今夏の「マクドナルド・トーナメント」で3位になった埼玉・熊谷グリーンタウン【写真:加治屋友輝】

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埼玉・熊谷グリーンタウンは今夏のマクドルド・トーナメントで3位

 日本一まであと一歩と迫った強さの理由は「チーム内競争」と「ミスを繰り返さない復習」にあった。少年野球チーム「埼玉・熊谷グリーンタウン」は、8月に開催された小学生の日本一を決める「高円宮賜杯第42回全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」で3位に入った。平日は活動しない、限られた練習時間で結果を出すためのチーム作りが実を結び、全国大会の舞台でも無失策だった。

 3度目の出場となった「マクドナルド・トーナメント」で3位。斉藤晃監督は「たまたまです。打撃の調子が悪くて、本来の力の半分くらいしか出せていなかったので、勝ったのが不思議なくらいで正直驚いています」と謙遜するものの、幸運だけで全国大会の準決勝までは進めない。

 全国1万1000チームが参加し「小学生の甲子園」とも呼ばれる舞台で好成績を残せた要因の1つは“守備力”にある。熊谷グリーンタウンは大会中、失策を1つも記録しなかった。チームで繰り返してきた練習が、本番でも活かされた形だ。チームを率いて16年目を迎えた斉藤監督は、ミスをすぐに修正して、繰り返さないチーム作りを心掛けてきた。

「うちのチームは代々、スーパースターがいるわけではありません。チーム力を上げるには選手全員の力を上げることと、ミスを繰り返さないことが大切。全国大会でエラーをしなかったのは、一番成長を感じた部分です」

 チームは平日に活動しないため、土日祝日に練習や試合をしている。土曜日の練習試合で走塁や守備にミスが出た場合、試合後か翌日の練習で原因をチーム内に共有し、反復練習する。指揮官は「タッチアップ、ハーフウェー、スライディングなど課題が見つかれば、できるようになるまで時間をかけます」と説明する。スライディングの練習だけで、時には1時間に及ぶ。

ミスを連鎖させない声かけも練習、積極的な打順入れ替えで競争

 ただ、どんなに練習してもミスは起こる。そこで、斉藤監督はミスを“連鎖させない”声かけも練習で徹底している。「声の出し方も練習が必要です。日頃の習慣が大事な場面で上手くいくか失敗するかの差になると思っています」。どんな時でも周囲に目を配り、自然と声が出るように、グラウンドに入ってきた人に対しては、たとえ知らない大人だったとしても、誰もが一番にあいさつする意識を持っている。大事な場面でミスが出た時、誰かが雰囲気を変える声を出せるよう、1人で大きな声を出す練習もしている。

 全国3位の要因には「チーム内競争」もある。「マクドナルド・トーナメント」の埼玉県予選からは、ある程度打順を固定したが、それまでは公式戦を含めて打順を入れ替えながら戦ってきた。チーム内でポジションや打順を競わせるのは、斉藤監督のチーム作りの柱となっている。

「子どもたちのモチベーションや自主性を生むのは“競争”だと思っています。打順が下がった選手は上位で打ちたい気持ちで必死に練習します。それを見て、私が打順を上げるという繰り返しです」

 選手の起用法を決めるのは、試合の結果だけではない。指揮官が重視するのはフルスイングだ。体格の大きさにかかわらず、全ての選手に「強く、大きく」バットを振るよう伝えている。「今はバットとボールが進化して打球が飛びます。体が大きくなくても本塁打を打てます」。バットに当てにいく打者は、相手投手に怖さを感じさせない。斉藤監督は、フルスイングできる選手にチャンスを与えているという。

 土日祝日に加えて平日も練習するチームが多い中、土日練習のみで全国3位に入った熊谷グリーンタウンは少年野球の可能性を示している。練習方法や指導方針しだいで選手の力を最大限に引き出せるのだ。(間淳 / Jun Aida)