岸田文雄首相は7月11日、政府分科会の尾身茂会長ら専門家と首相官邸で協議しました。尾身会長は、会談後の記者団からの質問に対して新型コロナの「第7波に入っている」との認識を示しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。

監修医師:
甲斐沼 孟(医師)

2007年大阪市立大学医学部医学科卒業、2009年大阪急性期総合医療センター外科後期臨床研修医、2010年大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、2012年国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、2013年大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、2014年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医員、2021年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長。
著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。
日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。

岸田首相と尾身会長らの会談内容は?

岸田首相と政府分科会の尾身会長らがおこなった会談で話された内容について教えてください。

甲斐沼先生

今回の会談は、新型コロナウイルス感染の再拡大を受けて、7月11日に実施されました。政府分科会の尾身茂会長や厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長などが首相官邸を訪れて、岸田首相と約30分協議をおこないました。会談では、専門家側から現在の新型コロナウイルス感染者急増の背景に、「感染力がより強いとされるBA.5の広がり」や「ワクチン接種から時間が経って免疫の効果が下がってきていることがあること」などを説明しました。また、医療のひっ迫を防ぐために、政府や自治体が検査やワクチン接種などの医療体制を整えて、国として基本的な感染対策の徹底を呼びかけるよう求めたとのことです。さらに、まん延防止等重点措置の適用などの行動制限については、岸田首相に対して「今の段階では必要ない」との考えを伝えました。

第7波についての認識は?

第7波の到来について、どのような認識か教えてください。

甲斐沼先生

尾身会長は、岸田首相との会談後に記者団に対して「新たな感染の波が来たということは間違いない」と述べ、「感染拡大の第7波に入った」という認識を示しています。実際に、厚生労働省の専門家会合で示された資料によると、7月12日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて2.14倍と、全ての都道府県で増加し、3倍を超える地域も出てきています。感染拡大の要因としては、オミクロン株の系統の1つであるBA.5が考えられています。また、ECDC(欧州疾病予防管理センター)の報告では、「南アフリカやポルトガルの感染状況からの推計で、BA.2系統よりも12~13%感染者が増えやすかった」というデータもあります。

第7波を乗り切るために留意すべきことは?

新型コロナウイルスの第7波を乗り切るために留意すべきことを教えてください。

甲斐沼先生

いよいよ現実的に迫ってきている新型コロナウイルス感染症における「第7波」に対する対策手段として、政府の分科会は新型コロナウイルス感染症の検査の更なる活用拡充や効率的な換気処置などを求め緊急的に提言しました。我が国の感染症専門家がまとめた資料によると、オミクロン株のBA.5の拡大などで感染が急拡大しているなかで、今後、高齢者や重大な基礎疾患を有する方々を中心に入院患者や死亡者数が増加する懸念がされており、救急診療はもちろんのこと、一般医療機関や介護施設などへの負担が非常に大きくなる恐れがあると指摘しています。

そのうえで、新型コロナウイルスの第7波を乗り切るための具体的な対策としては、新型コロナウイルスに関する抗原検査やPCR検査をこれまで以上に活用して、国の承認を受けた抗原検査キットを薬局で購入できる、あるいは帰省時や旅行する際に高齢者や基礎疾患をお持ちの方々に接する場合には事前に検査を容易に受けられる体制を確保することが求められます。また、有効的な換気処置をおこなうことで飛沫感染、あるいは密閉された室内を漂うエアロゾル感染を防ぐことが重要であり、とくに屋内では空気の入り口と出口を確保して空気の効率的な循環状態を妨げないように努める必要があります。

3回目のワクチン接種、および高齢者などへの4回目の接種を加速することを含めて、国民一人ひとりが基本的な感染対策を徹底して、万が一有意な症状を認める際にはできる限り不要な外出を控えることが重要です。

まとめ

7月11日、岸田首相との会談に出席した政府分科会の尾身茂会長が、記者団からの質問に対して「第7波に入っている」との認識を示したことが今回のニュースでわかりました。まん延防止等重点措置の適用などの行動制限については、今の段階では必要ないということですが、今後も注意深く推移を見守る必要がありそうです。

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