現地時間11月17日、MLBの今季のMVPが発表された。注目されていたア・リーグは、リーグ新記録の62本塁打を放ったアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)が自身初のMVPに輝き、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の2年連続MVP受賞は叶わなかった。この結果に、現地ではファンや一部のメディア関係者から落胆の声が上がった。

 一方、アメリカは本格的にストーブリーグに突入し、現地記者たちの関心はすでに他の話題に移っている。


今後の動向が注目される大谷

 今回は、エンゼルスの地元メディアで活躍する記者たちに今オフの大谷に関して注目すべきトピックを聞いてみた。取材を行なったのは、エンゼルス専門メディア『ヘイロー・ハングアウト』のジェイコブ・シスネロス記者、『スポーティング・トリビューン』のテイラー・ブレイク・ウォード記者、『ジ・アスレチック』でエンゼルス番を務めるサム・ブラム記者の3人。「球団売却と大谷の契約延長問題」、「トレード問題とそのタイミング」、「WBC出場意思の表明」という3つの話題について答えてもらった。

 まずは、「球団売却と大谷の契約延長問題」。記者3人は「これが今一番ホットな話題だ」と口を揃えた。

 大谷はエンゼルスとの契約が終わる2023年のシーズン後にFAとなるが、現地では「今オフにエンゼルスが大谷を引き留めるのか、それとも手放すのか」に大きな注目が集まっている。今年8月に明らかになったエンゼルスの球団売却の検討が、この問題を複雑にしているという声もあり、シスネロス記者は「球団売却は間違いなく大谷に何らかの影響を与える」と強調する。

 また、ウォード記者は「契約問題が解消され、大谷がエンゼルスに残ることが確実であれば、売却する上でも大きなセールスポイントになる」としながらも、「球団を手放すつもりのアート・モレノ氏が、大谷のために多額の資金を使うでしょうか。また、次期オーナーが高額な年俸を引き受けるかもわかりません」という。

 さらにブラム記者は、契約延長に加えて大谷自身の考えにも注目する。

「大谷に関する一番の話題は、2023年以降の彼の将来と、彼がエンゼルスに残るかどうかです。彼はエンゼルスに残りたいのか、新オーナーになることを楽しみにしているのか、来季中のどこかで(エンゼルスとの)再契約を望んでいることを示すのか。そこに私は注目しています。大谷は、いつもそうですが手の内を見せないようしますから」

 球団売却が先か、大谷の契約延長が先か。あるいは、大谷は残留を望んでいるのか。この問題の行方が、オフシーズン最大のトピックになることは間違いない。

 次に、各記者が言及したのは「トレード問題とそのタイミング」だ。エンゼルスのペリー・ミナシアンGMは11月7日、「今オフ、大谷翔平をトレードすることはない」と明言。この発言に大谷のトレード賛成派は大きな衝撃を受け、『スポーツ・イラストレイテッド』系列の『ヘイローズ・トゥデー』は11月13日に、「ペリー・ミナシアンGMは、今オフに二刀流のスーパースター、大谷翔平をトレードしなないと明言して衝撃を与えた」という記事を掲載した。

 エンゼルスの地元記者たちの見解はどうか。GMの発言も含めて質問すると、彼らはトレードについて肯定的な意見を述べた。

「大谷にとってはエンゼルスを去ることが最善の選択だと思う。大谷はチームが崩壊していく様を見てきているし、今度はオーナーが変わる可能性がある。(チームが)彼の信頼を得ることはより難しくなるはず。それならば大谷は、信頼性の高いコンテンダー(優勝候補)のチームに行くほうが得策でしょう」(シスネロス記者)

「彼らにとってベストなことは、大谷、ミナシアンGM、そしてモレノ氏がオープンに対話することです。そして全員が同じ方向を向く必要がある。大谷がエンゼルスに残りたいと思っているなら、すぐにでも交渉を始めるべきだし、そうでなければ彼の価値を最大限に生かすためにトレードを検討すべき。(トレードによって自チームを補強できるチャンスがあるのに)何もしないまま来季が終了したあと、他球団に移られるなんてことはすべきではありません。

 大谷は球史に残るような大型契約を交わすでしょうし、エンゼルスにもそれを可能にできる財政的な余裕もある。お互いの立場がわかっている以上、直接話をしないとすべてが危うくなると思います」(ウォード記者)

「(エンゼルスが)トレードに対してオープンであることが、両者にとってベストかもしれませんね。エンゼルスは今季、大谷を擁しても上位に行けませんでした。それは他の選手層が十分ではなかったからです。彼をトレードすれば、チームの選手層はよりいいものに早変わりしますし、来季の大谷にはプレーオフ進出のチャンスが与えられます。とはいえ、エンゼルスが彼をトレードしたくないという理由も理解はできますけどね」(ブラム記者)

 このように、現地記者たちは「仮に大谷のトレードが実現してもそれはやむを得ない」という考えを示した。

 エンゼルスは11月15日、ロサンゼルス・ドジャースからFAとなった今季15勝の左腕タイラー・アンダーソンと3年総額3900万ドル(約54億円)で契約するなど補強に動いている。これは、大谷を残すための補強か、彼が去ってもチームが勝てるようにするための補強なのか。その意図はまだわかっていない。

 前述のGMの発言によれば、今オフのトレードの可能性は一旦はなくなったようだが、来季中に実現する可能性は残っている。そのため、今後の動きを含めて「どのタイミングで?」ということに記者たちも興味津々の様子だ。

 そして、最後は大谷の「WBC出場意思の表明」についてだ。11月17日、大谷は自身のインスタグラムで、「WBCの出場に関しましては栗山監督に出場する意思がある旨を伝えさせていただきました」と発表。現地記者たちも大谷が日本代表としてWBCに参加することに高い関心を寄せているようだ。

「個人的には、日本代表の一員として大谷の投球を見たいと思っていました。WBCは、国を代表する有名な選手が見られるので、開幕が近づくにつれて(大谷の出場も含めて)楽しみが大きくなってきました」 (シスネロス記者)

「大谷が日本代表になることを望み、それをエンゼルスが認め、WBC出場が実現すれば大会にとって大変意義のあることだと思います。日本の若い選手のなかには、将来アメリカでプレーしたいと思っている選手もいると思いますし、そのような選手にも門戸を開くことができますからね。

 それに、今や大谷は日本文化を知るための新しい架け橋となっている。私が言うのもなんですが、アメリカ人の日本とのつながりは、アニメやマルチメディア(テレビ、ソーシャルメディア、映画など)を通してのものが多いように感じます。彼のように世界一と言われる選手が大会に出れば、アメリカだけでなく世界中の視聴者がもっと日本文化に触れることができるのではないでしょうか。

 また、大谷が日本のために、フアン・ソトがドミニカのために、マイク・トラウトがアメリカのためにプレーするという、世界最高峰の選手たちが自分の国を代表してプレーするということは、野球界にとって最高の出来事になります」(ウォード記者)

「彼がWBCでプレーしていることはクールだし、(世界中から)彼に関心が集まっていることを考えると、プレーすることはいいことだと思います。また、WBCでは、大谷はマイク・トラウトとの対決の可能性もありますしね。楽しみです」 (ブラム記者)

 このように、現地メディアはすでに来季以降の大谷の動きに注目している。特に大谷とエンゼルスの間には早急に解決しなければならない問題が山積しているため、今後どうなるのかに関心が集まる。来季の開幕までに両者の間に大きな動きがあるのか。現地メディアの報道とともに、その動向を注視していきたい。