なにわナンバーの交付は何県が対象なの?

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近畿地方を中心に、全国各地で見かける「なにわ」ナンバーの車。ひらがなで地域が書かれたナンバープレートはめずらしいため、「あれって何県のナンバーなの?」と思っている方は多いことでしょう。

疑問に答えると、なにわナンバーは大阪府大阪市で交付されているナンバーです。大阪市といえば、梅田や心斎橋に代表される繁華街や、超高層ビル「あべのハルカス」などが有名な政令指定都市。なにわナンバーは近畿地方一の大都市で交付されているナンバーなのです。

■大阪市の車ナンバーなのになぜ平仮名「なにわ」?

なにわナンバーの特徴であり謎といえるのが、平仮名で「なにわ」と書かれた地域名です。大阪市のナンバーであれば、地域名の表記は「大阪」でよさそうなもの。実際のところ、大阪府の吹田市や枚方市、東大阪市などの18地域では「大阪」ナンバーが交付されています。

では、なぜ大阪市のナンバーは平仮名の「なにわ」なのか。大阪のナンバープレートの歴史をひも解くと、疑問の答えが見えてきます。

・大阪府は「大」ナンバーだった

現在のナンバープレート(自動車登録番号標)の原型ができあがったのは、「道路運送車両法」が成立した1951年(昭和26年)のことです。当時のナンバープレートの地域名は道府県(東京都は省略)の頭文字で表されており、大阪府内の車は「大」ナンバーで統一されていました。

その後の1964年(昭和39年)には、陸運事務所の所在地をナンバープレートに記載するようになり、表記はフルネームに変わっています。このときに大阪府全域のナンバー表記は「大」から「大阪」に変更されました。

・なにわナンバーは1983年に誕生した

高度経済成長期の真っただ中にある1960年代には、日本全国で自家用車の登録台数が急増しました。陸運事務所では負担軽減のために支所を設ける必要が生じており、大阪府では1965年(昭和40年)に府の南部を担当する和泉支所が新設されています。

その18年後の1983年(昭和58年)には、大阪市の住之江区南港東にも陸運支所を開設することが決定。これに先駆けて、支所で交付するナンバープレートの地域名を決める必要が生じました。支所の所在地は大阪市であるものの、大阪ナンバーはすでに存在するため、別の地域名を考えることになったのです。

そこで「住之江」「西大阪」「南港」「摂津」などの候補があがり、選考の結果、大阪市の古称で全国的な知名度もある「なにわ」が地域名に決まりました。支所名も「大阪府陸運事務所なにわ支所」(現在の「なにわ自動車検査登録事務所」)に決まり、なにわナンバーの交付がスタートしています。

・なぜひらがなの「なにわ」?

なにわナンバーが存在する理由は判明しましたが、まだ平仮名表記の謎が解けていません。ナンバープレートの地域名は原則として漢字表記と決められており、平仮名表記にするには特別な事情が必要です。では、なぜ「なにわ」は平仮名で書かれているのかというと、漢字では表記を統一しにくいからです。

「なにわ」の漢字表記には「難波」「浪速」「浪花」「浪華」など、複数の種類があります。これらの漢字の1つだけを地域名に選ぶことは難しく、かつどの漢字も「なにわ」と読むには知識を要します。このため、表記を統一できて誰にでも読める、平仮名の「なにわ」が地域名となったのです。

ちなみに、地域名が平仮名のナンバーは全国でも少なく、「なにわ」「いわき(福島県)」「つくば(茨城県)」「とちぎ(栃木県)」の4つしかありません。関西では「なにわ」だけが平仮名表記のナンバーとなっています。

■大阪府内のナンバーは、他にどんなものがあるの?

大阪万博ナンバー

大阪府内にあるナンバープレートは「大阪」「なにわ」「和泉」「堺」の4種類。ちょっとややこしいのですが、大阪市内は「大阪」ではなく「なにわ」ナンバーなのです。

当初は大阪には運輸支局はなく、後になってから事務所ができたので、大阪ではなく「なにわ」ナンバーになった経緯があります。

「なにわ」ナンバーってどんなイメージ?

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■「なにわナンバーは怖い」

なにわナンバーに対するイメージをインターネットで調査すると、「なにわナンバーは怖い」となど次のような書き込みが見られました。

「なにわナンバーは運転が荒い」 「なにわナンバーはイカつくて怖い」 「ゾロ目なにわナンバーの高級車はマジで危険」 「なにわナンバーは当たり屋が多いから気をつけろ」

なにわナンバー車のなかでも、黒いセダンや大型ミニバン、高級外車は特に怖いイメージを持たれているようです。こうした車が怖いイメージを持たれる理由の1つとして、ドラマや映画の影響があげられます。

たとえば、闇金業者が主役のドラマ「ミナミの帝王」では、主人公が「なにわ7777」ナンバーのメルセデスベンツに乗っていました。こうした作品のイメージから、なにわナンバーと闇社会を結びつけて考える人が少なくないようです。

・和泉ナンバーのほうが怖いとの声も

なにわナンバーが一部の方に怖いイメージを持たれている一方で、ネット上には次のような意見も見られます。

「大阪で本当に怖いのは和泉ナンバー」 「近畿地方で怖いのは京都、姫路、和泉ナンバー」 「なにわナンバーの人は和泉ナンバーを怖いと思っている。逆もまた然り」

どうやら近畿圏内では、なにわナンバーより和泉ナンバーのほうが怖い、とのイメージがあるようです。ただ、イメージと現実は必ずしもイコールではありません。なにわナンバー車や和泉ナンバー車のすべてに怖い人が乗っている、ということは現実的にはあり得ないでしょう。

■「なにわナンバーはダサい」

インターネット上には「なにわナンバーはダサい」とする次のような書き込みも見られました。

「どんな高級車もなにわナンバーだとかっこ悪い」 「なにわナンバーはダサいの極み」 「なにわナンバーは日本一ダサい」 「なにわナンバーはヤンキーっぽくてダサい」

なにわナンバーがダサいと感じている人の多くは、平仮名表記にかっこ悪さを感じているようです。SNSの書き込みには「浪花か浪速だったらかっこよかったのに」との意見が多く見られました。

また、なにわの名称自体がダサいと感じている人も少なからずいるようで、「なにわより天王寺ナンバーか摂津ナンバーがよかった」との意見がネット上にあがっています。

■「なにわナンバーはかっこいい」

インターネット上には「なにわナンバーはかっこいい」との声もあがっています。SNSやQ&Aサイトなどをチェックしたところ、次のような意見が見られました。

「なにわナンバーってレア感あるな」 「なにわナンバーに憧れてます」 「古い外車はなにわナンバーが似合う」 「なにわナンバーのパトカーはかっこいい」

平仮名表記のナンバープレートは全国でも希少なため、なにわナンバーにレアさを感じる人は少なくありません。また、土地価格の高い大阪市のナンバーであることから、なにわナンバーは上級のイメージを持たれているようです。

このほかネット上には「なにわナンバーの旧車や業務車両はかっこいい」との書き込みが散見されました。渋いイメージのある旧車や業務車両と、平仮名ナンバーのマッチングがかっこよさを感じさせるようです。

なにわナンバーはご当地ナンバーでも人気?

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なにわナンバーは地域性の高いナンバーですが、いわゆる「ご当地ナンバー」ではありません。ご当地ナンバーとは、自動車検査登録事務所の所在地か否かを問わず、新しい地域名でナンバープレートを交付できる制度です。2006年10月に17地域に導入されて人気を呼び、現在では46地域でご当地ナンバーが交付されています。

一方、なにわナンバーは1983年に交付が開始されたナンバーです。新しいナンバーであるご当地ナンバーに対して、なにわナンバーは古参のナンバーといえるでしょう。ちなみに大阪府では、府内唯一のご当地ナンバーである「堺」ナンバーが2006年に導入されています。では、話題のご当地ナンバーである堺ナンバーは、なにわナンバーより人気が高いのかというと、そうでもないようです。

全国的にもめずらしい平仮名ナンバーであり、かつ大阪の歴史を感じさせることから、なにわナンバーは不動の人気があります。なにわナンバーをどこかで見かけた際は、大阪のナンバープレートの歴史や、「なにわ」という伝統ある言葉に思いを馳せてみてください。