現地11月20日、FIFAワールドカップ2022がついに開幕した。日本代表は11月23日にドイツ代表との初戦を迎える。

 A代表が4年に一度の大舞台に挑むのと同時に、4年後、同じ場所を目指す戦いはすでに始まっている。来年行なわれるU20アジアカップ(2023年3月1日〜18日@ウズベキスタン)と、その先にあるU-20ワールドカップ(2023年5月20日〜6月11日@インドネシア)を目指すU-19日本代表は、スペインのサン・ペドロ・デル・ピナタルにて遠征中だ。


中井卓大が満を辞してU-19日本代表に招集された

 U-19日本代表に招集された選手のひとり、中井卓大(たくひろ)に話を聞いた。レアル・マドリードのカスティージャ(Bチーム)に所属し、「ピピ」の愛称で知られている。2018年にU-15代表フランス遠征に招集されて以来の日本代表だ。

 2014年からレアルの育成組織に属しており、映像で多く目にするのは子ども時代の姿。白いブカブカのユニフォームを着てドリブルをしている印象があった。だが、19歳になった現在は身長182cm、今回招集されたフィールドプレーヤーの中でも4番目に大柄な選手だった。

「思ったより大きいってよく言われます。YouTubeとかに出ているのは小さい時のなので」と笑い、「実家が滋賀県なので」と言いながら関西弁のイントネーションで話した。話せる言葉は「関西弁とスペイン語、スペイン語のほうが得意かも」という。

 U-15代表以来、4年ぶりの日本代表は「とにかく楽しいですね」と中井は言う。

「新しいチームメイトもいるし、4年前に一緒にやってた子も何人かいるし。ここはスペインで、どちらかというと僕にとってホームなので、日本のみんなとスペインにいるのが不思議な感じ」

 生き生きとした表情で話す。4年ぶりの同世代との再会、仲間の成長ぶりをどう受け止めているのか。

「僕がそんな偉そうにいうことじゃないですけど、みんなJリーグでやってる子らで、僕はまだレアルのBチーム(カスティージャ)で、トップチームではできてないので、やっぱ学ぶこともいっぱいありますし、これからまた成長していけたらいいなと思います。

 みんな、いっこいっこ真剣に100パーセント取り組むので、それはやっぱ刺激になりますし、パススピードも思ったよりもめちゃ早くて、いいパスが出せるなって」

中井卓大のプレーに変化?

 中井自身は15歳から18歳までの3年間で、身長が30cm伸びたと言う。それにより、プレースタイルが変化した。

「プレーは変わりましたね。前はドリブルとか得意だったんですけど、今は2タッチとか簡単にはたくっていうプレーヤーになって。たまに仕掛ける時は仕掛けて。

 ドリブルあってのパスなんですけど、ドリブルよりは先にパスをってなりました。ドリブルは身長が小さい時のほうがキレがありましたし、でかくなったら動きも遅くなりますし」

 小柄で切り裂くような仕掛けを得意とするタイプから、中盤のプレーヤーとして周囲と連係連動しながらのプレーも覚え、プレーの幅が広がったということだろう。U-19日本代表を率いる冨樫剛一監督も「単にスピードだけなら速くなっているはずだし、まだまだ速くもなるはず。きっと感覚とか周りとの関係が変わったんだろうね」と、決してスピードを失ったわけではないと受け止めている。

 中井の所属するレアル・マドリード・カスティージャは、いわばトップのリザーブチーム。ラウル・ゴンザレスが監督を務めており、スペインの3部リーグを戦う。中井のようにU-19から昇格した選手や他クラブからの移籍組も在籍し、それぞれがトップ昇格を夢見てしのぎを削っている。

 中井はこのチームにこの夏から加わったばかりで、全12試合のうちまだ出場は1試合、4分間のみ。それでも、負傷者が出たタイミングなどでトップチームの練習に参加することもあるという、なかなか難しい時期を過ごしている。

「よくトップチームの練習には呼ばれるんですけど、まだカスティージャ1年目なので、まだうまく絡めてなくて」

 レアルの看板を背負うことは簡単なことではない。

「やっぱレアルは世界一のクラブなので誇りにも思いますし、ピッチ内でも外でもちゃんとレアルの選手として接しなあかんし、紳士のレアルなので紳士的な感じで生きていかなあかんと思ってます」

 でも、と言いつつ、こうつけ加えた。

「レアル・マドリードの選手の何がいいかって、サッカーを楽しんでる、一番楽しんでるなって感じてることですね」

 うれしそうかつ誇らしそうに話してくれた。

目標は日本代表としてW杯

 目標はレアルのトップチームに上がることだけではない。

「あんまり未来のことは考えず、今を大事にやってるんですけど、夢っていうか目標はレアルのトップチームにいって試合にでることですし、日本代表としてワールドカップ、オリンピックに出るっていうのも目標ですし。でもその前に、しっかり自分のクラブ(今であればカスティージャ)で活躍してから代表がくると思ってるので、まずは自分のクラブで活躍したいです」

 そのために生かしたいストロングポイントも、課題も把握している。

「一番のストロングは、正確なパスとチームを落ち着かせること。前に行く時は攻めるドリブルもできながら、ラストパスも出しながらっていうプレーですかね。何よりもここは負けてないぞっていうのは、コントロールトラップですかね。トラップからサッカーは始まるので大事だと思います。

 課題はやっぱり守備面ですね。スロバキア戦(11月17日に行なわれ3-2で勝利。中井は先発して前半のみで交代)では暑くて少し疲れたので、体力を強化したい。守備面も強化したいし、シュートも1本打ったけど、もっとチャンスには決められるようになりたいです」

「レアルの下部組織育ち」という華やかな経歴に日本の未来を背負って......などと、この原稿の冒頭のようにどうしても言いたくなるが、まずは一歩一歩。着実に階段を登る姿に目をこらしたい。