「神経痛」の痛みの特徴はご存知ですか?医師が解説!

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誰もが耳にしたことがあるであろう「神経痛」という言葉は、病名ではなく痛みの症状そのものを意味しています。

神経痛では、痛みの原因となる病気が存在しているケースが多く見られます。そのため、神経痛の治療は、鎮痛薬などで痛みを抑えるだけでなく、原因や対処法を理解したうえで治療を行うことが大切です。

今回は、神経痛の原因や症状、神経痛になりやすい人、受診すべき科、検査や治療のポイントなどについて解説します。

神経痛とは

神経痛とはどのような病気でしょうか?

「神経痛」という言葉は、病名ではありません。
痛みを司る感覚神経が刺激を受けて生じる、「痛み」の症状を神経痛と呼んでいます。

神経痛の種類について教えてください。

神経痛には大きく分けて「症候性神経痛」と「特発性神経痛」の2種類があります。

神経痛の中でも、原因が判明しているものを症候性神経痛と呼びます。それに対し、原因の分からない神経痛は、特発性神経痛と呼ばれています。

症候性神経痛としては、以下に挙げる4つが代表的です。

坐骨神経痛

肋間神経痛

三叉神経痛

帯状疱疹後神経痛

神経痛の原因

症候性神経痛は、どのような原因で生じるのでしょうか?

症候性神経痛は、神経痛の種類で原因が異なります。

坐骨神経痛

坐骨神経痛は、何が原因で生じるのでしょうか?

坐骨神経痛の原因としては、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症が代表的です。
なかでも腰椎椎間板ヘルニアが多く、坐骨神経がヘルニアと接触することで刺激を受け、痛みを感じてしまいます。

肋間神経痛

肋間神経痛は、何が原因で生じるのでしょうか?

肋間神経痛は、あばら骨の間にある肋間神経が圧迫されたり刺激されたりすることで痛みが生じます。

原因としては、体のゆがみや椎間板ヘルニア、骨折などが代表的です。
ほかにも、感染症や内臓の病気、骨粗しょう症が原因で痛みが生じるケースもあります。

三叉神経痛

三叉神経痛は、何が原因で生じるのでしょうか?

三叉神経痛には、痛みや熱さ・冷たさといった顔面の感覚を脳に伝達する三叉神経が関係しています。

動脈硬化などが原因で膨張した血管によって、三叉神経が圧迫されたり刺激されたりすることで痛みが生じると考えられています。
ただ、動脈硬化などがみられず、原因が不明なケースもあります。

ほけにも、頻度としてはまれですが、脳動脈瘤や脳腫瘍が原因の場合もあります。ストレスや疲れで自律神経が乱れることも、痛みに関係しているという報告もあります。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛は、何が原因で生じるのでしょうか?

子どもの頃に発症した水ぼうそうウイルスが神経に潜んでいて、大人になってから免疫力が低下したことで再び活性化した状態が帯状疱疹です。皮膚に水ぶくれや赤い帯状の斑点が生じ、痛みを伴います。

帯状疱疹の皮膚症状が消えた後に、痛みだけが残る場合があり、これを帯状疱疹後神経痛と呼んでいます。

原因不明の特発性神経痛

原因不明で起こる特発性神経痛について教えてください。

特発性神経痛とは、原因不明の神経痛のことを指します。

この場合、上腕神経痛といったように、痛みが生じている末梢神経の名称を病名に使用します。先ほど解説した三叉神経痛も、原因不明の場合は特発性神経痛に分類される場合があります。

神経痛は、病気以外にもストレスや冷えとの関係も示唆されています。

神経痛の症状

神経痛の痛みについて教えてください。

神経痛の痛みは、発症している神経痛の種類によって特徴が異なります。

坐骨神経痛

坐骨神経痛の症状について教えてください。

坐骨神経は、おしりや太もものあたりから足まで延びている神経です。そのため、坐骨神経痛では腰からおしりにかけてや、太ももの裏側、脛、ふくらはぎに痛みや痺れ、麻痺が生じます。
下半身を中心に症状が出るため、歩行が困難になってしまうこともあります。

痛みは、電気が走ったような鋭い痛みと表現されることが多く、じっとしているときよりも体を動かしたときに痛みやすいのが特徴です。

肋間神経痛

肋間神経痛の症状について教えてください。

肋間神経痛では、背中から胸にかけての左右どちらか一方に症状がみられる場合がほとんどです。

突然鋭い痛みが走り、特に大きな声を出したり、深呼吸をしたりしたときなど、肋骨が大きく動いた際に痛みが悪化するのが特徴です。

三叉神経痛

三叉神経痛の症状について教えてください。

三叉神経痛では、目の周囲や額、頬など顔面の左右どちら一方に症状が出る場合がほとんどです。

刺すようなチクチクとした痛みと表現されることが多く、突然の激痛が生じることもあります。食事や歯磨き、冷たい風が当たったときに痛みが強く出やすいのが特徴です。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛の症状について教えてください。

帯状疱疹後神経痛では、持続する焼けるような痛みや、繰り返す刺すような痛み、感覚の低下といったさまざまな痛みや症状が混在してみられます。
また、時間の経過と共に痛みが変化していくのも特徴です。

神経痛になりやすい人

神経痛になりやすい人はいますか?

神経痛は、中年以降の年齢で発症が多いとされています。
特に、帯状疱疹が帯状疱疹後神経痛に移行してしまうのは約10人に1人ですが、そのほとんどが高齢者とされています。

神経痛の発症に性別差はありますか?

性別差に関してはあまりデータが無いのですが、三叉神経痛に関しては女性で多くみられ、男性と比べると約2倍多く発症するとされています。

神経痛の受診科目

神経痛を疑ったら、何科を受診したらよいのでしょうか?

神経痛の背景には、様々な病気が関連している可能性があります。
そのため、神経痛を診てくれる科としては、整形外科、神経内科、脳神経外科、ペインクリニック、内科など様々な診療科目が挙げられます。

どこを受診するか迷ったときには、CTやMRIの画像撮影が可能な病院を受診するのがおすすめです。

神経痛の検査

神経痛で受診した場合、どのような検査が行われるのでしょうか?

診察では、痛みのある場所を観察することで、神経学的に原因を探っていきます。ほかにも反射検査や筋力検査、知覚検査などを行い、感覚が低下している場所がないかも診察します。

必要に応じて、血液検査や画像検査が行われる場合もあります。

神経痛の治療方法

神経痛では、どのような治療が行われるのでしょうか?

診察や画像診断などで原因が判明した症候性神経痛については、原因となっている病気の治療を行いながら痛みを改善していきます。原因不明の特発性神経痛の場合は、鎮痛薬などで痛みそのものを取り除く治療が中心となります。

発症から6~8週間は薬物療法、神経ブロック療法、理学療法などの保存的治療を並行して行うのが一般的です。これらの保存的治療で症状が改善されない場合は、手術などの外科的治療も検討されます。

神経痛は、生活習慣の乱れなどが原因で再発を繰り返しやすいのが特徴です。
いったん痛みが改善した後も正しい姿勢を意識し、適度な運動を行うなど、再発防止を心がける必要があります。

編集部まとめ

神経痛は、様々な神経に関連した痛みの総称です。
原因がはっきりしているものは症候性神経痛、原因不明なものは特発性神経痛に分類されます。
症候性神経痛としては、坐骨神経痛、肋間神経痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛の4つが代表的です。

診察可能な受診科目としては、整形外科、内科、脳神経外科、神経内科、ペインクリニックなどが挙げられます。診察では、患部の観察や画像検査、血液検査などが行われる場合もあります。

症候性神経痛については、原因となっている病気の根本的な治療を行います。
特発性神経痛は痛みのコントロールが治療の中心となります。神経痛は再発しやすいため、症状の改善後も再発防止に努める必要があります。

気になる痛みや症状がある場合は、早めの受診を検討しましょう。

参考文献

第一三共ヘルスケア「神経痛の対策」

第一三共ヘルスケア「神経痛の原因」

サワイ健康推進課「姿勢でラクになる 神経痛」

日本臓器製薬「帯状疱疹後神経痛とは?」

笹塚21ペインクリニック「三叉神経痛(顔面神経痛)について」

広報誌 健康倶楽部/2010年4月号「神経痛(三叉神経痛・肋間神経痛・坐骨神経痛)」

つかはらペインクリニック「坐骨神経痛に関するQ&A」

痛みの情報サイト

健康長寿ネット「帯状疱疹の症状」