羽田空港へ鉄道で向かう際にネックになるのが、JR・東急の蒲田駅から京急蒲田駅へ徒歩移動を強いられることです。両駅を結ぶ新路線「蒲蒲線」計画もありますが、どう移動するとよいでしょうか。

近くて遠い、JR蒲田駅と京急蒲田駅

 羽田空港への鉄道の玄関口となる、東京都大田区の京急蒲田駅。京急本線から分岐する空港線は1時間あたり11本の高頻度運転で、空港ターミナルへの旅客輸送を担っています。


東急蒲田駅。JR蒲田駅と併設し、京急とは距離がある(乗りものニュース編集部撮影)。

 いっぽう、京急蒲田駅と隣接するのが、JR京浜東北線と東急多摩川線・池上線の蒲田駅です。一見乗り換えできそうな位置関係ですが、実際は約800m離れており、移動には12分近く要します。これを解決するのが、東急多摩川線を地下化・延伸して、京急蒲田駅、さらには空港線方面へ接続させる「蒲蒲線」計画です。

 2000(平成12)年から構想されてきたこの新線は、ことし2022年6月、ようやく基本的事項について都・区の合意が図られ、いよいよ事業化の一歩手前まで話が進みつつあります。

 ただ、開通するのはまだまだ先の話。そもそも現在、JR蒲田方面から羽田空港へはどう行けばいいのでしょうか。

徒歩移動は「アーケード」移動が確実?

 まず徒歩で2駅間を連絡する場合です。地図を見てまず目につくルートが、JR蒲田駅東口のロータリー南側交差点から、ほぼまっすぐ京急へ伸びる道路です。ただ京急蒲田駅の入口は北寄りにあり、京急の高架に到達してからが意外と長いのに注意です。また、東西南北を見失いやすい風景が続くため、勘で歩くと思わぬ方向へ迷いかねません。


JRと京急をむすぶアーケード街(乗りものニュース編集部撮影)。

 勘で歩いても確実に到達するためには、常に「アーケード」を通るのがコツです。JR蒲田駅からは、東口に出て左手方向(北方向)に進路を取り、そこから歩道アーケード→斜め右方向へ歩道アーケード→左奥の全面アーケード「あすと」と進めば、京急蒲田駅です。京急蒲田駅を出発する場合は、西口ペデストリアンデッキの右手方向のエスカレーターを降りれば、「あすと」が待ち構えています。

JR蒲田駅から羽田空港へ直行したい場合

 実はJR蒲田駅から1本で羽田空港へ行く方法もあります。それが東口の階段目の前にある0番のりばを発着する、京浜急行バス「蒲95」系統のシャトルバスです。他の京急バス路線とは異なり、白地に赤帯の観光バス車両が使用され、途中の停留場は大鳥居だけ。1時間2〜3本の運行で、第3ターミナルまでは19分、第1ターミナルまでは31分で結びます。

「どうしても歩かずにJR蒲田駅へ直行したい!」という場合は、このバス路線一択でしょう。

 あわせて、一般路線「蒲31」「蒲41」も羽田空港行きで、2系統あわせて1時間4本が運行されています。こちらシャトルバスより12分程度長くかかります。また、のりばが蒲田駅からアーケード沿いに徒歩数分ほどの距離にあるのに注意です。逆に蒲田駅で降りる際の降車口も、駅から若干離れたところにあるという難点もあります。

 ちなみにJR蒲田駅周辺では再開発計画がありますが、東口のバスのりば群をアーケードからもっと駅に近づけることについては、「これまでの調査から現状での対応は困難」とされています。

「西側」へは直行手段なし!

 羽田空港からJR蒲田駅までは先述のとおりバス直行便がありますが、そこからさらに西側、つまり東急多摩川線や池上線沿線へ直行する公共交通機関は、今のところありません。

 というのも、京急バスはJR蒲田駅東口より東側、東急バスは同駅西口から西側と営業エリアが分かれており、JRをまたぐように東西地区をむすぶ路線が運行されていないのです。

 東急のある役員は、東急蒲田駅と京急蒲田駅のあいだは「魔の800m」のようだと話していました。東急多摩川線沿線にある大手企業を訪問する外国のビジネス客にとって、近くて遠い2駅間の移動が負担になっているのだとか。座って行きたいという場合、タクシーが残された唯一の手段と言うしかない現状があります。関西から来た旅行客も「キャリーバッグを転がして2駅を移動するのは途方に暮れる」と話していました。

 こうしたことから、せめて2駅間を徒歩無しで移動できる「蒲蒲線」を求める声が地元から上がっているのです。

近くて遠い、「山手線の西半分」から羽田空港

 蒲蒲線は、東急多摩川から同東横線・東京メトロ副都心線を介して、渋谷・原宿・新宿・池袋方面へ短絡できるという、広域ネットワーク上の大きなメリットが期待されています。

 京急は品川から都営浅草線に直通し北上してしまうため、「山手線の西半分」からの移動はどうしても品川で乗り換える必要があり、羽田アクセスの"距離感"の原因となっています。蒲蒲線の実現により、東武東上線・西武・京王・小田急・東急から直接羽田空港へ向かうルートが構築されれば、リムジンバスよりきめ細やかでわかりやすい移動体系となるでしょう。
 
 気になるのが、トントン拍子に話がすすむ、JR東日本の「羽田空港アクセス線」計画です。空港からまっすぐ北上し、既存の貨物線も活用しながら天王洲アイル付近を経由して都心に向かうもので、田町から東京駅方面、大崎から渋谷・新宿方面と、縦横無尽に連絡する構想となっています。2021年に早くも国の事業許可が下り、2029年度開業に向けて準備が整えられていこうとしています。「蒲蒲線」とどちらが早く実現を迎えるのでしょうか。