10代の選手の活躍が期待されるカタールW杯

 森保ジャパンがカタールW杯のグループリーグで対戦する相手には、将来を約束された何人かのティーンエイジャーがいる。


コスタリカの18歳、ジェウィソン・ベネット

 たとえば、初戦の対戦相手となるドイツ代表で言えば、すでに所属のバイエルンでも代表でも主軸となっている、19歳のジャマル・ムシアラだ。切れ味鋭いドリブル突破と決定力を兼ね備え、中盤と前線の複数ポジションをこなす柔軟性も魅力の超逸材だ。

 同じく、目下ドルトムントでブレイク中の新星アタッカー、ユスファ・ムココは代表初招集がカタールW杯という注目のシンデレラボーイ。大会開幕日の11月20日に18歳になったばかりだ。

 ムココは、16歳と1日でブンデスリーガの最年少出場記録を更新した神童として脚光を浴びた金の卵で、非凡なスピードと抜群の決定力が最大の武器となっている。エースのティモ・ヴェルナーが負傷欠場した今大会は、ドイツの"隠し玉"的存在と言える。

 また、グループリーグ3戦目で対戦するスペインには、バルセロナの主力選手として日本のファンにもお馴染みのペドリ(19歳。11月25日に20歳)とガビ(18歳)がいる。

 類稀なボールテクニックと戦術眼を持つペドリは、ルイス・エンリケ監督率いるスペイン代表の不動のレギュラーで、一方のガビも、17歳で代表デビューを果たした昨年10月6日のイタリア戦以来、欠かせない中盤の主力になった。

 スペインには、ホセ・ルイス・ガヤの負傷によって急きょ招集されたバルセロナの左サイドバックのアレハンドロ・バルデ(19歳)のほか、アンス・ファティ、ジェレミ・ピノ、ニコ・ウィリアムズという20歳のFWトリオもカタールW杯メンバーに登録されていて、注目すべきヤングタレントがひしめいている。

 今大会の最年少選手が、21歳の久保建英という日本にとっては何とも羨ましい話だが、まだ世界的にはあまり知られてはいないものの、2戦目に対戦するコスタリカにも注目のティーンエイジャーが出場する。

 19歳のブランドン・アギレラと18歳のジェウィソン・ベネットの2人になるが、とりわけ現在イングランド2部のサンダーランドに所属し、代表でレギュラーとして活躍するベネットは、要注目の逸材アタッカーだ。

コスタリカのサラブレッド

 2004年6月15日生まれのベネットは、コスタリカの首都サンホセの約10km北に位置するエレディア生まれ。元コスタリカ代表FWだった同名の父親もプレーしていた地元クラブのエレディアーノの下部組織で頭角を現した。

 ちなみに、伯父にあたるトライ・ベネットも元コスタリカ代表DFとして知られており、要するにジェウィソン・ベネットはサラブレット中のサラブレットと言っていい。

 そのベネットが周囲から注目を浴びるきっかけとなったのが、ルイス・フェルナンド・スアレス現代表監督が就任した直後のトレーニングキャンプだった。2021年CONCACAFゴールドカップの準備のために合宿をしていたA代表のトレーニングに、U−20代表の一員として参加していたベネットを見たスアレス監督が一目惚れ。

 メンバー登録手続きの関係でゴールドカップには出場できなかったが、代表新監督がその才能を公言したことにより、一気に注目のタレントとして多数のメディアでその名が報じられることとなった。

「スアレス監督が評価してくれたのは、息子にとってはとても重要なことだった。大きなモチベーションにもなったと思う」とは、当時現地のメディアの取材に応じた父親のコメントだが、その年の8月、スアレス監督はエルサルバドルとの強化試合に向け、当時17歳のベネットを大抜てきしたのである。

 そして8月21日に行なわれたアウェー戦で、ベネットは4−4−2の左MFとしてスタメン出場を果たすと、後半63分まで堂々とプレー。しかも、コスタリカ代表の最年少出場記録も更新した。

 左利きのベネット最大の武器は、テクニカルかつスピーディーなドリブル突破で、単独で局面を打開できる切れ味が強みのひとつ。試合を重ねるごとに周囲とのコンビネーションプレーにも磨きがかかり、今年6月に行なわれた大陸間プレーオフのニュージーランド戦では、開始3分にジョエル・キャンベルの先制ゴールをアシスト。W杯出場がかかった大一番で、決勝点につながる見事なクロスを供給した。

ベネットはチームの貴重な得点源になりそう

 その活躍ぶりもあり、今年の8月にはサンダーランドが130万ユーロ(約1億9000万円)の移籍金でコスタリカの神童を獲得。さっそく9月14日のレディング戦で、途中出場ながらデビューを飾ると、その3日後のワトフォード戦で初ゴールをマークし、W杯ブレイクまでに9試合に出場するなど、その成長速度は増す一方だ。

 また、ここまで代表7試合に出場しているベネットは、今年9月23日の韓国との強化試合で代表初ゴールを含め、計2ゴールをマーク。順調に右肩上がりの成長を見せていることもあり、カタールではチームの貴重な得点源としての期待もかかる。

「みんなはクレイジーだと言うけど、僕たちは心のなかで世界チャンピオンになりたいという大きな夢を持っている。W杯に出場できることを幸せに感じているし、これから起こるすべてのことに希望を持っている。そのために、ベストを尽くすつもりだよ」

 大会前のクウェートでのキャンプに合流したベネットはそう語ったが、果たして、コスタリカの未来を背負う18歳の神童は、初めてのW杯の舞台でどのようなパフォーマンスを披露してくれるのか。

 11月27日のコスタリカ戦は、ベネットのプレーに注目したい。