※この記事は2020年05月14日にBLOGOSで公開されたものです

検察官の定年延長に関する検察庁法改正案をめぐり、安倍政権への批判が巻き起こっている。「安倍政権の守護神」とも呼ばれる黒川弘務・東京高検検事長を検事総長にするための法改正ではないか、という疑念が指摘され、ツイッターで「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグをつけた投稿が多数されるなど、政権批判のうねりが起きている。この問題について、田原総一朗さんはどう考えているのだろうか。【田野幸伸・亀松太郎】

芸能人たちが抗議の声をあげたのは素晴らしい

いま注目を集めている検察庁法改正案の問題は、安倍内閣が今年1月に黒川氏の定年延長を閣議決定したことに端を発している。検察庁法には定年延長の規定がないため、法的根拠がないのではないかと指摘されたのだ。

これに対して、政府は当初、国家公務員法の延長規定を適用していると説明していたが、1981年に人事院任用局長(当時)が国会で「国家公務員法の延長規定は検察官には適用されない」と答弁していることが明らかになった。

これに関する森法務大臣の国会答弁も二転三転し、迷走しているといっていい状態だ。「検察庁法を改正することで黒川氏の定年延長を正当化しよう」という政府の意図が透けて見える。

黒川氏の定年延長が閣議決定されたのは、「桜を見る会」の問題で安倍内閣が厳しく批判されていたころだ。安倍首相を始め、自民党の有力政治家の後援会メンバーが続々と招待され、税金の私物化ではないかという非難が強まっていた。

そんな時期の黒川氏の定年延長。そして、新型コロナウイルスで社会が大変な状況の最中に、その定年延長を正当化する検察庁法改正案が成立しようということで、野党だけでなく、一般の国民からも安倍内閣を批判する声が噴出している。

今回は、有名な芸能人もツイッターで抗議の声をあげているのが特徴的だ。

最近はメディアの自主規制が厳しく、ネット監視も進んでいることから、芸能人が政治に関して自由に発言しにくい空気があった。そんな状況の中で、発言すれば批判されがちな芸能人や文化人が反対の意思を表示したことは素晴らしいことだと思う。

それぐらい、今回の検察庁法改正案は問題が大きいということでもある。

いま「検察官の定年延長」を急ぐ神経が理解できない

問題は、与党の議員たちがこうした抗議の声にどう応えるか、だ。

かつての自民党ならば、法務大臣が「総理、止めたほうがよろしいですよ」と諫めたことだろう。しかし、現在の自民党の議員たちは、安倍首相のイエスマンばかりになってしまっている。

野党が弱すぎるため、野党の批判だけでは足りない。自民党の中から批判が出てくる必要があるが、どうなのだろうか。

今回の検察庁法改正は、どうみても「クロカワ問題」を正当化するための法改正であり、政治が検察人事に介入しやすくなるという問題もある。

そんな法改正を、なぜ、いま強行しなければいけないのか。その神経が全く理解できない。

安倍内閣は「モリカケ問題」に続く「サクラ問題」で批判にさらされ、命脈が尽きようとした。もしコロナ問題が起きなければ、窮地に立たされていただろう。

コロナに救われたともいえる安倍内閣が、コロナの問題が収束しないうちに、自らを利するための法改正を強行しようとしている。

あまりにも国民を馬鹿にしているのではないか。

国民もメディアも、もっと怒るべきである。