森保ジャパンの完成度を川島永嗣が明かす。「ポテンシャルは今までの3大会とはかなり違う」
特別な思いを抱えてカタールW杯に臨んでいる選手がいる。
GKの川島永嗣だ。
今回は、権田修一、シュミット・ダニエルに続く3番目のGKという位置づけだ。3番目の意味するところは、試合出場の可能性が限りなく低い、ということだ。実際、フランスW杯から前回のロシアW杯まで6大会で、"第3GK"が試合に出場したことは一度もない。
川島は、2010年南アフリカW杯から日本代表の正GKになった。
大会直前までは楢崎正剛が正GKとしてプレーしていたが、直前の親善試合で戦術やシステム、選手を入れ替え、その流れのなかで川島がゴールマウスを守ることになった。突然のレギュラー抜擢に川島は、その交代劇を受け入れつつも、心のなかでは「ナラさん(楢崎)になんて言えばいいのか」と心中穏やかではなかった。そんな時、楢崎が「オレのことは気にせず、頑張れ」と声をかけてくれた。
その南アフリカW杯で川島はベスト16という結果を残し、それ以降、2014年ブラジルW杯、2018年ロシアW杯と日本のゴールを守り続けてきた。
だが、森保一監督になってからは正GKの座を権田に譲り、後方支援を続けた。そしてカタールW杯では、かつての楢崎や川口能活のようにベテラン選手として、GKとしてだけではなく、チーム全体をサポートする役割が期待されるが、川島は「特に意識せずに自然体で」という考えだ。
「自分は、W杯を3大会経験させてもらっているので、自分にできることがあれば、チームのためにやりますし、何かアドバイスできることがあれば、ゴンちゃん(権田)だったり、他の選手に対してもします。
でも、自分がこういう立場で、こういうことをしなきゃいけないっていう感覚はあまりないですね。自然体で自分が持っているもの、プレーもそうですし、それを練習のなかで見せなければ説得力も何もないと思うので、まずはそこをしっかり見せなければいけないと思っています」
4度目のW杯に挑む川島永嗣(写真中央)
南アフリカW杯で川口は、ベテラン枠としてチームをまとめる役割も課されていた。だが、川口自身はあくまでもプレーヤーとして、ピッチに立つことを目標にトレーニングに取り組んでいた。その姿勢が当時の川島の胸を強く打った。それゆえ今回、川島はその時の川口のようにプレーヤーとしての矜持を忘れずに保持している。
「あの時、日本を背負ってきたナラさんや能活さんがプレーヤーとして臨む、そういう姿勢を見せてくれたことは大きいし、(後進に)ふたりの気持ちを伝えていかないといけないな、と当時は感じた。ただ、今も自分はふたりを追いかけている立場なので、ふたりがやってきたことを自分がやるというのは、僕としてはおこがましいと思っています」
ベテラン顔をせず、謙虚にチームと向き合う川島。それでも3大会出場の経験は非常に大きい。しかも、3大会で2度もベスト16に進出した時のGKだ。大会前、グループリーグを突破した時のチームの完成度はどのくらいだったのか。チームがどんな状態であれば勝ち進むことができるのか。勝ち進むチームのムードとは、どんなものなのか。それをよく知る選手でもある。
はたしてドイツ戦前、今回のチームの完成度はどのくらいなのだろうか。
「森保監督は途中にオリンピック(チームでの指揮)があったり、若い選手と経験ある選手と織り交ぜながら、いろんな考え方を持ってやってきた分、チームの完成度と言うか、ポテンシャルっていう意味では今までの3大会とはかなり違いますね。
今まではどっちかっていうと、主力選手が同じで、彼らがどれだけ成長できるか、ということだったんですが、今回は若い選手が多い分、今までにない可能性っていうのを秘めているチームだと思う。自分たちが4年間重ねてきたものとプラス、個々のところで、過去のチームよりも、より可能性というのがあるのかなと思います」
森保ジャパンは、東京五輪世代が中軸に顔をそろえる。若い選手は短期間、いや1試合でグーンと成長することがある。
川島の見立てが正しければ、ドイツ戦でのパフォーマンスと結果次第では、若手の成長でチーム力が一気に急上昇。その後、日本がまだ見たことがない景色が見られるかもしれない。川島も、それを楽しみにしている。