最後。3着以内に入ったのも、2006年のウィジャボード以降はなく、過去15年の3着以内はすべて日本馬です(2019年は外国招待馬の出走なし)。

 となれば、今年も馬券の中心は日本馬でいいかと思いきや、GI馬はシャフリヤール、デアリングタクト、ユーバーレーベン(牝4歳)の3頭のみ。しかも、3頭ともここ最近のレースではパッとしません。

 タイトルホルダー、ドウデュースなど中距離戦線における国内トップクラスは、GI凱旋門賞(10月2日/フランス・芝2400m)で軒並みふた桁着順に沈んでここに臨む余力はなく、天皇賞・秋を勝ったイクイノックスは、年末のGI有馬記念に向けて調整することになりました。例年に比べて、日本馬もかなり手薄な印象を受けます」

 そこで、松田記者は「参戦意思のあった凱旋門賞馬アルピニスタの負傷引退は残念ですが、今年は外国招待馬の台頭がありそうです」と、久しぶりに一発ムード漂う海外勢に期待を寄せる。なかでも、勢いあるドイツの3歳馬に熱い視線を注ぐ。

「楽しみな1頭だと思っているのは、昨年の凱旋門賞覇者トルカータータッソの半弟、テュネス(牡3歳)です。

 ここまで全6戦のうち、良馬場で走ったのはデビュー戦だけで、その後は重、不良など脚力が試される舞台で5連勝を飾ってきました。前走のGIバイエルン大賞(11月6日/ドイツ・芝2400m)も、不良馬場で勝ち時計は2分44秒3。東京・芝2400mではどんなに遅くても2分24秒台前半の時計が求められることを考えると、そのタイム差は約20秒もあって、スピード適性の有無は未知数です。

 ですが、バイエルン大賞は初のGI戦ながら、馬なりで先頭に立って、2着馬に10馬身差をつけての完勝。その力は本物です。今年は3戦しかこなしていませんが、レースを走るたびに後続との着差を広げてきました。

 まさにグイグイと力をつけてきている3歳馬。ここでも通用してしまうのではないか――そう思わせるムードがひしひしと感じられます」

 テュネスを管理するのは、ペーター・シールゲン調教師。過去にも4度、管理馬をジャパンCに送り出して、その経験は蓄積されている。

「シールゲン調教師は、2011年にGI3連勝を飾って凱旋門賞を制したデインドリームを管理していたことでも有名。同馬は当時、欧州最強の1頭に挙げられ、同年のジャパンCにも出走しました。

 そのジャパンCでは勝ったブエナビスタからコンマ5秒差の6着に敗れましたが、ドイツの重い馬場で結果を残してきた馬が、凱旋門賞を2分24秒49のレコード勝ちしたのに続いて、ジャパンCでも2分24秒7というタイムで走りきっています。

 また、シールゲン調教師は騎手時代、1995年のジャパンC(同レースの鞍上はマイケル・ロバーツ騎手)を勝ったランドに騎乗し、前年のGIバーデン大賞(ドイツ・芝2400m)などを勝利した経験があります。

 そうしたことを含め、シールゲル調教師はどんな馬が日本の馬場に合うのかよく把握しており、今回のテュネスの参戦も、同馬の潜在的な馬場適性を見抜いているからこそ、でしょう。持ち時計がなくても、侮れないと思います。

 そもそも、ドイツ血統は日本の馬場への適性が高いと言えます。先週のGIマイルCSでは5着に敗れましたが、昨年のGINHKマイルCを制したドイツ生まれのシュネルマイスターはその象徴。その他、今年の二冠牝馬スターズオンアースや、2019年の朝日杯フューチュリティSを勝ったサリオスなども、ドイツの血筋を引いています。

 こうしたドイツ血統馬が日本で活躍しているという事実もあり、テュネスの勢いと未知の魅力をもってすれば、一発の可能性は十分。期待が膨らみます」


ジャパンCでの一発が期待されるテーオーロイヤル

 松田記者はもう1頭、「日本馬の伏兵も見極めるべき」として、テーオーロイヤル(牡4歳)を穴馬候補に挙げた。

「前々走のGIIオールカマー(9月25日/中山・芝2200m)は、内枠決着にあって外から追い上げて5着。前走のGIIアルゼンチン共和国杯(11月6日/東京・芝2500m)では、直線で不利を受けながら6着。見た目の結果から人気を落としていますが、力負けとは思えない敗戦が続いていて、軽視は禁物です。

 昨秋から今春にかけて4連勝を飾り、初のGI挑戦となったGI天皇賞・春(5月1日/阪神・芝3200m)では3着と奮闘。その成長力は、ここでもひけをとりません。

 オールカマーでは、天皇賞・春から1000mも距離が短縮されるなか、ラクに好位につけることができました。あの競馬センスはかなりのもの。今回は実績ある2400m戦ですし、スムーズに運ぶことができれば、上位争いに加わってくるはずです」

 ここ数年は堅い決着が続いてきたジャパンCだが、今年は波乱含み。ここに挙げた2頭が高配当をもたらしてもおかしくない。