三浦璃来・木原龍一は「似ていること」が武器。GPシリーズ連勝からファイナル制覇なるか
三浦璃来・木原龍一ペアは、三浦のケガで出遅れ9月半ばから練習開始。フリーの通し練習は10月下旬のGPシリーズ・スケートカナダの2週間前から始めた。その大会で2位に25点以上の大差をつけて日本ペアとしてはGPシリーズ初優勝を飾った。
2戦目となったNHK杯は、GPファイナル進出もかかるなか、自信に溢れた演技を見せた。
木原は「スケートカナダの時は練習不足で不安もあったが、それを乗りきることができてものすごく自信になった。そのあとはいい練習もできていて不安もなかったので、それが演技中の表情に出たのだと思います」と話した。
NHK杯SPの三浦璃来・木原龍一
初日のショートプログラム(SP)は、最初のトリプルツイストがスケートカナダと同じレベル2にとどまったが、そのあとの3回転トーループはしっかり決め、カナダでは減点されたスロー3回転ルッツも1.74点の加点をもらうジャンプに。
そして他の4つの要素はすべてレベル4とノーミスの演技。
「今日はレベルを頭に入れて滑った。特に最後のデススパイラルでは前回も取りこぼしていましたが、初めてレベル4をとれた。カナダからの成長だと思います」
三浦は納得の表情を見せた。
急仕上げだったスケートカナダではミスはありながらも、北京五輪で出した74.45点にあと1.06点まで迫るサードベストの73.39点を出し、世界選手権銀メダリストの底力を見せていた。
そしてノーミスで滑った今回のNHK杯は、それを大きく上回る78.25点の自己ベスト。2位に13.63点差をつける1位発進となった。
「自己ベストを大きく更新できてよかったし、各エレメンツのレベルもしっかりとれて技のクオリティもいいものを出せた。カナダからの短い期間で成長できたと思います。得点が出た時にブルーノ・マルコットコーチは『78点は予想していた』と言っていましたが、開幕前にケガをしてしまったのでまずは試合に出ることを目標にやってきたし、今回もこのプログラムのパーフェクトは想定していませんでした」
木原はそう話して喜んだ。
前日の公式練習のあとに木原は「カナダでレベルを落とした部分の修正をしてきました。短い期間だったがしっかり準備ができました」と話していたが、言葉どおりの演技を披露した。相性のよさが武器のふたり
翌日のフリーは、前戦では練習時間も少なく苦戦したプログラム。
三浦が「練習不足が出てしまったと感じました」と話すように、最初のトリプルツイストはスケートカナダより落としたレベル2の滑り。続く3回転トーループ+2回転トーループ+2回転トーループは、カナダのような回転不足はなかったが木原の着氷が乱れ、間を置いてから連続ジャンプにしたために0.18点の減点。
その後の3回転サルコウは回転不足になり、後半のスロー3回転ルッツは三浦が着氷で片手をつきそうな姿勢になりながらも耐えたが0.53点の減点と、流れをうまくつくり出せなかった。
そして演技終了後、三浦が「セーフ」のポーズをつくり、笑顔で言葉を交わした。そのシーンを三浦はこう説明した。
「セーフ(のポーズ)は、カナダの時に遅れていた曲の終わりに(演技が)間に合ったという意味なんですが、スロールッツのあとのリフトで初めて失敗したので、『やばい、どうしよう』ということも含めたものでした」
フリー演技のりくりゅう
ミスはひとつだったスケートカナダと比べれば、細かいミスが重なったため、フリーの得点はカナダより0.72点低い137.91点にとどまった。だが合計得点はSPの自己ベストがあり、自己最高の216.16点。
今季も一戦一戦を進化していこうという思いが出た結果。ふたりは「SP、フリーとも小さなミスが出たが、そのなかでも自己ベストを出せたのはうれしい」と口をそろえた。
「今季のフリーは、昨シーズンに比べるとトランジション(つなぎ)の動きをすごく増やしているので、私たちにとっては挑戦的なところです。まだ完璧ではないですが、できることはやりました」
三浦がそう話す今回の演技。これからの課題はフリーをさらに滑り込み、これまでの2戦で出たミスを修正していくことと、ハッキリしている。
今回の優勝で、GPファイナルへ1位進出を果たした。昨季の世界選手権優勝のアメリカペアを2試合の合計得点で20点以上の差をつけている。
昨季は初めてのGPファイナル進出を決めながらも、コロナ禍で大会が中止になって悔しい思いをした。だが、その戦いの場に今季はさらに力をつけ、優勝争いをする期待を持って挑戦できる。
木原がふたりの相性のよさを「スケーティングのタイプが似ている。ふたりとも一歩目の踏み出し、氷の滑り出しが似ているので、無理をせずにスピードに乗れること。それにふたりともスピードを出すのが好きだし、スピードがないなかでエレメンツをやるのは怖いと感じているのも同じ」と説明する。
ともに大きな伸びしろを感じながら、次の大舞台へと歩みを進める。