※この記事は2021年04月23日にBLOGOSで公開されたものです

水泳の池江璃花子選手、本当にすばらしいな! 五輪の代表選考を兼ねた日本選手権、終わってみれば池江さん・・・、「100メートルバタフライ」優勝、「100メートル自由形」優勝、「50メートルバタフライ」優勝、「50メートル自由形」優勝で四冠達成。まさかの大復活に泣けちゃったよ。池江さん四冠、見ていたこっちは感動、感激、感謝の「三感」だったね。

コロナになってずっと暗いニュースばかり、こんなに閉塞している時代にこんなに明るいニュースは無かったからさ、本当にすばらしいよ。

池江さんは2年2か月前に白血病の診断を受けてから、治療、闘病、リハビリ、トレーニング再開、レース復帰を経て、今回の日本選手権で大きな結果を残し、東京五輪ではバタフライでの「400メートルメドレーリレー代表」、自由形での「400メートルリレー代表」の出場権を獲得した。

俺は東京五輪開催については前々から、長い目で「延期」の意見だけど、今年五輪があろうと無かろうと、今この時点で池江璃花子選手には本当に大きな感動を頂いた。これには最大級の賛辞を贈りたい。五輪は五輪、池江さんは池江さん、そういう気持ちの人も多いと思うよ。

今回さ、池江さんと同じ白血病の方を始め、がんの方、難病と闘っている方、さまざまな病気と闘っている多くの人々にどれほどの励ましになったか計り知れないよ。いつ元気になれるのか先が見えない闘病をされている方には、頑張れば自分も池江さんのように元気を取り戻せるかもしれない、復活できるかもしれないっていう希望の光になったし、同じ時代を生きる身近な目標にもなったと思う。

俺も身近に知ってる方が白血病で亡くなっているけど、白血病ってさ、とても深刻な病だよ。芸能界では若くして亡くなられた夏目雅子さんが思い出されるな。夏目さんは確か27歳でお亡くなりになった。若くて体力があれば治りやすいという訳でもないから厄介なんだ。

池江さんは闘病の過程で一時期18キロも体重が落ちたってね。退院してすっかり筋肉も削げ落ちて、以前は何度もできたけんすいが一回もできなかったり、アスリートとしてどん底まで行ってしまったわけだ。そのどん底から日本のトップに返り咲くなんて奇跡だよな。

コロナで東京五輪1年延期が吉と出た

池江さんは復活の目標として2024年のパリ五輪を目指してたんだよな。だけど今回こうして前倒しで東京五輪に手が届いたわけだ。これってコロナがあったから東京五輪が一年延期になり、それが池江さんの現実に繋がっている。

もし、コロナが無かったら昨年東京五輪も開催され、池江さんの復活劇は先になっていたわけだ。こういうのって何なんだろうね。世の中の巡り合わせってのは良いも悪いもあるし、「禍福は糾(あざな)える縄の如し」って言葉もあるけど、池江さんの場合、運命のようなものを感じてしまうな。もちろんその運命も彼女は自分の努力で大きく引き寄せたんだよな。

池江さんって、往年の高峰秀子さんを思わせる顔をしてるんだよね。なんていうか、神々しいとでもいうのかな。菩薩のような顔だよね。闘病以前はいかにも体育会系の水泳少女って感じで、そういう雰囲気はなかったけど、やっぱり彼女がくぐり抜けてきた道のりが顔に現れるのかな?

俺もね、長年ラジオの中継であちこちに出かけて、ジジイやババアに笑って拝まれたりなんかしてさ、誰が言い出したのか「歩くパワースポット」なんて言われてるよ。俺が「歩くパワースポット」なら、池江さんは「泳ぐ観音菩薩」だね、アハハハハ。

池江さんって東京都江戸川区出身だろ。江戸川ってのが下町だし庶民的でいいね。江戸川区って相撲では栃若で一時代を築いた大横綱・栃錦関が出てる。芸能界では五月みどりさん。演芸では先代の月の家円鏡さん。並べてみると江戸川って感じがするよ。そして池江さんがクローズアップされて江戸川のイメージは一気に上がったよ。江戸川の人は誇らしいだろうな。

入院することは人生のいい勉強

あのさ、「入院学」って言葉、聞いたことある? 文字通り、入院で学ぶことがあるんだ。俺はこれを聖路加国際病院の日野原重明先生から教えてもらったんだ。

俺は70歳になる手前に腸閉塞で41日間入院したんだけど、長く入院したことがある人や、今まさに入院している人ならわかると思うけど、入院すると孤独になる。自分のことをどうしたって考えることになる。そうすると、自分自身が社会や友人知人や家庭のなかでいったいどれぐらいの存在なのか、自分の位置が冷静に見えてくるんだよ。

そこで、「この程度の自分だからなるようになればいいや」って引くのか、「まだまだ自分は今よりも前に進みたい」と病気に向き合うのか、そこで自分の性格が左右するんだ。池江さんはきっと自分の進みたい道を強く見すえて、つらい治療とリハビリに向き合ったんだろうね。

日野原先生がおっしゃってたのは、「治りたいと思わないネガティブな患者はダメ」ってこと。医者がいくら「治したい」と頑張っても患者にその気が無いと、空回りにすれ違い、治療の効果も変わってくるって。

患者の「治りたい」、医者の「治したい」、これが合わさることが一番の効果になる。そのためには「いい患者」になること。いわゆる「病院食」って、味が薄いとか、冷たいとか、マズいとか、愚痴のフルコースだったりするよ(笑)。でもあれは栄養バランスもカロリーもプロが計算して作っている。患者の体に良かれというものだ。食べて舌は喜ばないかもしれないけど、体や細胞が喜ぶ、そういうメニューだって思うことだな。

そして入院している間は、医者の言うことをよく聞くこと。どっかの耳学問や、生半可にかじった知識をかざして余計な我を出すのは意味ないよ。治療に関して医者はプロ、患者はアマチュアなんだ。

でもって、医者に好かれる患者になること。時には「先生はどんな患者も治すんですってね」「先生にかかったらどんな病気も逃げていくんですってね」なんて、少し歯が浮くくらいなことを言って医者をおだてることも大切だよ。誰だってホメられたら気分いいんだから。そうして医者を味方にする。同じように看護師さんにも好かれる患者になって味方にする。

そういうプラス思考から治ることを第一に考える。治ることを考えるってことは、生きることを考えるってことだ。生きることを考えて知ることが、いい死に方を知ることに繋がるんだ。

日野原先生が言ってたっけ、「入院することは人生のいい勉強ですよ。退院するとひと回り大きくなりますよ」って。なるほどそうだなって思ったよ。入院したら入院学を素直に学ぶ。エゴやわがままを出さず、自暴自棄や無気力にならず、いい患者になる。大事なことだよ。

あとは俺のごく個人的な希望だけど、池江さんと大谷翔平さんでくっついてくれないかなぁ~(笑)。夢のカップルだろ。見てみたいよ。大谷選手もすばらしいな。メジャー移籍して4年目でついに先発で「2番・投手」って正真正銘の二刀流が実現した。そこでいきなりホームランをかっ飛ばしたもんな。

メジャーの歴史に刻まれる偉業だよ。試合した相手チームも最敬礼してた。アメリカの文化を見返してみて、それこそジェームズ・ディーンとかエルヴィス・プレスリーとか、スーパースターに匹敵するね、ショーヘイ・オータニは。

そんな大谷さんと池江さんが並んだらお互い長身でお似合いだよ。そんな夢みたいなこと言ってたら、ゴルフの松山英樹選手がマスターズで優勝したね。日本男子では初のメジャー制覇。これまた歴史的な快挙だ。

あらためてスポーツの持つ力ってすごいな。コロナのワクチンは思ったより進んでないけど、池江璃花子さん、大谷翔平さん、松山英樹さん、彼らの活躍はまさに心のワクチンだね。気持ちが明るくなった。ホント免疫力が上がったよ。

(取材構成:松田健次)