唯一、妻の自分だけ部屋がない家を新築。1年半が過ぎて生まれた心の変化
家で過ごす時間が長くなりつつある昨今。テレワークも浸透し、自分だけのスペースを自宅に持ちたいと考える人が増えています。2階建て住宅を建てた日刊住まいライターは、家づくりの際に自室の必要性を感じませんでした。しかし、1年半暮らして「つくっておけばよかった」と思うように。その理由と、間取りづくりの難しさについて語ります。
2階建ての新居で、家族で唯一自室のない筆者
夫と3人の子どもたち(長女8歳、長男6歳、次女4歳)と5人暮らしの筆者。1年半前に2階建ての家をハウスメーカーで建てました。
プランの打ち合わせの際、筆者はとくに自室を要望しませんでした。仕事や趣味のことをするうえで、必ずしも自室が必要でなかったためです。
そしてできあがったわが家の間取りは、以下のようなものでした:
1階…LDKと隣接した洋室や水回り
2階…夫婦の寝室、将来の娘の子ども部屋(可動式収納で2つに仕切ることが可能)、将来の息子の子ども部屋兼夫の書斎(可動式収納で仕切られている)
子どもたちはまだ小さくて、自室を使う機会は少ない状態。そのため現在は、2人の娘用の部屋を仕切らず、広い遊び部屋として使っています。
住み始めてから変わった状況。私も自室が欲しい!
実際に暮らし始めて1年半が経過すると、新築計画時から状況が変わりました。筆者が自宅でパソコンを使って仕事をする時間が、以前に比べて圧倒的に増えたのです。
新居に住み始めた当初は、筆者自身も夫もダイニングテーブルでの作業に、とくに問題を感じていませんでした。しかし、帰宅時間の遅い夫が、帰宅後にテレビを見ながら晩酌したりくつろいだりしにくいのです。
筆者自身も、テレビの音などで集中力を欠き、作業が途切れてしまうことも。これがなかなかのストレスに。お互いにとってよくありません。
仕事以外にも、自分ための時間を大切に過ごしたいと思うようにも。子どもが成長して手が離れ、これまでできなかった読書やくつろぎの時間が持てるようになりました。
このような状況になって、筆者自身も「自室が欲しい」と思ったのです。
そのときあいている部屋を使って乗り切ることに
自室が欲しいと思っても、部屋は増やせません。そこで、当面は、まだほとんど使用していない、2階にある息子の将来の子ども部屋を活用することに。部屋の一角を、筆者の作業スペースにしました。
この位置は、可動式収納の仕切りをへだてて、夫の書斎の隣。帰宅して荷物を置きに来た夫と、会話しやすい位置関係です。
荷物を置いた夫がくつろぎたい場合は、1階に移動。筆者はそのまま、自分用のスペースで作業。テレビの音などが直接的に影響することもなく、お互いに快適にひとり時間を過ごせています。
ただ、これはあくまで息子が自室を使うようになるまでの暫定的な措置。猶予はわずかに数年間でしょう。息子が自室を使うようになったら、1階のLDKに隣接する洋室に、筆者の作業スペースを移そうかと考えています。
その洋室は現在、ほぼ子どもの遊び部屋になっている場所(写真右上)。もともとは、客間として、また、将来の介護用の寝室などとして使うことを想定した「多目的スペース」です。
パーテーションで区切ることもできるため、隣接するリビングから聞こえるテレビなどの音も軽減できます。子どもたちが自室を使うようになれば使用機会が減るため、筆者の作業スペースを移動できそうです。
そして、さらに数十年後に子どもたちが自立することになれば、また2階の居室に戻ってもいいかもしれません。
固定の自室がない筆者ですが、その時々の暮らしに合わせて移動しながら、パーソナルスペースを確保することができるのではないかと思っています。
提案されるプラン、なぜ「夫は書斎で、妻は家事室」?
現在では、自室が欲しい思う筆者。ですが、もしも新築計画時に戻れて、自室をつくるかどうかを選べるとしても、結局「NO」という選択をしたような気がします。
子どもたちにはそれぞれ個室を与えてあげたい、仕事上書斎が必要な夫を優先しなければならないという状況は、変わらないからです。
もはや、「夫には書斎を、妻には家事室を」という時代ではありません。妻の趣味や仕事の都合で自室をつくる家庭もあるでしょう。ひとり時間を満喫するスペースは、だれにあってもよいものだと思います。
多くの人は、家づくりでは限りある予算や面積のなかで取捨選択を迫られるもの。限りあるスペースを、どう分け合うかはその家庭次第です。
そして、「家は建てて終わり」ではありません。家づくりの際にはベストだと思ったことが、ベストであり続けないものです。
仕事や趣味はもちろんのこと、家族構成やライフスタイルも日々変化していきます。家づくり中にそれらすべてを想定して網羅することは難しい。
新居が完成し、住み始めてから自室が欲しくなった筆者。決まった自室はないけれど、筆者の場合は家の広さや「多目的スペース」という余白も手伝って、使い方の工夫で、今後も乗りきれそうと予感。変化に対応しやすいよう、部屋の使いみちを柔軟に考えながら、快適に生活していきたいです。