60歳前後は住まいを見直すチャンス。夫婦2人暮らしに最適な「終の棲家」は?
人生100年時代。住まいのことも人生において何度か考えなければいけなくなりました。まさに、60歳にさしかかるタイミングは、老後の「住まい」を考える好機。体力と気力があるうちから、最良の“終の棲家”を考えていきたいものです。シニア世代のマンション売却&買い替え事情について、『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)を上梓した、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんに聞いてみました。
体力も気力もある60歳前後は、「住まい」を見直すチャンス
人生100年時代。これからの長い人生を有意義に過ごすために、60歳にさしかかるタイミングで「住まい」を見直す人が多いのだそう。
定年退職や退職金の支給、住宅ローンの完済、子どもの独り立ちなどが重なる60歳前後は、老後の住まいを考える絶好のタイミング。残りの人生を満ち足りた時間にするため、自分たちの最善の場所を探っていきましょう。
●シニア世代が分譲マンションを「終の棲家」に選ぶ理由
冒頭のように、50〜60代のマンション購入者が増えている背景について、日下部さんに伺いました。
「賃貸アパート→分譲マンション→戸建てと住み替えていく、『住宅すごろく』が当たり前だった頃から数十年。現在は、マンションを“終の棲家(ついのすみか)”に選ぶ人が増加しています。実際に国土交通省の『マンション総合調査(平成30年度)』によると、分譲マンションの世帯主の年齢は、『60歳代』が27.0%と最も多く、次いで『50歳代』が24.3%、『70歳代』が19.3%となっています。また、同調査において、『永住するつもりである』が62.8%となっており、年齢が高くなるほど永住意識が高くなる傾向にあります」
なぜ、シニア世代にマンションが人気なのかというと、最大の魅力となるのが、立地のよさ。足腰が弱くなったり免許を返納したあとも生活しやすい、駅近マンションが人気を集めています。
「なかには戸建て住宅から、60歳前後でマンションに住み替える人も。立地のよさだけでなく、エレベーターの設置やバリアフリー設計に魅力を感じる人も多いです。ひと昔前はペットの飼育不可や騒音がネックポイントになっていましたが、現在は多くのマンションでそれらの問題も解消されています」
●地方ターミナル駅が人気!立地の選択肢も広がっている
ここ数年で価格が高騰しているのが、地方ターミナル駅付近のマンションだと日下部さんは言います。東北や九州など、新幹線を利用しやすいエリアがシニア世代を中心に人気を集めています。ライフワークバランスを重視しているのはシニア世代も同じ。老後の生活を楽しむために、公共交通機関を利用しやすい地方を選んでいるのです。
「じつは、シニア世代にとって今はマンション売却のチャンス。“立地を重視してダウンサイジング(狭い部屋に住み替えること)を希望するシニア世代”と、“在宅勤務が増えて家族でゆったり過ごせるファミリーマンションを探しているという若い世代”と、需要と供給がぴったり一致しているんです」
実際に、前出の令和3年度住宅市場動向調査報告書によると、初めて住宅を取得する世帯は、「30歳代」が最も多く、2回目以上の取得となる二次取得世帯は、「60歳以上」が最も多いという結果が出ています。
「広いマンションにもメリットはありますが、部屋が大きくなると管理費等や固定資産税も増えてしまいます。ひとり、もしくは夫婦ふたり暮らしの場合は、ダウンサイジングして立地のよいマンションに買い替えるという選択肢もあります」
●70代になると買えなくなる?ローン申し込みのタイムリミット
「シニア世代が買い替えを検討する際、注意すべきなのが『年齢の壁』。金融機関ごとにローン借入時と完済時のボーダーが定められているので、全額を現金で買う場合を除いてタイムリミットを意識しておく必要があるでしょう」
借入時のボーダーを70歳前後に設定している金融機関が多く、なかには65歳未満なんてシビアな設定も…。借入前の審査に数か月かかることも見越して、早めに行動するのが吉と言えます。完済時のボーダー(80歳前後)から逆算すると、長くても借入期間は15〜20年。全額ローンでまかなうのは難しいため、現金+ローンの合わせ技が現実的です。
「60歳からの買い替えの場合、貯金や退職金などを充てたうえで“足りない分をローンで補填する”のが最適解。近年は高額ローンも通りやすい傾向にありますが、無理をすると老後破産の恐れもあるので注意しましょう」
5年先、10年先、20年先の自分--。今後のライフステージやライフスタイルの変化をイメージしながら、無理なく購入できる住まいを選択していきたいですね。