「Radeon RX 6950 XT」を試す - Radeon最速、GeForce RTX 3090 Tiとは結構違う?
●評価機材の紹介 / 3DMark
5月にRadeon RX 6650 XT/6750 XTの試用レビューをお届けしたが、同時に発表されたRadeon RX 6950 XTの評価機がやっと手元に回ってきた。既に先月18日には秋葉原にも製品が出回っており、ちょっと遅きに失した感は否めないのだが、改めて評価結果をお届けしたいと思う。
○評価機材
Radeon RX 6950 XTそのものは以前ご紹介した通り、Radeon RX 6800/6800 XT/6900 XTと同じくNavi 21コアを採用、コア構成はRadeon RX 6900 XTと同じ80CUで、動作周波数がGame 2100MHz/Boost 2310MHzに引き上げられ(Radeon RX 6900 XTはそれぞれ1825MHz/2250MHz)、メモリが18Gbps GDDR6に交換された(Radeon RX 6900 XTは16Gbps GDDR6)製品である。これによりBoard Powerは300Wから335Wにやや引きあがっている。
Photo01: 威圧的な3連ファンが目立つ。寸法は320mm×120mm×65mm(実測値)。
Photo02: 背面はバックプレートにほぼ覆われている。重量はこれも実測値で1604.5g。左下に動作モード切り替えスイッチがあるのが判る。今回はOCモードで利用。
Photo03: ブラケット側はこの通り。きっちり3slot厚が必要だし、上方向への突き出しも激しい。出力はHDMI×1、DisplayPort×3。
Photo04: 反対側は、エンプラのフィンらしきものが搭載されているが、どこまで効果があるのかは不明。
Photo05: 上面から。補助電源は8pin×3。
Photo06: 底面から。説明によればヒートシンクは320mmの長さだそうで、実際ほぼカード全体がヒートシンクで覆われている(しかも厚みが結構ある)事が判る。
Photo07: このアングルから見ると猛烈に質感というか厚みというかのインパクトが大きい。
Photo08: 一応この白いプラスチックは導風板になっているのが判る。
さて今回試用したのはPowerColorのRed Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6である。動作周波数はわずかに挙げられているのが判る(Photo09,10)。ちなみに5月18日における秋葉原での価格は207,000円前後とされていたが、6月20日におけるAmazonでの販売価格は182,160円と結構値段がこなれてきており、多少入手しやすくなっているのはありがたい話だ。
Photo09: メモリは18Gbpsのまま。コアの動作周波数がGame/Boostで2100MHz/2310MHz→2116MHz/2324MHzになっている。
Photo10: Power Limitは最大20%まで上げることが可能で、最大だとBoard Powerは402Wになる計算。
さて今回はAMDでもハイエンド機種に当たる訳で、比較対象も当然GeForce RTX 3090グレードということになる。ちょうど4月にこんな記事をやらせていただいているので、今回はこのテストに合わせる形で、GeForce RTX 3090/3090 Tiと性能比較を行うことにした。
テスト環境は表1の通り。GeForce RTX 3090/3090 Tiの方は、以前のテストのデータそのままである。一方Radeon RX 6950 XTの方は、厳密に言えばOSのBuildが若干上がっているので完全に同一環境とは言えないのだが、大きな差はないと考えて今回はこのまま実施している。なので、個々のベンチマーク設定なども完全に合わせてある。そんな訳で個々の設定方法は前回の記事をご覧いただきたい。
グラフ中の表記は
3090 :ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 Trinity OC
3090Ti:ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 Ti AMP Extreme Holo
6950 XT:PowerColor Red Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6
となっている。また本文中の解像度表記は、いつものように
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただいた。
またこれはお詫びなのだが、実は今回テスト結果をまとめている最中、前回のテストのうちWatch Dogs:Legionに関してのみだが、うっかりDLSSがEnableになっていることが判明した。これはGeForce RTX 3090/3090 Ti共になので、その意味ではこの2つの比較という意味では問題ないのだが、Radeon RX 6950 XTではDLSSが使えないし、Watch Dogs:LegionがFSRに対応している訳でもないので、DLSSを無効にしないと比較としておかしい事になる。それもあって、今回比較からWatch Dogs:Legionは外させていただいた。
○◆3DMark v2.22.7336(グラフ1〜3)
3DMark v2.22.7336
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ1
グラフ2
グラフ3
まずはこちらから。Overall(グラフ1)を見ると、概ねGeForce RTX 3090 Tiにはちょっと及ばないが、GeForce RTX 3090は超えている程度というスコアに落ち着いており、まぁ構成を考えれば妥当かな? とは思うのだが、やっぱりというかなんというか、Port RoyalではGeForce RTX 3090にも及ばない程度でしかない。この傾向は、以前Radeon RX 6900 XTで試した時と同じであり、まぁ動作周波数とメモリクロックが上がった程度では解決しない話であるが、要するにRay Tracing性能に関してNavi 2xベースではまだAmpereの敵ではないということであり、これに関してはNavi 3xの登場で改善する事を期待したいところだ。
今回はCPUそのものは共通という事もあり、Overallの結果とGraphics Test(グラフ2)の結果もほぼ同一傾向。要するに「Ray Tracingを使わなければ」Radeon RX 6950 XTはGeForce RTX 3090/3090 Tiと良い戦いが出来るという傾向が再確認されたことになる。
Combined TestではなぜかFireStrikeだけRadeon RX 6950 XTのスコアが低めだが、Extreme/Ultraでは普通に妥当なスコアとなっており、まぁGeForce RTX 3090 Tiには及ばないものの、概ね良い勝負であると言える。
●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2021 / Far Cry 6
○◆Borderlands 3(グラフ4〜10)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
グラフ4
グラフ5
グラフ6
グラフ7
グラフ8
グラフ9
グラフ10
Ray Tracingを利用しないベンチマークその1であるBorderlands 3。結果(グラフ4〜6_は御覧の通りで、やっぱり3K以上の解像度が上がるとInfinity Cacheが足りなくなるのか多少性能が下がってGeForce RTX 3090程度になるが、2.5KまではGeForce RTX 3090 Tiと互角である。この傾向はフレームレート変動(グラフ7〜10)からも明らかで、2.5KまではGeForce RTX 3090 Tiを超えるシーンもある(下回るシーンもあるので無条件に上回る、とは言えない)ものの3K以上ではほぼGeForce RTX 3090程度に留まっている。とは言え、4Kで60fpsを切るシーンが一度もないあたりは、ハイエンドに相応しい性能とは言える。
○◆F1 2021(グラフ11〜17)
F1 2021
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-2021
グラフ11
グラフ12
グラフ13
グラフ14
グラフ15
グラフ16
グラフ17
では、Ray Tracingを強めに掛けるとどうなるか? というのがこのF1 2021。デフォルトでは比較的軽めのゲームであるが、それはデフォルトだとRay Tracing QualityがMediumに設定されており、これだとミドルクラスのGPUでも結構な性能を出せる。実際、Radeon RX 6950 XTでもDetail PresetはUltra High、Ray Tracing QualityがMediumだと平均210fps超えの性能になる。ところがRay Tracing QualityをUltra Highにするとこの通り(グラフ11〜13)。60fpsを維持できるのは3Kが限界で、4Kでは50fpsすら割っている体たらくである。理由というか、ボトルネックになっているのはRay Tracing Unitであることは明白である。そもそも3DMarkのGraphics Test(グラフ2)におけるPort Royalのスコアでも、Radeon RX 6950 XTのスコアはGeForce RTX 3090の2割落ち、GeForce RTX 3090 Tiの3割落ちであり、グラフ11の結果は丁度そんな感じになっているあたり、これが正しい性能である事は間違いない。
フレームレート変動(グラフ14〜17)の方も見事なほどに相似形かつ明確に分離したグラフが並んでおり、これがRadeon RX 6950XのRay Tracing Unitの実力である。
○◆Far Cry 6(グラフ18〜24)
Far Cry 6
Ubisofy Entertainment
https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6
グラフ18
グラフ19
グラフ20
グラフ21
グラフ22
グラフ23
グラフ24
同じようにDXRの設定がUltra Highであっても殆ど影響しないのがFar Cry 6。結果(グラフ18〜20)で判るようにほぼ全解像度でGeForce RTX 3090 Tiと互角以上のスコアを残している。要するにゲームによって、どの程度Ray Tracingを適用するかはまちまちになっており、Far Cry 6ではフル設定にしてもRadeon RX 6950 XTのRay Tracing Unitで賄える(というか、そこがボトルネックにならない)程度なので、すると通常の描画性能の方がむしろボトルネックになりがちで、ここではRadeon RX 6950 XTがGeForce RTX 3090 Tiと互角だから、という事である。実際平均フレームレートで明確に差があるのは2K/2.5Kだが、フレームレート変動を見ても2K/2.5K(グラフ21〜22)で明確に差があるのは開始から10秒目くらいまでの間で、その先は確かに微妙にRadeon RX 6950 XTの方がGeForce RTX 3090 Tiよりは上ながら、全体としては大差ないレベル。3K/4K(グラフ23・24)では先頭10秒の差もかなり縮まっており、概ね同等というレベルに落ち着いていると考えられる。
●ゲームその2:Metro Exodus / Shadow of the Tomb Raider / The Division 2
○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ25〜31)
Metro Exodus PC:Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
グラフ25
グラフ26
グラフ27
グラフ28
グラフ29
グラフ30
グラフ31
Far Cry 6とは逆に、F1 2021の傾向をさらに拡大するような結果になったのがMetro Exodus PC:Enhanced Edition。結果(グラフ25〜27)を見ると、もう3Kの時点でRay Tracing Unitが明白に飽和してしまっているのが判る。フレームレート変動(グラフ28〜31)を見ても、2Kならまだシーンに応じて変動しているのが、2.5Kの時点でRay Tracing Unitが飽和寸前、3K/4Kでは完全に飽和しましたという感じで、これはプレイするには結構厳しそうである。
まぁそれでも2Kでは十分プレイ可能な範囲ではあるのだが、このクラスのビデオカードで2Kでのプレイ推奨というのもどうかな? という感じである。
○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ32〜38)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
グラフ32
グラフ33
グラフ34
グラフ35
グラフ36
グラフ37
グラフ38
同様に、Ray Tracing ShadowsをUltra設定すると猛烈に重くなるのがこのShadow of the Tomb Raider(グラフ32〜34)。実際平均フレームレートで比較するとRadeon RX 6950 XTはGeForce RTX 3090比で10〜15%、GeForce RTX 3090 Ti比で18〜24%のビハインドがある。多分だがグラフ34、つまり最小フレームレートの乖離が、実際のRay Tracing Unitの限界を示している様に思える。
結果としてフレームレート変動(グラフ35〜38)も明確にRadeon RX 6950 XTだけが異なる傾向を示しているのも宜なるかな、と言わざるを得ない。もっともこれのボトルネックはRay Tracing Shadowsなので、これの設定を軽くするとか無効化すれば、4Kでも十分プレイ可能な性能が提供されることもまた間違いないのだが。ちなみに他の設定を変更せずに、Ray Tracing ShadowsだけをOffにすると平均フレームレートは101fpsとなる。それだけ、Ray Tracing Unitの性能不足が足を引っ張っているわけだ。
○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ39〜45)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
グラフ39
グラフ40
グラフ41
グラフ42
グラフ43
グラフ44
グラフ45
Ray Tracingを利用しないゲームの2つ目がこちらであるが、結果(グラフ39〜41)を見ると意外にも性能がパッとしない。GeForce RTX 3090にやや届かない程度で推移しており、これはフレームレート変動(グラフ42〜45)でも明らかである。もっとも先のFar Cry 6がAMDのロゴを示していたように、The Division 2はNVIDIAのロゴが出てくる辺りは、最適化というかゲームの作り方がNVIDIAに適した構成になっており、Radeon RX 6950 XTにはやや厳しい、という部分はあるのかもしれない。
●PCMark 10 / 消費電力 / 評価まとめと考察
○◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ46〜51)
PCMark 10 v2.1.2535
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ46
グラフ47
グラフ48
グラフ49
グラフ50
グラフ51
一応確認のためにこちらもやってみた。Overall(グラフ46)で見ると、概ね大きな差は無し、というあたり。Test Group(グラフ47)では、Digital Contents Creationで妙に性能差があるが、それ以外は大きな差は見られない。ただEssentials(グラフ48)ではVideo Conferencingで妙にRadeon RX 6950 XTの成績が高く、その一方でApp Startupで時間が掛かるのは、OpenCL Deviceのセットアップに時間が掛かるけど、一度セットアップすると処理性能はやや高いというあたりか。ただ逆にProductivity(グラフ49)でSpreadsheetsの性能が今一つ、というのはLibreOfficeのSpreadsheetsの中から呼び出すOpenCLの処理性能はそれほどでもなく、ところがDigital Contents Creation(グラフ50)のPhotoEditingでは非常に高速、という感じでムラがある事が判る。これをもってどっちが高速か? というと微妙なところ。
Applications(グラフ51)を見ると、全体的にRadeon RX 6950 XTが僅かに低めに推移しているが、これに関してはGPUの問題なのか、OSのBuild Versionの違いなのか、ちょっと理由を明確にしにくい。ただ大きく問題になるほどの性能差か? といわれると、これも微妙なところである。
○◆消費電力測定(グラフ52〜58)
今回も3DMark FireStrike Demo(グラフ52)/Borderlands 3 2K(グラフ53)/F1 2021 2K(グラフ54)/Metro Exodus PC Enhanced Edition 2K(グラフ55)/Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ56)と5種類のゲームの消費電力変動を測定、グラフ57にそれぞれの平均値、グラフ58に待機時消費電力との差を示した。
グラフ52
グラフ53
グラフ54
グラフ55
グラフ56
グラフ57
グラフ58
一見して判るのがRadeon RX 6950 XTの低い消費電力である。実際カードの大きさだけを見ればGeForce RTX 3090 Tiと甲乙つけがたい代物だけにちょっと身構えてしまうが、実際には消費電力はGeForce RTX 3090よりも低めに推移しており、まぁだからこそ動作モードをOC設定にしても騒音はごく僅かで済んでおり、全く気にならないレベルに抑えられているのだともいえる。
平均(グラフ50)を見ると、一番消費電力の大きなShadow of the Tomb Raiderですら500Wそこそこであり、600W台に平気で到達するGeForce RTX 3090 Tiとは比べ物にならないし、消費電力差(グラフ58)ではGeForce RTX 3090と比べて30〜40W、GeForce RTX 3090 Tiと比べると70〜100W以上低い事を考えると、この消費電力で良く健闘したな、という感じも受ける。
○考察 - Ray Tracingの有無で分かれる評価
ということで何時もにも増して短いテストであるが、概ね素性は判ったように思われる。まず、これはRadeon RX 6950 XTの、というよりはNavi 2x系の弱点であるが、とにかくRay Tracingに関してはまだAmpere系には及ばない。なので、高解像度でかつRay Tracingをガンガン使って遊びたいぜ、という方には残念ながらお勧めはできない。GeForce RTX 3090 Tiとは言わないまでもGeForce RTX 3090を選んだ方が幸せになれるだろう。最近こちらも値崩れが激しく、6月20日におけるAmazonでの最安値製品は207,064円で、Radeon RX 6950 Tiとそれほど差が無いところになっている(GeForce RTX 3090 Tiは25万オーバーだが)。
逆に言えば、Ray Tracingに拘らないユーザーにとっては、Radeon RX 6950 XTは狙い目である。GeForce RTX 3090 Tiに近い性能を、100W近く低い消費電力で実現でき、しかも購入価格は安い。Ray Tracing無しという前提であれば、性能と価格、消費電力のバランスが取れた非常に良い製品と評価して良いだろう。
Ray TracingについてはもうNavi 3xに期待したいところだ。こちらも最初の製品は年内に投入されるそうで、勿論これを待つという選択肢もあるだろうが、ここでどこまでRay Tracingの性能が向上するかは未知数である。そこまで待てない、というユーザーにはRadeon RX 6950 XTも悪くないと思う。
5月にRadeon RX 6650 XT/6750 XTの試用レビューをお届けしたが、同時に発表されたRadeon RX 6950 XTの評価機がやっと手元に回ってきた。既に先月18日には秋葉原にも製品が出回っており、ちょっと遅きに失した感は否めないのだが、改めて評価結果をお届けしたいと思う。
○評価機材
Radeon RX 6950 XTそのものは以前ご紹介した通り、Radeon RX 6800/6800 XT/6900 XTと同じくNavi 21コアを採用、コア構成はRadeon RX 6900 XTと同じ80CUで、動作周波数がGame 2100MHz/Boost 2310MHzに引き上げられ(Radeon RX 6900 XTはそれぞれ1825MHz/2250MHz)、メモリが18Gbps GDDR6に交換された(Radeon RX 6900 XTは16Gbps GDDR6)製品である。これによりBoard Powerは300Wから335Wにやや引きあがっている。
Photo02: 背面はバックプレートにほぼ覆われている。重量はこれも実測値で1604.5g。左下に動作モード切り替えスイッチがあるのが判る。今回はOCモードで利用。
Photo03: ブラケット側はこの通り。きっちり3slot厚が必要だし、上方向への突き出しも激しい。出力はHDMI×1、DisplayPort×3。
Photo04: 反対側は、エンプラのフィンらしきものが搭載されているが、どこまで効果があるのかは不明。
Photo05: 上面から。補助電源は8pin×3。
Photo06: 底面から。説明によればヒートシンクは320mmの長さだそうで、実際ほぼカード全体がヒートシンクで覆われている(しかも厚みが結構ある)事が判る。
Photo07: このアングルから見ると猛烈に質感というか厚みというかのインパクトが大きい。
Photo08: 一応この白いプラスチックは導風板になっているのが判る。
さて今回試用したのはPowerColorのRed Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6である。動作周波数はわずかに挙げられているのが判る(Photo09,10)。ちなみに5月18日における秋葉原での価格は207,000円前後とされていたが、6月20日におけるAmazonでの販売価格は182,160円と結構値段がこなれてきており、多少入手しやすくなっているのはありがたい話だ。
Photo09: メモリは18Gbpsのまま。コアの動作周波数がGame/Boostで2100MHz/2310MHz→2116MHz/2324MHzになっている。
Photo10: Power Limitは最大20%まで上げることが可能で、最大だとBoard Powerは402Wになる計算。
さて今回はAMDでもハイエンド機種に当たる訳で、比較対象も当然GeForce RTX 3090グレードということになる。ちょうど4月にこんな記事をやらせていただいているので、今回はこのテストに合わせる形で、GeForce RTX 3090/3090 Tiと性能比較を行うことにした。
テスト環境は表1の通り。GeForce RTX 3090/3090 Tiの方は、以前のテストのデータそのままである。一方Radeon RX 6950 XTの方は、厳密に言えばOSのBuildが若干上がっているので完全に同一環境とは言えないのだが、大きな差はないと考えて今回はこのまま実施している。なので、個々のベンチマーク設定なども完全に合わせてある。そんな訳で個々の設定方法は前回の記事をご覧いただきたい。
グラフ中の表記は
3090 :ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 Trinity OC
3090Ti:ZOTAC GAMING GeForce RTX 3090 Ti AMP Extreme Holo
6950 XT:PowerColor Red Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6
となっている。また本文中の解像度表記は、いつものように
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただいた。
またこれはお詫びなのだが、実は今回テスト結果をまとめている最中、前回のテストのうちWatch Dogs:Legionに関してのみだが、うっかりDLSSがEnableになっていることが判明した。これはGeForce RTX 3090/3090 Ti共になので、その意味ではこの2つの比較という意味では問題ないのだが、Radeon RX 6950 XTではDLSSが使えないし、Watch Dogs:LegionがFSRに対応している訳でもないので、DLSSを無効にしないと比較としておかしい事になる。それもあって、今回比較からWatch Dogs:Legionは外させていただいた。
○◆3DMark v2.22.7336(グラフ1〜3)
3DMark v2.22.7336
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
グラフ1
グラフ2
グラフ3
まずはこちらから。Overall(グラフ1)を見ると、概ねGeForce RTX 3090 Tiにはちょっと及ばないが、GeForce RTX 3090は超えている程度というスコアに落ち着いており、まぁ構成を考えれば妥当かな? とは思うのだが、やっぱりというかなんというか、Port RoyalではGeForce RTX 3090にも及ばない程度でしかない。この傾向は、以前Radeon RX 6900 XTで試した時と同じであり、まぁ動作周波数とメモリクロックが上がった程度では解決しない話であるが、要するにRay Tracing性能に関してNavi 2xベースではまだAmpereの敵ではないということであり、これに関してはNavi 3xの登場で改善する事を期待したいところだ。
今回はCPUそのものは共通という事もあり、Overallの結果とGraphics Test(グラフ2)の結果もほぼ同一傾向。要するに「Ray Tracingを使わなければ」Radeon RX 6950 XTはGeForce RTX 3090/3090 Tiと良い戦いが出来るという傾向が再確認されたことになる。
Combined TestではなぜかFireStrikeだけRadeon RX 6950 XTのスコアが低めだが、Extreme/Ultraでは普通に妥当なスコアとなっており、まぁGeForce RTX 3090 Tiには及ばないものの、概ね良い勝負であると言える。
●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2021 / Far Cry 6
○◆Borderlands 3(グラフ4〜10)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
グラフ4
グラフ5
グラフ6
グラフ7
グラフ8
グラフ9
グラフ10
Ray Tracingを利用しないベンチマークその1であるBorderlands 3。結果(グラフ4〜6_は御覧の通りで、やっぱり3K以上の解像度が上がるとInfinity Cacheが足りなくなるのか多少性能が下がってGeForce RTX 3090程度になるが、2.5KまではGeForce RTX 3090 Tiと互角である。この傾向はフレームレート変動(グラフ7〜10)からも明らかで、2.5KまではGeForce RTX 3090 Tiを超えるシーンもある(下回るシーンもあるので無条件に上回る、とは言えない)ものの3K以上ではほぼGeForce RTX 3090程度に留まっている。とは言え、4Kで60fpsを切るシーンが一度もないあたりは、ハイエンドに相応しい性能とは言える。
○◆F1 2021(グラフ11〜17)
F1 2021
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-2021
グラフ11
グラフ12
グラフ13
グラフ14
グラフ15
グラフ16
グラフ17
では、Ray Tracingを強めに掛けるとどうなるか? というのがこのF1 2021。デフォルトでは比較的軽めのゲームであるが、それはデフォルトだとRay Tracing QualityがMediumに設定されており、これだとミドルクラスのGPUでも結構な性能を出せる。実際、Radeon RX 6950 XTでもDetail PresetはUltra High、Ray Tracing QualityがMediumだと平均210fps超えの性能になる。ところがRay Tracing QualityをUltra Highにするとこの通り(グラフ11〜13)。60fpsを維持できるのは3Kが限界で、4Kでは50fpsすら割っている体たらくである。理由というか、ボトルネックになっているのはRay Tracing Unitであることは明白である。そもそも3DMarkのGraphics Test(グラフ2)におけるPort Royalのスコアでも、Radeon RX 6950 XTのスコアはGeForce RTX 3090の2割落ち、GeForce RTX 3090 Tiの3割落ちであり、グラフ11の結果は丁度そんな感じになっているあたり、これが正しい性能である事は間違いない。
フレームレート変動(グラフ14〜17)の方も見事なほどに相似形かつ明確に分離したグラフが並んでおり、これがRadeon RX 6950XのRay Tracing Unitの実力である。
○◆Far Cry 6(グラフ18〜24)
Far Cry 6
Ubisofy Entertainment
https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6
グラフ18
グラフ19
グラフ20
グラフ21
グラフ22
グラフ23
グラフ24
同じようにDXRの設定がUltra Highであっても殆ど影響しないのがFar Cry 6。結果(グラフ18〜20)で判るようにほぼ全解像度でGeForce RTX 3090 Tiと互角以上のスコアを残している。要するにゲームによって、どの程度Ray Tracingを適用するかはまちまちになっており、Far Cry 6ではフル設定にしてもRadeon RX 6950 XTのRay Tracing Unitで賄える(というか、そこがボトルネックにならない)程度なので、すると通常の描画性能の方がむしろボトルネックになりがちで、ここではRadeon RX 6950 XTがGeForce RTX 3090 Tiと互角だから、という事である。実際平均フレームレートで明確に差があるのは2K/2.5Kだが、フレームレート変動を見ても2K/2.5K(グラフ21〜22)で明確に差があるのは開始から10秒目くらいまでの間で、その先は確かに微妙にRadeon RX 6950 XTの方がGeForce RTX 3090 Tiよりは上ながら、全体としては大差ないレベル。3K/4K(グラフ23・24)では先頭10秒の差もかなり縮まっており、概ね同等というレベルに落ち着いていると考えられる。
●ゲームその2:Metro Exodus / Shadow of the Tomb Raider / The Division 2
○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ25〜31)
Metro Exodus PC:Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
グラフ25
グラフ26
グラフ27
グラフ28
グラフ29
グラフ30
グラフ31
Far Cry 6とは逆に、F1 2021の傾向をさらに拡大するような結果になったのがMetro Exodus PC:Enhanced Edition。結果(グラフ25〜27)を見ると、もう3Kの時点でRay Tracing Unitが明白に飽和してしまっているのが判る。フレームレート変動(グラフ28〜31)を見ても、2Kならまだシーンに応じて変動しているのが、2.5Kの時点でRay Tracing Unitが飽和寸前、3K/4Kでは完全に飽和しましたという感じで、これはプレイするには結構厳しそうである。
まぁそれでも2Kでは十分プレイ可能な範囲ではあるのだが、このクラスのビデオカードで2Kでのプレイ推奨というのもどうかな? という感じである。
○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ32〜38)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
グラフ32
グラフ33
グラフ34
グラフ35
グラフ36
グラフ37
グラフ38
同様に、Ray Tracing ShadowsをUltra設定すると猛烈に重くなるのがこのShadow of the Tomb Raider(グラフ32〜34)。実際平均フレームレートで比較するとRadeon RX 6950 XTはGeForce RTX 3090比で10〜15%、GeForce RTX 3090 Ti比で18〜24%のビハインドがある。多分だがグラフ34、つまり最小フレームレートの乖離が、実際のRay Tracing Unitの限界を示している様に思える。
結果としてフレームレート変動(グラフ35〜38)も明確にRadeon RX 6950 XTだけが異なる傾向を示しているのも宜なるかな、と言わざるを得ない。もっともこれのボトルネックはRay Tracing Shadowsなので、これの設定を軽くするとか無効化すれば、4Kでも十分プレイ可能な性能が提供されることもまた間違いないのだが。ちなみに他の設定を変更せずに、Ray Tracing ShadowsだけをOffにすると平均フレームレートは101fpsとなる。それだけ、Ray Tracing Unitの性能不足が足を引っ張っているわけだ。
○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ39〜45)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
グラフ39
グラフ40
グラフ41
グラフ42
グラフ43
グラフ44
グラフ45
Ray Tracingを利用しないゲームの2つ目がこちらであるが、結果(グラフ39〜41)を見ると意外にも性能がパッとしない。GeForce RTX 3090にやや届かない程度で推移しており、これはフレームレート変動(グラフ42〜45)でも明らかである。もっとも先のFar Cry 6がAMDのロゴを示していたように、The Division 2はNVIDIAのロゴが出てくる辺りは、最適化というかゲームの作り方がNVIDIAに適した構成になっており、Radeon RX 6950 XTにはやや厳しい、という部分はあるのかもしれない。
●PCMark 10 / 消費電力 / 評価まとめと考察
○◆PCMark 10 v2.1.2535(グラフ46〜51)
PCMark 10 v2.1.2535
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
グラフ46
グラフ47
グラフ48
グラフ49
グラフ50
グラフ51
一応確認のためにこちらもやってみた。Overall(グラフ46)で見ると、概ね大きな差は無し、というあたり。Test Group(グラフ47)では、Digital Contents Creationで妙に性能差があるが、それ以外は大きな差は見られない。ただEssentials(グラフ48)ではVideo Conferencingで妙にRadeon RX 6950 XTの成績が高く、その一方でApp Startupで時間が掛かるのは、OpenCL Deviceのセットアップに時間が掛かるけど、一度セットアップすると処理性能はやや高いというあたりか。ただ逆にProductivity(グラフ49)でSpreadsheetsの性能が今一つ、というのはLibreOfficeのSpreadsheetsの中から呼び出すOpenCLの処理性能はそれほどでもなく、ところがDigital Contents Creation(グラフ50)のPhotoEditingでは非常に高速、という感じでムラがある事が判る。これをもってどっちが高速か? というと微妙なところ。
Applications(グラフ51)を見ると、全体的にRadeon RX 6950 XTが僅かに低めに推移しているが、これに関してはGPUの問題なのか、OSのBuild Versionの違いなのか、ちょっと理由を明確にしにくい。ただ大きく問題になるほどの性能差か? といわれると、これも微妙なところである。
○◆消費電力測定(グラフ52〜58)
今回も3DMark FireStrike Demo(グラフ52)/Borderlands 3 2K(グラフ53)/F1 2021 2K(グラフ54)/Metro Exodus PC Enhanced Edition 2K(グラフ55)/Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ56)と5種類のゲームの消費電力変動を測定、グラフ57にそれぞれの平均値、グラフ58に待機時消費電力との差を示した。
グラフ52
グラフ53
グラフ54
グラフ55
グラフ56
グラフ57
グラフ58
一見して判るのがRadeon RX 6950 XTの低い消費電力である。実際カードの大きさだけを見ればGeForce RTX 3090 Tiと甲乙つけがたい代物だけにちょっと身構えてしまうが、実際には消費電力はGeForce RTX 3090よりも低めに推移しており、まぁだからこそ動作モードをOC設定にしても騒音はごく僅かで済んでおり、全く気にならないレベルに抑えられているのだともいえる。
平均(グラフ50)を見ると、一番消費電力の大きなShadow of the Tomb Raiderですら500Wそこそこであり、600W台に平気で到達するGeForce RTX 3090 Tiとは比べ物にならないし、消費電力差(グラフ58)ではGeForce RTX 3090と比べて30〜40W、GeForce RTX 3090 Tiと比べると70〜100W以上低い事を考えると、この消費電力で良く健闘したな、という感じも受ける。
○考察 - Ray Tracingの有無で分かれる評価
ということで何時もにも増して短いテストであるが、概ね素性は判ったように思われる。まず、これはRadeon RX 6950 XTの、というよりはNavi 2x系の弱点であるが、とにかくRay Tracingに関してはまだAmpere系には及ばない。なので、高解像度でかつRay Tracingをガンガン使って遊びたいぜ、という方には残念ながらお勧めはできない。GeForce RTX 3090 Tiとは言わないまでもGeForce RTX 3090を選んだ方が幸せになれるだろう。最近こちらも値崩れが激しく、6月20日におけるAmazonでの最安値製品は207,064円で、Radeon RX 6950 Tiとそれほど差が無いところになっている(GeForce RTX 3090 Tiは25万オーバーだが)。
逆に言えば、Ray Tracingに拘らないユーザーにとっては、Radeon RX 6950 XTは狙い目である。GeForce RTX 3090 Tiに近い性能を、100W近く低い消費電力で実現でき、しかも購入価格は安い。Ray Tracing無しという前提であれば、性能と価格、消費電力のバランスが取れた非常に良い製品と評価して良いだろう。
Ray TracingについてはもうNavi 3xに期待したいところだ。こちらも最初の製品は年内に投入されるそうで、勿論これを待つという選択肢もあるだろうが、ここでどこまでRay Tracingの性能が向上するかは未知数である。そこまで待てない、というユーザーにはRadeon RX 6950 XTも悪くないと思う。