※この記事は2020年05月29日にBLOGOSで公開されたものです

ハワイ在住のフリーアナウンサー、荒川れん子です。

とあるアメリカの経済系WEBサイトでは、新型コロナウイルス対策を最も厳しく実施した州のひとつにあげられているハワイですが、その効果あってか全米で最も新規感染者数の低い状態が続いています。

4月19日以降、ハワイ州全体の新規感染者はずっと一桁で推移し、5月はゼロという日も数日ありました。そんな状況の中、3月25日から続いている自宅待機令もそろそろ終了では? と島民の間で期待が高まっていた5月中旬、さら~っと自宅待機令を6月いっぱいまで延長するという発表があった時は、さすがに落胆の声があちこちで上がりました。

しかし一方で小売店、ショッピングモールの再開やビーチでくつろぐことなどが許可されるとの発表もあり、実質緩和の方向に動きだしたのです。

郡によって多少違いはありますが、オアフ島の小売店、ショッピングモールの再開が始まったのは5月15日。そこで、アメリカ最大のショッピングモールであるアラモアナセンターに行ってみることにしました。

ショッピングモール営業再開 様子見のテナントも

約2ヶ月間も閉まっていたため、買い物を我慢していた人たちがどっと押し寄せるかもしれないと、まずはテレビのニュースをチェック。午前11時の開店時はそれほどの人出もない様子です。

ニュースキャスターによると約1/3の店舗がオープンしたとのこと。その様子を見て少し安心し、遅めの午後から向かいました。入り口には『ここから先はマスク必須』のサイン。若干緊張感もありつつ中へ進むと、そこで目に入ってきた光景に 「え!?」と一瞬唖然…。ガラガラだったのです。

5月15日に再開した店舗は55。その前から営業を続けていたテイクアウトのみのお店などを含めると全350店舗中、約3割の100店以上が営業しているはずですが、ぱっと見た限りではほとんどがまだ閉まっている状態です。がら~んと静まり返ったショッピングセンター内は、ぱらぱらと数人の人出がある程度。思った以上に皆さん慎重に行動しているのと、失業状態で買い物を控えているという事情も影響したようです。

確かに、ショッピングモール再開という少しずつ前進している様子を感じられるのは嬉しいけれど、まだ先行き不安な中でショッピングを楽しむ余裕がある人は稀でしょう。そんな中、店内への入場制限を行い一度に数人しか入れないようにしていたルイヴィトンの前には数人入場待ちの人がいましたが、どちらかというと地元住民というよりも長期滞在者のように見える雰囲気の方が多かったです。

デパート系の大手企業に至っては、再開初日はどこも再オープンに至らず、1週間後にメイシーズが再開したくらい。5月15日の初日に再開した店舗は地元企業が多く見られました。

ローカルジュエリーショップの『NA HOKU』では、「とにかく早くお客様に会いたかったから再開が嬉しい。初日の今日は正直客足は少ないけれど、修理をしたくて待っていた方や、記念日のプレゼントに間にあわせるために来てくれた常連客がほとんど」と従業員は興奮気味に語っていました。

アラモアナセンターでは、利用客にマスク着用を義務付けていますが、店舗の従業員ももちろんマスク着用。まだほとんど客のいないショッピングモールでは、従業員の数の方が多く、手持ち無沙汰もあってか店内をこまめに掃除する姿が目立ちました。エスカレーター前には『間隔を6段あけてください』の表示があったり、あちこちにサニタイザー(除菌ジェル)が設置されたりしています。

観光客激減のワイキキは厳しい状況が続く

続いてワイキキの真ん中にどーんと構えるショッピングモール『ロイヤルハワイアンセンター』にも行ってみました。こちらはアラモアナセンターよりもさらにまだひっそり。再開したお店を探す方が難しいくらい、ほとんどオープンしていませんでした。

目につくのはセキュリティーと清掃の方。とにかくこまめにお掃除されていました。エレベーター利用は4人まで。わかりやすく立ち位置を示すステッカーも貼られています。ハワイ州外からきた全ての人に14日間の自己隔離が義務付けられているため、観光客が激減したワイキキは最も厳しい状況です。

再開許可直後は様子を見ている企業がほとんどで、これから徐々に再開へ向け動き出すといった考えのようです。利用客が来なくても開店しているだけでコストがかかりますし、従業員の安全対策も必要です。かといって開店しなければ前へ進めないというジレンマがあり、決断が難しいようです。

ただ、単なる一島民の私からすると、今まで立ち入り禁止になっていたショッピングセンターがオープンしただけで気持ちがこんなに解放されるのだなと感じました。あのいつも多くの人で賑わっていたアラモアナセンターやロイヤルハワイアンセンターがまるでゴーストタウンのように不気味な怖さを感じる場所になっていたことは、相当のショックでもあり、不安が現実となって現れているかのようでした。

再開許可の出た今は、店舗がほとんど開いていなくてもモール内を通り抜けられるようになったり、少ないながらも人の気配を感じたりできることは、街が徐々に明るさを取り戻しているようで希望を感じます。

私と同じように感じる方も多かったのか、普段のエクササイズをモール内のウォーキングに切り替える人も増えたようです。しかし、ベンチなどはまだ座れないようになっているので、自分に甘い私には休憩なしを余儀なくされ、考え方によってはなかなか良いコースです。

日光浴解禁で人があふれるビーチ

ショッピングセンター再開よりも盛り上がったのが5月16日からのビーチの解禁でした。海の中でのエクササイズ(サーフィンや水泳など)は可能でしたが、ビーチパークは通り抜けのみで、海から上がって砂浜に座ったりくつろいだりすることは罰金や禁固刑の対象だったのです。

それがビーチの解禁で日光浴がOKとなり、初日から多くの人がビーチへ向かいました。地元住民から人気の高いアラモアナビーチは、ハワイ在住14年目の私でも大きなイベント以外でこんなに混んでいるのを見たことがないというくらいの大盛況。

6フィート(約1.8メートル)のソーシャルディスタンスを守らねばいけないのと、同居の家族は一緒にいてもOKですが、一家族は10人までという規制もビッグファミリーの多いハワイらしさです。

今まで観光客で賑わっていたワイキキビーチにもたくさんの人が溢れました。耳をすますと聞こえてくるのは外国語が多かったので、その多くは観光客なのではないかと思います。14日間の自己隔離を終えた方達と考えると、長期滞在が可能な余裕のある人ということになるでしょうか。

また、ワイキキビーチでは以前のように観光客を迎えられない今の期間に、ビーチの修復作業が進んでいます。ワイキキビーチは以前から侵食が進み、砂を足す必要がありました。その作業を中心に、観光客が少ない間にあちこちで工事を行なっており、観光業が再開されるまでに諸々を整える動きが起こっています。

ハワイが示した4段階の復興プラン

観光産業がメインのハワイ。州内での新型コロナウイルスの封じ込めはできつつありますが、問題は観光業の再開です。5月18日にハワイ州知事はハワイ経済の再開・回復までの4段階のプランを発表しました。

フェイズ1は『Stay-at-Home(自宅待機令)』と『Safer-at-Home(自宅での安全命令)』と括られ、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることに徹底したもので、『Safer-at-Home』では、自動車販売、花屋、ペットグルーミング、小売業など低リスクとみられるビジネスの再開が行われました。

フェイズ2は『Act with Care(注意しながら行動)』。地元経済の再開を主軸に、中リスクと言われるビジネスの再開。これにはレストランの店内飲食や理美容院、美術館などの再開も含まれます。ただし、10人を超える集会は依然禁止。

フェイズ3は『Recovery(回復)』。知事の見解ではこの段階が一番長期戦になるだろうとのことで、6フィートのソーシャルディスタンスを守りながら50人までの集会の許可や高リスクと言われるビジネスの再開。しかし、バーやクラブの再開許可は含まれていません。

フェイズ4は最終段階で『New Normal(新しい日常)』。マスク着用やソーシャルディスタンスを守るという新たな常識を取り入れながら、日常生活や経済活動を完全復活し、より強いハワイとして復興するというものです。

今はフェイズ1からフェイズ2へ移行している段階だそうで、オアフ島では6月5日からレストラン内での飲食が可能になります。

再開の条件として、各テーブル間は6フィート開ける、同居家族ではない場合は1グループ6人まで、同居家族は1グループ10人まで、食事時以外はマスク着用、セルフサービスのサラダバーやブッフェは禁止などなど数多くの規制があります。

店内が狭い店舗については歩道や公園まで客席を拡大することも可能になるとか。とにかく今まであり得なかったことも検討しながら対応していくということになりそうです。

徐々に規制が緩和され、少しずつ復活へ向かうハワイ。その空気感は住民の間にも広がりつつあり、視点は次なる未来へ向いてきているのではないでしょうか。この原稿を執筆している5月24日現在、失業者は22万人以上で約3人に1人が失業中という非常事態ではありますが、以前と同じ状態に復活することを待つ人と、ニューノーマルへ向けて新たな生き方を模索する人の2つに分かれているようにも感じます。

それでもハワイを復興させたい想いは皆同じだと思いますので、今後少しずつ変わっていく状況を注意深く見守りながら自分自身も柔軟に対応できるようにしたいと思う今日この頃です。


荒川れん子
ハワイ在住フリーアナウンサー

日本のテレビ局にアナウンサーとして入社し、その後フリーとなる。2007年にハワイに拠点を移し、テレビ、ラジオ、雑誌などでハワイ情報を発信している。ANA SKY CHANNEL『’AiNA HAWAii』出演中。
Instagram:https://www.instagram.com/renren_hawaii/
blog:https://ameblo.jp/hawaii-renkoarakawa