浴室共有の二世帯住宅事例:メリットと気兼ねなく使うための間取りの工夫を紹介
二世帯住宅を建てる際の悩みは、「どこまでを両世帯で共有するか」という点。8年前に二世帯住宅を建てた日刊住まいライターは、玄関と浴室を両世帯の共有スペースに。ただ浴室は、それぞれのプライバシーを守り、気兼ねなく使いたいと望んでいました。そのため、両世帯が快適に暮らせるよう、浴室への動線や収納には大いにこだわることに。ポイントと使い勝手、そして共有ならではのメリット・デメリットについてレポートします。
浴室を共有スペースにした理由
1階が親世帯(義両親)、2階が子世帯(筆者の家族)という二世帯住宅を建てた筆者。早い時期から、浴室は両世帯で共有にしようと決めていました。その理由は、以下の3つ。
●浴室は広さを重視
以前の住まいの浴室は、1620(1.25坪、内寸幅160cm×奥行200cm )サイズ。子ども2人と一緒に入浴しても広々としてとても快適で、新しい住まいでも、同じ広さを希望しました。親世帯、子世帯にそれぞれ浴室をつくることで、どちらも中途半端なサイズになってしまうなら、1つにして広い浴室にしようと考えたのです。
●居室の広さを犠牲にしたくない
浴室を2つつくると、その分ほかのスペースを犠牲にすることになります。とくに2階の子世帯は、LDK、主寝室、子ども部屋、トイレ、洗面室と1フロアにたくさんの要素が必要で、間取りづくりの際は、各居室の広さを確保するのに苦心していました。さらに浴室も追加することで、LDKなどの広さが犠牲になるのは避けたいと思ったのです。
●光熱費を抑えたい
浴室が両世帯で別となると、毎日2つ分の浴槽にお湯をためることになります。その分の水道代は当然2倍。浴室を1つにすれば、その分光熱費も抑えられるだろうと考えました。
快適に使うためこだわった間取り
とは言え、浴室は毎日使う場所なので、お互いに気兼ねせずに使いたいものです。どちらの世帯もストレスを感じないよう、位置や動線、収納については検討を重ねました。
何パターンもの間取り案をつくり、最終的に決まった浴室の位置は、親世帯のスペースである1階の東北側。
広さは1721(1.25坪、内寸幅170cm×奥行210cm)と希望通り。浴室を1つとしたことで費用面での負担も小さくなったため、標準仕様から1つグレードアップした浴室を選ぶことができました(グレードの違いで変わるものは、手すりや棚の数、ミラーのサイズなど)。
そして浴室の広さ以上にこだわったのが、脱衣室に関する次の3つでした。
●洗面室と脱衣室は分けて、ドアで区切る
親世帯の使う洗面台は脱衣室の中ではなく、脱衣室・浴室とは空間を分けました。子世帯の入浴と、親世帯が洗面室を使いたいタイミングが重なっても、不便を感じないようにするためです。
洗面室と脱衣室の間は、ロールスクリーンなどの簡易的な仕切りではなく、引き戸できちんと区切るというのもこだわりでした。
正面の引き戸の向こう側が親世帯の洗面室。ドアを閉めてしまえばプライバシーが守られるため、入浴していても気になることはほとんどありません。
●どちらの世帯のスペースからも直接出入りできる
洗面室と脱衣室を分けても、親世帯の専有スペースである洗面室を通って脱衣室に入る間取りだと、やはりお互い気を使ってしまいます。そこで、脱衣室につながるドアは2方向につくりました。
1つは親世帯の洗面室との境に。そしてもう1つは階段の下り口からすぐの場所に。
子世帯の入浴時は、2階から階段を下りてそのまま脱衣室に入れるので、親世帯の専有スペースを通る必要がありません。
2方向から入れる脱衣室は、どちらの世帯からもアクセスがよく、一方で両世帯の動線がかち合うこともなく、とても快適です。脱衣室には、入浴時だけでなく、洗濯物の片づけや消耗品の補充などで意外と1日に何度も出入りします。その際に毎回親世帯のスペースを通る間取りだったら、お互いストレスだっただろうなと思います。
地味ですが、この脱衣室への2方向の動線が、二世帯での快適な暮らしの要だったと実感しています。
●脱衣室には二世帯分の独立した収納
タオル、下着、パジャマなどの脱衣室内に置きたいリネン類。二世帯分のこれらを収められるよう、脱衣室には天井までの扉つき収納を2つつくりました。各世帯で1つずつ使用しています。
二世帯分で量も多いので、収納量は当然大事です。でもそれ以上に、それぞれの収納が独立していて、両世帯のリネン類が混じり合わないことをより重視しました。
親世帯のものは親世帯専用の収納に、子世帯のものは子世帯専用の収納に。
スペースとしては共有であっても、持ち物は分離しておのおので管理できること。これもまた、お互いのプライバシーを守ることにつながっていると感じています。
共有することのデメリットよりメリットが大きい
浴室を二世帯で共有することのデメリットとしては、自分たちのペースで入浴時間を決められないということが一般的にはあると思います。
しかし、わが家の場合、「間取りの工夫+生活リズムの違い」のおかげで、入浴時間の不自由さでストレスを感じたことは、幸いにもほとんどありません。
筆者の世帯は共働きということもあって、入浴時間がどうしても遅くになりがち。そのため、親世帯が早い時間帯(19時頃)に、子世帯がその後(20時以降)に入浴することに。このような生活リズムに、自然と落ち着きました。
塾で帰宅が遅くなった子どもが、22時を過ぎて入浴することもあります。でも、洗面室とは分かれているため、親世帯の生活リズムには影響はなし。気兼ねも不要です。
家事で忙しいとき、仕事が長引いたときなどは、子どもたちの入浴の介助を義両親にお願いしています。浴室が共有だからこそできること。共働きで忙しいわが家にとっては、メリットの方が大きいように感じています。
家事の動線は少し面倒になる
わが家が選んだ浴室にまつわるプランで、気になることがあるとしたら、動線の長さ。子世帯にとってはメインの生活スペースが2階、浴室が1階とフロアが別れています。これはやはり少々不便。浴室や脱衣室に用があるたびに階段を上り下りするので、どうしても家事の動線は長くなってしまうためです。
入浴時に必要なものは脱衣室に収納するなど、できるだけ行き来を少なくする工夫が必要です。その点でも、大きめの収納をつくったことは正解でした。
浴室を共有するか否かは、親世帯・子世帯の距離感やそれぞれの生活リズムなどによっても判断が分かれるところ。わが家のプランを、一例として参考にしていただければ幸いです。