今年のジャパンCは外国招待馬が不気味。凱旋門賞馬アルピニスタ回避も、地力ある面々がズラリ
11月27日に行なわれるGIジャパンC(東京・芝2400m)。今年は当初、7頭の外国招待馬が参戦予定だったが、残念ながら凱旋門賞馬のアルピニスタをはじめ、最終的には3頭の馬が回避してしまった。
それでも、4頭の実力馬が来日。久しぶりにジャパンCらしい、国際色豊かなレースになりそうだ。
ジャパンCは近年、有力な外国招待馬の参戦が激減。2019年には外国招待馬の参戦はなく、日本馬だけで争われた。
そうした状況にあって、レースでは日本馬が上位を独占。外国招待馬の勝利となると、17年前(2005年)のアルカセットまで遡らなければならない。馬券圏内(3着以内)にしても、16年前の2006年にウィジャボードが3着入線を果たしたのが最後だ。
おかげで、今や馬券的には「外国招待馬は不要」と見る向きが強い。だが今年は、そういった考えを改めたほうがいいかもしれない。
というのも、多大な注目を集めたアルピニスタの影に隠れてしまったが、今回来日する外国招待馬は粒ぞろいのメンバーがそろっているからだ。昨年の覇者コントレイルや、一昨年の勝ち馬アーモンドアイなど、日本馬に絶対的な存在がいないことも考えると、久々に外国招待馬が勝ち負けを演じる可能性は大いにある。来日した面々は、それだけの力を秘めているのだ。
なかでも筆頭格となるのは、ドイツから参戦のテュネス(牡3歳)。2つ上の兄が昨年の凱旋門賞馬で、今年の凱旋門賞でも3着に入ったトルカータータッソという良血馬だ。
現在5連勝中のテュネス。前走のGIバイエルン大賞では後続に10馬身差をつける圧勝劇を演じた
同馬はデビュー戦こそ2着に敗れたが、その後は長期休養を挟みながら5連勝を飾っており、底を見せていない。しかも、GI初出走となった前走のGIバイエルン大賞(11月6日/ドイツ・芝2400m)では、2着以下に10馬身差をつける圧勝劇を演じている。
管理するのは、2015年、2016年にナイトフラワー(11着、12着)を、2011年には凱旋門賞馬のデインドリーム(6着)などをジャパンCに送り込んできたペーター・シールゲン調教師。過去の経験からどういった馬が日本の馬場に合うのか十分に分析しているはずで、2015年のナイトフラワーも、デインデリームも勝ち馬とはコンマ5秒差と、時計的には差のないレースをしてきたことを鑑みれば、逆転への"秘策"も備えているのではないか。
ドイツ調教馬と言えば、渋った馬場を得意とするイメージが強いが、デインドリームは速い時計での決着となった凱旋門賞を制している。意外と高速馬場への適応力もあり、やや荒れてきた今の東京の馬場はなおさら歓迎のクチ。一発あっても、不思議ではない。
次に、欧州での実績からして侮れないのは、フランス調教馬のオネスト(牡3歳)だ。
前走のGI凱旋門賞(10月2日/フランス・芝2400m)では馬場悪化もあって10着に敗れたものの、3走前のGIパリ大賞(7月14日/フランス・芝2400m)では後方待機からズバッと差す競馬で快勝。そこで下した面々、同じくジャパンCに参戦する2着シムカミル(牡3歳)が続くGIIニエル賞(9月11日/フランス・芝2400m)を勝利し、4着エルダーエルダロフがGI英セントレジャー(イギリス・芝2910m)を勝っていることを思えば、その実力は高く評価できる。
さらに、オネストは続く2走前のGIアイリッシュチャンピオンS(9月10日/アイルランド・芝2000m)でも僅差の2着と奮闘。そして今回、日本の競馬をよく知るクリストフ・ルメール騎手を鞍上に迎えたことは、確かな勝算があってこそだろう。不気味だ。
前述のシムカミル(フランス)も怖い一頭だ。ニエル賞では、仕上がり途上だったとはいえ、ダービー馬のドウデュースを相手にしなかった。
また、同馬は凱旋門賞に登録せず、ジャパンCに標準を定めて調整されてきた。レースに向けての余力を含め、本気度という点では外国招待馬4頭のなかでは一番高いかもしれない。
最後の1頭は、2年連続の出走となるグランドグローリー(牝6歳)。昨年は5着に敗れたものの、今年に入ってからは地元フランスで2連勝を飾ったあと、英国のGIプリンスオブウェールズS(6月15日/イギリス・芝1990m)でシャフリヤール(牡4歳)に先着して3着と好走した。
続くGIヴェルメイユ賞(7着。9月11日/フランス・芝2400m)は超スローペースに泣くも、前走の凱旋門賞では最後までタフに伸びて5着と善戦。馬場を問わない堅実な末脚は、むしろ日本の馬場向きと言え、地力アップを遂げた今年、昨年以上の結果を残してもおかしくない。