「その夢、NEWSのままじゃダメ?」手越祐也の会見から読み解くジャニーズ事務所退所の真意 - 川島透

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※この記事は2020年06月24日にBLOGOSで公開されたものです

6月19日付けでジャニーズ事務所を退所した手越祐也が23日、記者会見を行い退所の経緯や今後の活動について説明した。

手越はNEWSのメンバーやファン、仕事で関わったスタッフらに感謝の言葉を繰り返し、円満退所であることを強調。退所にあたり直接会って対話できなかったという社長の藤島ジュリー景子氏や副社長の滝沢秀明氏に対しても感謝の言葉を述べた。

他方、退所を決意した理由の中で、自身が思い描くような活動を自由にできなかった現状に触れる場面もあった。SNS上では「ジャニーズはやっぱり閉鎖的」と否定的な声が目立った一方、「そんなことはない」と自由度を増す最近の活動を紹介するファンの投稿が見られた。

Twitterのプロフィール欄には「スーパーポジティブ人間」と記し、会見では終始ジャニーズ愛を強調した手越。そんな彼が、自由な活動をさせてくれない事務所への批判ともとれる持論を展開した本意はどこにあったのだろうか。

発言を最後まで読み解くと、浮かび上がってくるのはジャニーズ事務所が巨大組織であるがゆえに生まれる、手越が持つ理想とのズレだ。

「事務所にいたらできなかったことが多かった」

会見でNEWSでの充実ぶりや故・ジャニー喜多川氏への信頼について語った手越だが、「ジャニーズ事務所にいたらできなかったことがすごく多くて」と、自身の活動内容についてもどかしさを感じていたことも窺わせた。

「やりたいって言っても叶わなかったことはたくさんあるんですけど。僕らエンターテイナーっていうのは、応援してくれるファンだったり、見てくれる視聴者に少しでも喜んでほしいっていうところがある。

ファンと一緒にハロウィンのイベントだったり、夏だったら海でファンミーティングだったり、僕も32歳と、年齢を重ねてきたので、ディナーショーをして、ファンの方と人生相談だったり、たまにはちょっと一緒にお酒飲んだり、食事したりとか。やっぱり海外進出というのもやっていきたかった」

別の質問への回答では、より具体的に、発信力や影響力を活かせるツールであるSNSを利用できないこと、知人のミュージシャンから誘われたライブやフェス出演を断らざるを得なかった無念さについても触れていた。

ネット進出解禁 活動の幅を広げるジャニーズ事務所

しかしSNS上で「閉鎖的」という批判にファンらが反論したように、ジャニーズ事務所の活動に近年大きな変化がみられることも確かだろう。

かつてジャニーズは、所属タレントが表紙になっている雑誌であっても、電子版ではタレントの写真が掲載されないなど、ネット露出に消極的だとされていた。しかし2018年にはYahoo!が関わるネット動画のGYAO!で木村拓哉の冠番組「木村さ~~ん!」がスタートするなど、このころから徐々に解禁。2019年には、嵐が活動20周年記念日にTwitter、Facebook、Instagram、TikTok、Weiboの公式アカウントを一斉に開設したことは記憶に新しい。

またフェスについては、2014年に20周年を迎えたTOKIOが「SUMMER SONIC 2014(サマソニ2014)」でジャニーズとして夏フェスに初出演。2017年には関ジャニ∞も「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2017(メトロック2017)」で野外フェス初出演を果たしてバンド演奏を披露し、話題となった。

手越が会見でたびたび口にしたディナーショーについても、2016年、2018年には現副社長の滝沢秀明氏が、2019年には、V6の年長メンバー3人で構成される「20th Century(トニセン)」が18年ぶりに開催するなど、今までなかったわけではない。

事務所への唯一の不満は「遅さ」

手越が思い描く活動も、ジャニーズ事務所に所属したまま、NEWSのメンバーとして活動しながら実現することもできそうに思える。

実際、近年はプライベートの人脈から仕事につなげられることもあったという。ただ、「ジャニーズのような大きな会社では、実現してファンのもとに届くまでに1年近くかかってしまっていた」と明かす一幕もみられた。

「ジャニーズは、日本ナンバーワンの巨大な事務所なので、『これはマイナスがあるんじゃないか』と細かく精査するじゃないですか。

(略)

1年って、スタッフのみなさんからしたら普通なのかもしれない。でもアイドルの30歳から31歳、31歳から32歳、そして次の33歳という1年って本当に大切だし、1分1秒を僕は大事にしたいと思って生活している。

そこの僕の理想のスピード感との開きが出てきたっていうのは、ひとつの理由としては大きいです」

会見中、唯一とも思えるネガティブな言葉を使ったのが「自分があれやりたい、これやりたいってアイデアが、ジャニーズにいたらスピード感も遅いし、なかなか叶わないよなって」という発言だ。

手越は、NEWSの活動と併行できるなら退所はなかったとし、「ジャニーズを出ざるを得なかったというのが一番大きな僕の心情の変化であり、(退所の)原因です」とも述べた。

ジャニーズに所属したままでもSNSを始められるかもしれないし、ディナーショーだって開催できるかもしれない。しかし、それがいつになるかは分からない――。そんな思いを抱えていたのだろう。

組織の中で自分の思う活動ができない窮屈さや、時間を無駄にする苛立ちは、アイドルではなくとも同世代の多くが共感するところかもしれない。「絶対にファンを裏切らない」と語った手越の、今後の自由な活動に期待したい。