天気は晴れて、気温は19℃、湿度も低く追い風となる好条件に恵まれた11月6日の全日本大学駅伝。3区から独走態勢を作った駒澤大が、2020年に出した大会記録を4分21秒更新する5時間06分47秒で優勝し、4位の順天堂大までが大会記録を更新する5時間10分台で走った超ハイレベルなレースとなった。


5位をキープしてゴールした創価大の山森龍暁

 そのなかで10月の出雲駅伝では6位になり、今回初出場だった創価大は大きな崩れを見せない安定したレース運びで5位に入り、箱根駅伝3年連続シード権獲得の底力を見せた。

 出雲と同じく平地区間が多く、区間距離も7区の17.6kmと最終8区の19.7km以外は9〜12kmと短く、スピードが必要とされる駅伝というのがポイントだった。

 それを考慮し、「今回は、トラックの力がある選手が優先的にメンバーに入ってきた」と話す創価大の榎木和貴監督は、最初のエース区間2区に、今年1万mワールドユニバーシティゲームズ代表になった葛西潤(4年)を置き、中盤の主要区間である5区には嶋津雄大(4年)、7区にはフィリップ・ムルワ(4年)と主力選手を置き、どこかで誤算の走りが出ても立て直せる安定感重視の区間配置をした。初出場だからこそ確実にシード権を獲得し、箱根駅伝や来年につなごうという意図だ。

「チームの目標を3位にしていたので、やはり優勝を狙う布陣ではなかったと思います。優勝を狙うなら7区、8区までにしっかり勝負をするとか、ムルワを5区あたりに置いてもっと上位に押し上げておくような区間配置が必要だったかなと思います。ただ、3位を目標にしたなかで、選手たちはよく粘ってくれたという感じです」(榎木監督)

大きな計算違いはない

 流れを作らなければいけない序盤の区間は、1区にこれまで3大駅伝に出場していないながらも、5000mはチーム日本人2位の13分57秒61の記録を持ち、1万mも10月下旬に28分33秒58を出した横山魁哉(4年)を起用。青学大の目片将大(4年)がスタート直後から飛び出したが、有力校がいる集団は牽制しあって、5km通過が目片から30秒以上遅れる難しい展開になった。そのなかでも冷静に走り、終盤も粘って青学大に9秒差、駒澤大と同タイムの5位で繋いだ。

 その走りを受けた2区の葛西は、駒澤大のスーパールーキー・佐藤圭汰(1年)と競り合いながら前の青学大をかわすと、2.8km過ぎには大東大を抜いて先頭に立った。そして終盤は一度引き離されながらも、ラストスパートで佐藤をかわし、区間新の走りで1秒差のトップで3区につなぐ目算どおりの展開へ持ち込んだ。

 そのあとの3区では吉田凌(2年)が区間12位で4位に落とし、4区は出雲駅伝も走った石丸惇那(1年)が区間11位で6位まで落とした。だが5区の嶋津は2秒前にスタートした青学大にすぐに追いつく積極的な走りをすると、結果的に区間3位の走りで4位の中継となったが、10km過ぎには50秒前に出ていた順天堂大や1分05秒前だった早稲田大を抜いて3位争いを主導する彼らしい走りでレースを立て直した。

 だがそのあとは、6区の新家裕太郎(4年)は青学大と順天堂大に突き放されて5位に落ち、7区のムルワと8区の山森龍暁(3年)は順位を上げることはできなかった。それでも結果は、一時は前にいた早稲田大や、中央大や東洋大を抑えて、5時間12分10秒での5位。今、持っている力は見せつけた。

「3区と4区が2年と1年だったので、『そこでどれだけ耐えられるかな』と思っていましたが、上位の大学は4年生を配置したり、起用した1年生が区間賞を獲ったりとか、強いチームの勢いが我々より上回っていたと感じました」

 こう振り返る榎木監督は、「大きな計算違いはなかった」と言い、こう続けた。

ハイレベルな戦いで得たこと

「それぞれ選手たちが目標タイムをしっかりクリアして攻めてはいるが、駒澤大が大会記録を4分以上更新して4位までが大会記録を上回っているのを見ると、全体的にレベルが上がっているし、それに我々の強化が追いついていないというのを改めて感じました。

 主要区間の4年生は流れを作る計算どおりの走りをしてくれたが、3区と4区は設定の最低限のところはクリアしたとはいえ、欲をいえば『もう20秒ずつ粘ってくれたら』という感じ......。彼らは周りの大学がみんな突っ込んで行くなかで、少し躊躇してしまった走りになったかなと。

 それに6区の新家も、箱根駅伝では山の特殊区間で自分のストロングポイントを発揮してほしい選手だが、今回の平地では攻めきれないところが出てしまった。その3区間がもう少し耐えきってくれていたら、3人で1分は変わっていて6区終了時点で國學院大や順大の2位争いにも入っていけたかなと思います」

 ムルワも区間3位の50分37秒で走ったが、いい状況できていたらもっと走れたはず。結果的には前がまったく見えないなかで、力を出し切れなかったといえる。また8区の山森も大学駅伝は初出場で区間順位は11位だったが、記録は59分08秒で、昨年の記録なら区間4位に相当する合格点の走りをしたが、攻めの走りに徹した上位校はもっと速かった。

箱根では適正を生かせるはず

 ただ、このあとの箱根駅伝に目を向ければ期待も見えてきた。今回1区を走った横山は、ハーフマラソンへの対応力を確かめる意味もあって、来週のハーフマラソン出場を予定しているが、「夏場のタフな練習をクリアしてきているので期待をしている」と榎木監督が話す選手。それをクリアできれば、スピードもあるだけに主要区間での起用も見えてくる。また、今回5人が走った4年生は層が厚く、箱根経験者2名を含めたハーフマラソンでも実績を持っている選手が多く残っていて競争は激しい状況だ。

「今回シード権を獲得したことで来年もチャンスが生まれました。3年生以下の選手たちがどういった戦いをしていくかというのも、これからの我々の取り組みの課題かなと思います。箱根の場合はこれまでの出雲や全日本とは違い、距離が長くて起伏もあるコースもあるので、そういったところで適性も生かせる。

 今回走った選手たちが最大限の戦力ではないし、メンバー入りできなかった選手たちも来週のハーフマラソンで存在をアピールしてくると思う。ただ、ひとりでレースを組み立てるとか、最初から攻め倒す走りとなると、まだまだうちは経験できていない面も多いので、そういうところも練習や試合でいろいろ経験させながら、あと2カ月で選手たちの戦える能力や精度を高めていきたいと思っています」(榎木監督)

 今大会、安定した力があることを示した創価大。来年のシード権を獲得したことで、3年生以下の選手たちのモチベーションもこれまで以上に上がってくるはずだ。そんな選手たちが層の厚い4年生たちの中に数多く食い込んで来る状況になれば、箱根はこれまで以上に勢いをつけて臨めそうだ。