9千億円の“貯金”使い果たした小池都政 選挙公約に掲げる「稼ぐ東京」の数値目標は - 毒蝮三太夫
※この記事は2020年06月25日にBLOGOSで公開されたものです
小池百合子さん、相変わらず突っ張ってるみたいだね。話題のノンフィクション「女帝 小池百合子」が出版されてから、経歴だった「カイロ大卒業」への疑惑が高まって、いきなりカイロ大学から「小池百合子氏が卒業したことを証明する」なんて声明が出て来たりして慌ただしいよ。
この問題、都知事選に大きく関わるからか、今月15日に小池さん本人が「ご自由にご覧いただきたいと存じます」って、卒業証書と卒業証明書の2点を記者たちに公開してたな。アラビア語で書かれたものだから素人目にはよくわからない。なにやらそれらしく見えるけど、この卒業証書と卒業証明書そのものがホンモノなのかそうでないのか「女帝 小池百合子」にその検証が詳しく書かれてるんだってな。
俺はまだ読んでないけど、編集部は読んだろ、どうなんだ? なになに、読むと疑惑のアラートが解除できずに真っ赤です!? アハハハハ、余計なこと言ってるんじゃないよ。
いっそのことさ、その卒業証書とやらを「なんでも鑑定団」に出したらどうかな? 専門家に鑑定してもらってね。「おやおや、いい仕事してますね」なんて言われてな。そんな言い方されるとよく出来た偽造品みたいに聞こえちゃうよ(笑)。
都知事選の選挙公報には小池さん今まで同様「カイロ大学卒業」って書いてたぞ。これって、もしも学歴を詐称していた場合、公職選挙法違反になるんだよな。なんだっけ? 「虚偽事項公表罪」ってやつか。まあ、でも小池さん、このまま突き進むんだろうね。ちょっとそこで一句、
『小~池や カイロ飛び込む 水の音』
どんな音がするかって? 「ドボーン」とは聞こえず「ペテーン」と聞こえたりしてね。小池さんは一生カイロと心中する気なんだろうね。そうして今の地位まで来たわけだし、疑惑もやり過ごして待ってればいずれ騒がなくなるだろうと。「待てばカイロの日和あり」ってなもんだね(笑)。
過去には野村沙知代さんの留学詐称疑惑が騒動に
しかし、これまでに経歴詐称が発覚していったい何人の政治家や著名人が地位を失ってきたか・・・。それで思い出すのが野村沙知代さん、サッチーだよ。コロンビア大学に留学してたって話があったろ。あれでワイドショーが大騒ぎだったよ。ええと、1996年か。サッチーが衆院選に立候補して、その時に「コロンビア大学留学」という経歴を選挙公報に記載したんだよな。
それで当時の仇敵である浅香光代さんたちが、「その経歴はウソだから公職選挙法に違反している」って東京地検に告発したんだ。で、結局はコロンビア大学の一件ってうやむやで終わったんだよな。大学側に留学生の記録がまったく残ってないって話で。ひどい大学だね。でも、この学歴疑惑でマスコミがさんざん騒いだこともあって、サッチーは落選したんだよな。
野村沙知代さんに小池百合子さん、他にも学歴の疑惑を持たれる人って、結局共通しているのが「見栄」なんだよな。自分自身をより「お高く」見せたいという虚栄心が透けて見える。外見は着飾ったり化粧したり高級なアクセサリーや腕時計をつけたり、金さえあればいくらでもメイクできる。
でも学歴は金で買えない。学歴は勝手にメイクできない。したら只の詐欺師だよ。だけど、海外の大学ってすぐには調べられないからこの「学歴メイク」に利用されやすいんだよな。
グレーのまま都知事選突入 小池都知事の実績は
小池さんもグレーのまま都知事選だな。現職だし前評判ではかなり強そうだ。コロナもあって都民は毎日のようにあの顔を見てるからね。いつも山手線みたいな色のファッションでね。その外見はさんざん知ってるから、あらためて中身を知っておきたいね。おお、編集部で小池都政の実績をまとめてきたか。どれどれ見せてくれ。
編集部)――まず、前回の都知事選の時に小池さんが選挙公約であげた『7つの0(ゼロ)』というのがどれぐらい達成されたかですが、「待機児童ゼロ」、こちらは予算を集中投下して約半分に減ってます。 ※(2016年=8466人→2019年=3690人)」
ほう、道半ばだけどそれなりにやっているってことだな。でもこの問題は小さいお子さんを持つ親にとっては大きいから、「よくやってる」なのか「もたもたしてる」なのか、評価は分かれそうだな。
編)――「介護離職ゼロ」について小池さんは「進んでいる」と言ってますが、具体的な統計の数字がわからないので増えたか減ったか検証できないようです。それもあってか今回の選挙公報では介護離職に関する成果には触れてません。ちなみに都内には約7800人の介護離職者がいるそうです。
介護の問題は俺も常々気になっているし、現場の声をしょっちゅう聴くから介護に関わる人の疲弊もよく知ってる。まずシンプルに介護士を増やすため補助金をつけて賃金をアップする。労働条件を改善する。介護士を増やして介護離職する人を減らす。これは高齢化社会に必要不可欠な対処なんだ。東京都による補助金のバックアップを大胆につけてほしいね。
編)――「残業ゼロ」は東京都職員が月平均約23時間の残業をしていて、小池さんが都知事になってからとくに変化はないようです。
これはね、今回コロナもあって就職の内定を取り消された若い人の問題が切実だから、都職員の採用を増やせるようにしてさ、少しでも若者を雇ってほしいね。もちろん正規採用で。人が増えれば残業も減るんだから。
公約だった「7つのゼロ」は達成ゼロ
編)――「都道電柱ゼロ」は、いわゆる電柱の地中化ですが、小池さんは中心地では「95%達成した」と言ってます。ですが東京都の2019年の資料では、整備対象になってる道で地中化の達成は40%台だそうです。
そうか、いずれにしても進めてほしいよ。電柱が無くなると空が広がって、街がいっぺんにキレイになるし、台風で電柱が倒れる被害も減るからね。そうそう知ってる? 電柱の問題は江戸時代にもあったんだぞ。「浅野殿、ご乱心を、でんちゅうでござる!でんちゅうでござる!」ってな(笑)。
編)――「満員電車ゼロ」は、朝夕のラッシュ時を見れば一目瞭然でとくに変わってません。ただし、コロナで外出自粛が呼びかけられた期間は、都営地下鉄の利用者が70%減るなど目に見えて変化がありました。
逆に言えばコロナぐらいの非常時が起きないと、満員電車は解消しないってことかね。あのね、昔の漫才で春日三球・照代さんのネタに「山手線って来る間隔も短いし、グルグル回ってんだから、この際ぜんぶつなげちゃったらいい。いつ行っても乗れる。運転手もひとりで済む」ってのがあったよ。そのほうが満員電車の解決になったりしてな(笑)。
編)――「多摩格差ゼロ」というのもありますが、数字では検証できません。
人口がますます集中する23区に比べて、人口が減少する多摩地区。その格差を無くすというのは難題だな。東京都庁を半分に割って多摩地区に移転するぐらいしないと難しいだろ。
編)――「ペット殺処分ゼロ」というのは達成されたそうです。ですが、これは環境省が統計の取り方を変えたのが要因で、実際には殺処分が行われているのが現実のようです。
なるほど、そういう裏事情も含んでるってことか。こうして見てみると小池さんの公約だった「7つの0(ゼロ)」は達成ゼロ。まさに「007(ゼロゼロセブン)」だな(笑)。いっそのこと映画にでもしたらどうだい? 「007はコイケの番号」「007都庁から愛をこめて」なんてな。
「7つのゼロ」って公約で訴える時は力強いけどやはり選挙用のコトバだったという印象だな。公約ってのは有権者との約束だろ。目標とか希望とか夢を語ることと、選挙公約とは、別モノにしないとな。
ええと、まだあるのか。なになに、小池さんがこの4年でどんな都政をしてきたかだな。
編)――東京五輪も見据えて海外の目を意識した、タバコの「受動喫煙防止条例」で喫煙の環境がかなりシビアに整理されました。
これはもはや時代の流れだね。「吸いたい」人はどんどん「衰退」していきます、なんてな(笑)。
言うだけだった豊洲市場移転問題
編)――築地市場の豊洲移転問題では、土壌汚染や用地取得の不透明さが指摘されて不安が広がりました。小池さんがこの問題から過去の石原都政を叩く姿はとても強気でしたが、いざ、この問題を現実にどうするのかという行政面では結局、二枚舌でした。豊洲移転の賛成派と反対派のどっちにもいい顔を見せ「築地は守る、豊洲を活かす」と問題は先送り。その直後の都議選で「都民ファーストの会」が圧勝すると、この問題はほとんどうやむやで関わった人達に遺恨を残しました。
ああ、築地な。いずれ市場を築地に戻すような甘言をチラつかせたけど、言うだけだったな。気を持たせておいて結局フェードアウトだろ。小池さんってさ、環境大臣の時にやった「クールビズの推奨」とか、キャンペーンは上手いんだよ。キャスター出身で口が立つからね。
でも、発言の上手さはあるけど、それを裏付ける政治手腕が見当たらないんだよな。実際に人と金を大きく動かす力っていうのかな。表でマイクに向かってしゃべって人の気持ちをつかむのは得意だけど、ウラで粘り強く対話したり交渉したり説得したりっていうのには向いてないんだろうね。
編)――毎年行われている、関東大震災の混乱時に虐殺された朝鮮人・中国人の犠牲者を追悼する式典に、歴代の都知事は追悼文を寄せてきたのですが、小池さんは就任直後の2016年だけで、翌年からはそれを取りやめたことで、歴史への姿勢が問われました。
タヌキの面と皮をかぶったタカってことかねぇ・・・。
編)――そして、新型コロナ対策ですが小池さんは東京五輪にギリギリまでこだわったことで、コロナ対策の初動が遅れたと指摘されてます。ですが、いざコロナ対策の会見を始めると「ロックダウン」とか「オーバーシュート」とか言葉が強めですが伝わりやすく、感染防止のアピールで都知事の存在感を大いに発揮しました。
あれは安倍さんがもたついて見えてたから、比べると小池さんが余計にしっかり見えちゃう。
9千億円の“貯金”使い果たした小池都政 次の公約は「稼ぐ東京」
編)――緊急事態宣言での営業自粛による補償では、東京都は独自の「協力金」を出すことを国に先んじて決めるなど、世論を引っ張った感があります。それも他の自治体に比べて東京都は財政が豊かなので出来たのですが、そのぶんコロナでの緊急対策費の総額が1兆円を超え、約9千億円あった東京都のたくわえ「財政調整基金」は使い果たしたみたいです。
小池さんが全部使っちゃって、東京の金庫はすっからかんなの?
編)――どうやらそのようです。たぶんそれもあるのでしょうが、今回の都知事選では公約の中で「稼ぐ東京」というフレーズを打ち出してます。
「稼ぐ東京」? 稼げるなら稼ぐにこしたことはないけど、具体的にはそこでどんな政策を掲げてんだ?
編)――主にその箇所にあたるのが以下ですね。
< 小池百合子オフィシャルサイト 「東京大改革2・0」より >
「爆速」デジタル化により東京の経済を「新しい成長」へ
・国際金融都市力の強化・次世代通信基盤「5G」の整備
・スタートアップによる「東京発」新ビジネス支援
・ICT人材の育成強化、大規模雇用・就労支援
・環境配慮と経済活動が両立する「サステナブル・リカバリー」
・テレワーク・時差通勤の定着・制度化、サテライトオフィスの整備推進
・オンラインでの学習・診療、行政手続のオンライン化等
ICT? サステナブル? それにしても目新しいカタカナ並べるの好きだよな。で、「稼ぐ東京」っていくら稼ぐの? これをすることで任期中に東京都のたくわえを元の「9千億円」に戻しますとか、経済効果を「何兆円」生みますとか、「稼ぐ」目標の数字は無いの?
編)――無いです。
ウーン、公約に具体的な数字はゼロ・・・。これ、「8つめの0(ゼロ)」ってこと?
しかし今回の都知事選、小池さんも色々あるけど、対抗するはずの野党はホントにだらしないな。現職が任期どおりで時間はたっぷりあったのに、野党まとまっての統一候補を立てられなかったんだから。俺はそれが腹立たしいよ。
小池さんも自分が有利だってわかってるから、告示後も都庁に引きこもって街頭演説しないもんな。こりゃ、小池さんの術中に野党もハマったか? この都知事選、どんぐりころころの歌じゃないけど、こんな感じかな。
♪野党がオロオロまとまらず 小池にハマってさあたいへん 都庁にこもって出てこない それでも投票いたしましょ~
(取材構成:松田健次)