過去のことでも…芸能界を震撼させたマリエの「実名枕営業告白」 - 渡邉裕二

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※この記事は2021年04月22日にBLOGOSで公開されたものです

「枕営業騒動」で芸能界が大揺れとなっている。発端となったのは、タレントのマリエの告発だった。

3月4日。マリエはインスタグラムのライブ配信で、元お笑いタレントの島田紳助氏から性的関係を持ちかけられたことを明かし、さらに、

「そこにいた出川(哲朗)さんも、やるせなす(石井康太、中村豪)の人たちも、みんな18歳の私を帰そうとしませんでした」

と、枕営業の誘いがあったことを実名暴露したのだ。

「私は嘘をつきません」

その後も11日に、インスタグラムへ日本語と英語で投稿した。

マセキ芸能社は否定 巻き添えに警戒も

この実名暴露で名指しされた出川の所属事務所「マセキ芸能社」は大慌てで「お騒がせするような事実はない」と疑惑を否定したが、さすがに芸能界の対応は冷ややかだった。古参の芸能関係者が言う。

「15年も前の出来事をなぜ今になってという声もありますが、芸能界での枕営業なんていうのは、ずいぶん知れ渡っている話ですからね。特に、映画や放送界では日常茶飯事だったと言う人が多い。

下手に擁護なんかして巻き添えを食ったりしたら大変です。ここは静観しておいた方がいいと判断している事務所が多いと思いますね。明日は我が身なんですよ」

何とも情けない話ではあるが…。

それにしても4日のマリエの配信によると、遡ること約15年前――紳助氏から「枕を誘われた」にもかかわらず、その場にいた出川は止めるどころか、むしろ紳助氏のサポートをするような態度をとったという。

武井壮参戦も枕営業は以前から問題に

マリエの主張に沈黙する芸能界の中にあって、「百獣の王」の異名を持つ元陸上競技選手でタレントの武井壮は、今回の一件に黙ってはいられなかったのか、自身のYouTubeチャンネル「武井壮百獣の王国」で、

「芸能界は全然そんなところじゃないっすよ、すごく健全なところ」

と、今回のマリエの発言に疑問符のコメントをした。だが、この武井の発言に業界に詳しい関係者の間からは、

「武井さんの男気でしょうか、業界のイメージを何とか守ろうとする心根は分かりますが、正直言って甘いですね。これまでも芸能界の枕営業については問題視されていた部分が多分にありました。

5年ぐらい前になりますが、モデルの中村アンさんは過去に持ちかけられた枕営業のエピソードを明かしているし、3年前にはグラビアモデルの森下悠里さんも、そういった話を持ちかけられたことをテレビ東京の深夜番組で吐露していました。

しかし、それは氷山の一角で、実は泣き寝入りしているモデルやタレントは多いのです。特にギャラの低いモデル系の女性は、業界関係者だけではなくスポンサーからも口添えがあるようです。

そうした女性の弱みにつけ込む手法は時代に合わないということを、業界全体が気づかないといけない。こういった問題というのは加害者より、被害を受けた方が一番よく覚えているものです。

今回の騒動で出川さんたちは否定していますが、証拠がないだけに水掛け論になってしまいます。ただ、ここでマリエさんが嘘をつく理由はないと思うので、名前を出された以上は否定し続けるよりも、潔く認めて謝ったしまった方がよかったのかもしれません。そもそも過去の行動は取り戻すことはできませんからね」

とは言っても、

「紳助さんは、すでに芸能界を引退した一般人です。何で今になって…」

との声が業界内で上がっていることも事実。そうした声にマリエは、

「マリエちゃん、断ったんだ。断ってもいいんだ、というシチュエーションを伝えたかった。笑ったっていい、どれだけディスったっていい。私は強いから。もう二度と、同じ経験をする子たちが少しでもいなくなって欲しいと思って発信しています」

と反論する。

HAPPY WOMAN AWARD 受賞がきっかけ?

では、なぜ、今だったのか?

ある業界関係者は「言うか言わないかのタイミングは個人の判断ですから、それは問題ではありません」と前置きした上で、

「きっかけとなったのは、おそらく3月8日の国際女性デーに合わせて行われた『HAPPY WOMAN AWARD 2021』で、マリエが個人賞を受賞したことにあったのだと思います。

彼女は、10年ほど前に米ニューヨークのパーソンズ美術大学に留学していたのですが、それ以降、米国と日本を行き来する中で社会問題化した『#MeToo』や『SDGs(「持続可能な開発目標」推進)』などに触れ、女性の地位向上を意識するようになったのではないでしょうか。その中で考え方に大きな変化が出てきたとしても何ら不思議なことではありません。ただ、今回の一件では彼女の背中を押した人がいたのかもしれませんが…」

ちなみに「HAPPY WOMAN AWARD」は、女性の力による持続可能な社会作りを目指すもので、国際女性デーの一環行事として2019年から開催されている。今年の「個人賞」にはマリエの他、黒柳徹子やA I、剛力彩芽、キティちゃんらが選ばれた。

韓国では過去のいじめが大問題に

ところで、韓国に目を向けてみると、アイドルや俳優らが学生時代に行ったとされるいじめ疑惑が次々と浮上、業界全体を巻き込んだ大騒動に発展しており、SNSではいじめを告発する「暴too(暴力 me too)」運動が急速に広がっているという。

発端は今年の2月。東京五輪のバレーボール女子元代表選手、イ・ジェヨンとダヨン姉妹による過去の壮絶ないじめが発覚したことだ。

「2人はCMなどにも出演するスター選手だったことから、騒動は一気に拡大しました。2人はもちろん謝罪しましたが、結局は代表の資格を剥奪される事態になりました。 この『暴too』は芸能界にも飛び火し、ドラマの放送にも影響を及ぼしています」(韓国の情報筋)

いじめと枕営業とでは問題は違うが、過去の行動が今になって騒動を巻き起こす事態に発展している意味においては共通している。ある週刊誌記者は言う。

「令和になって世の中のムードが一転したとも言えます。もうこれ以上、泣き寝入りしたくないとの思いが、特に女性の間から一気に吹き出してきているのではないでしょうか。間違っていることは間違っている、嫌なことは嫌だと意思表示する女性が増えてきたのだと思います。ある意味で世の中が成熟し健全な社会に近づき始めているのかもしれません」

「炎上させるつもりはない」と火消しを開始

ところが、である。

マリエも想像以上の騒動に発展してしまったことに慌てたのか、ここにきて「告発とかではない」と改めて発言。その上で「勝手にユーチューバーがつけた」と、マリエの生配信を保存した人間が、勝手に公開し騒動を巻き起こしたと主張し始めたのだ。つまり今回のことは、あくまでも耐えられなかった自分の経験を発言しただけのことだというのだ。

「炎上させて、喜んでいないから、炎上させるつもりもないし、させたのはユーチューバー、私はなにもしていない」とし「嫌だよ、私も、面倒くさい」と、今度は自らの投稿の火消しに走る始末。

「マリエの投稿で、結果的にですが出川はCMがゼロになってしまった。出川自身にも非があったようですが、それはそれ。マリエが実名で公表したことによって、法的な問題が出てくる可能性があり、出川の事務所がマリエや所属事務所を相手に名誉毀損や営業妨害で訴えることも十分に考えられます。それは紳助氏も同じです。

今後は、両者の間で何らかしらの落とし所を探る作業が出てくる可能性もあるのではないでしょうか」(芸能関係者)

この事態に戦々恐々なのは、マリエが唯一担当しているFMラジオのレギュラー番組だ。

「J-WAVEで毎週土曜日に生番組を担当していますが、スタジオはピリピリ状態です。以前はマネジャーが1人来るだけでしたが、今回の騒動以降は所属事務所から5~6人のスタッフが常時スタジオに詰めています。とにかく生放送ですからね。不測の事態を招かないようにということなのでしょうが、ナーバスな問題なので神経をとがらせています。

さすがにマリエの発言を止めるわけにはいきませんが、個人の発言でも責任は局になるので担当者は気が気ではないかもしれませんね」(放送関係者)

世の中は成熟した健全な方向に徐々に進んでいるのかもしれないが、芸能界の成熟度はまだまだかもしれない。