緊急事態宣言31日まで延長は「断腸の思い」 安倍首相の会見発言全文 - BLOGOS編集部
※この記事は2020年05月04日にBLOGOSで公開されたものです
新型コロナウイルスへの対応を検討する政府対策本部は4日、47都道府県への緊急事態宣言について、対象を現状のままで今月31日まで期間を延長することを決めた。安倍晋三首相が同日夕に会見し、「医療現場の逼迫した状況を改善するためには、1ヶ月程度の期間が必要であると判断した」などと延長の理由を述べた。
また、安倍首相は、社会経済活動の停滞の影響を踏まえ、アルバイト学生への支援や、飲食店の家賃補助にも言及。医療関係者やその家族、感染者への差別が生まれていることへの憂慮も示した。
緊急事態宣言をめぐっては、政府が4月7日、東京都や大阪府など7都府県を対象に、今月6日までとする緊急事態宣言を発令し、7都府県は不要不急の外出自粛や娯楽施設の休業などを要請。その後、県域を超えた移動による感染者の増加を防ぐため、4月16日に対象を全国に拡大していた。
首相の会見冒頭の発言は次の通り。
「国民の行動は未来を変えつつある」
緊急事態宣言を発出してから間もなく1ヶ月となります。最低でも7割、極力8割、人との接触を削減する。これを目標に、可能な限りご自宅で過ごしていただくなど国民の皆様には大変なご協力をいただきました。その結果、一時は1日あたり700名近くまで増加をした全国の感染者数は、足元では200名程度、1/3まで減少しました。
これは私たちが収束に向けた道を着実に前進していることを意味します。また、一人の感染者がどれだけの人にうつすかを示す実効再生産数の値も、直近の値は1を下回っています。
緊急事態を宣言した4月上旬、1カ月後の未来について欧米のような感染爆発が起こるのではないか。そうした悲観的な予想もありました。しかし、国民の皆さんの行動は、私たちの未来を確実に変えつつあります。我が国では緊急事態を宣言しても、欧米のような罰則を伴う強制的な外出規制などはできません。それでも感染の拡大を回避し減少へとチェンジすることができました。
これは国民の皆様お一人お一人が強い意志を持って、可能な限りの努力を重ねてくださったその成果であります。協力してくださったすべての国民の皆様に心から感謝申し上げます。
13都道府県は引き続き8割の接触回避を
その一方で、そうした努力をもうしばらくの間続けて行かなくてはならない事を、皆さんに率直にお伝えしなければなりません。現時点ではまだ、感染者の減少がまだ十分なレベルとは言えない。全国で1万人近い方々がいまだ入院などにより療養中です。この一か月で人工呼吸器による治療を受ける方は3倍に増えました。こうした重症患者は回復までに長い期間を要することも踏まえれば、医療現場の皆さんが過酷な状況に置かれている現実に変わりはありません。
これまでに500名を超える方々が感染症によりお亡くなりになりました。心からご冥福をお祈り申し上げます。一人でも多くの命を救うためには、医療支援をさらに重症者治療に集中していく必要があります。1日あたりの新規感染者をもっと減らさなければなりません。
このところ、全国で毎日100人を超える方々が退院など回復しておられますが、その水準を下回るレベルまで、さらに新規感染者を減らしていく必要があります。そのために感染者が多く、特に警戒が必要な13都道府県の皆さんには、引き続き極力8割の接触回避のためのご協力をお願いします。
東京都では5月に入ってからも、平均で1日100人を超える感染者が確認されています。これまでの努力を無駄にしないためにも、ここで緩むことがないようお願いいたします。そして、各地での感染拡大を防ぐためにも地方への人の流れが生まれるようなことは避けなければなりません。そのための対策も講じることができるよう、今後とも全国を対象として延長させていただくこととしました。
その上で、入院患者の皆様は2、3週間が平均的な在院期間とされています。新たな感染者数を低い水準に抑えながら、それまでに感染した患者の皆さんの退院などを進めていく。そうすることで医療現場の逼迫した状況を改善するためには、1ヶ月程度の期間が必要であると判断いたしました。
こうした考え方について、本日は尾身会長を始め諮問委員会の専門家の皆様の賛同を得て、今月いっぱい、今月末まで緊急事態宣言を延長することを決定しました。
1カ月で宣言終了できず「お詫び申し上げたい」
ただし、今から10日後の5月14日をめどに、専門家の皆さんにその時点での状況を改めて評価いただきたいと考えております。その際、地域ごとの感染者数の動向、医療提供体制の逼迫状況などを詳細に分析いただいて、「可能である」と判断すれば、期間満了を待つことなく緊急事態を解除する考えであります。当初予定していた1カ月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆さんにお詫び申し上げたいと思います。
感染症の影響が長引く中で、我が国の雇用の7割を支える中小・小規模事業者の皆さんが、現在休業などによって売上がゼロになるような、これまでになく厳しい経営環境に置かれているその苦しみは痛いほどわかっています。こうした中で緊急事態をさらに1ヶ月続ける判断をしなければならなかったことは断腸の思いです。
明日の支払いにも大変なご苦労をしている皆さんに、1日も早く使い道が全く自由な現金をお届けしなければならないと考えています。5月1日から最大200万円の持続化給付金の受付を始めましたが、最も早い方で8月から(編集部注)入金を開始します。
公庫や商工中金だけではなく、身近な地方銀行や信金、信組でも3000万円まで、実質、無利子・無担保、元本返済も最大5年の融資が受けられます。納税や社会保険料の支払いも猶予いたします。これらの支援策をご活用いただくことで、この緊急事態をなんとかしのいで頂きたい。
飲食店の家賃負担軽減、アルバイト学生の支援にも対策
事業と雇用を何としても守り抜くとの決意のもとで、政府の総力をあげ、スピード感をもって支援をお手元にお届けして参ります。加えて、飲食店などの皆さんの家賃負担の軽減、雇用調整助成金のさらなる拡充、厳しい状況にあるアルバイト学生への支援についても、与党における検討を踏まえ、速やかに追加的な対策を講じてまいります。
その上で事業者の皆さんが何よりも望んでおられるのは事業の本格的な再開だと思います。そのためにこの一か月で現在の流行を収束させなければならない。5月は収束のための一ヶ月であり、そして次なるステップへ向けた準備期間であります。どうかご理解とご協力をお願い申し上げます。
感染拡大の防止は私たちの命を守るための大前提です。有効な治療法やワクチンが確立されるまで、感染防止の取り組みに終わりにありません。その意味で、私たちはある程度の長期戦を覚悟する必要があります。
しかし経済・社会活動を厳しく制限する今のような状態を続けていけば、私たちの暮らしそれ自体が立ち行かなくなります。命を守るためにこそ、私たちはコロナの時代の新たな日常を一日も早く作り上げなければなりません。
ウイルスの存在を前提としながらも、いつもの仕事、毎日の暮らし、緊急事態のその先にある出口に向かって皆さんと共に一歩一歩前進していきたいと考えています。
その観点から本日、日常生活において留意すべき基本的なポイントを、専門家の皆様からお示しいただきました。密閉・密集・密接の三つの「密」を生活のあらゆる場面で出来る限り避けていただく。
より詳細な感染予防ガイドラインを
このウイルスの特徴を踏まえ、正しく恐れながら日常の生活を取り戻していく。専門家の皆さんが策定した新しい生活様式はその指針となるものです。子供達には長期間にわたって学校が休みとなり、友達と会えない。外で十分に遊べない。色々と辛抱してもらっています。心から感謝します。
またお父さんやお母さん、ご家族の皆様には大変なご負担をおかけしています。先週、文部科学省から「分散登校」などこの度新たな指針をお示ししました。段階的であっても、子供たちの学校生活を取り戻していく。学校においても新たな日常を作る取り込みを進めます。
経済活動においても新たな日常を作り上げます。様々な商店やレストランの営業、文化施設、比較的小規模なイベントの開催などは新しい生活様式を参考に、人と人との距離を取るなど感染防止策を十分に講じていただいた上で、実施していただきたいと考えております。
今後2週間を目処に、業態ごとに専門家の皆様にもご協力を頂きながら、事業活動を本格化していくため、より詳細な感染予防策ガイドラインを策定してまいります。
ただし、三つの「密」が濃厚な形で重なる、夜の繁華街における接待を伴う飲食店、ライブハウスなど、これまで集団感染が確認された場所へ行っていただかないことは引き続きお願いすることになると考えます。他方で、外出それ自体が悪いわけではありません。
人との距離を十分に保ってマスクを着用する。そうした予防対策を講じながら外出できる。そうした日常を専門家の皆様のアドバイスを元に、戻して参ります。
もう一度申し上げますと、外出それ自体は全く悪いことではない。三つの「密」を避けることを大前提に、新たな日常を国民の皆様と作り上げていく。この1カ月はその出口に向かってまっすぐに進んでいく一か月です。
各地にPCRセンターを整備へ
同時に、次なる流行の恐れにもしっかり備えていきます。その守りを固めるための一か月でもあります。各地で医師会の皆様の協力も得てPCRセンターを整備するなど、検査体制をさらに拡充してまいります。地域の感染対策の砦である保健所の負担軽減、態勢強化にもさらに取り組みます。
感染が判明した方々には、宿泊施設での療養や、医療機関への入院など、病状に応じた適切な対応がスムーズに行われるよう、自治体ごとの体制構築を支援していきます。ガウンや高性能マスクなど医療防護具についても、国内での増産や輸入を一層強化します。
そして、最前線の医療現場に国が直接届ける取り組みをもっと充実していきます。介護施設などの感染予防も一層強化しなければなりません。さらには、有効な治療薬治療法の確立に向かって、この一か月一気に加速していきます。
日米でちょうど共同支援を進めていたレムデシビルについて、米国で使用が承認されました。そして本日、我が国においても特例承認を求める申請がありました。速やかに承認手続きを進めます。我が国で開発されたアビガンについてもすでに3000例近い投与が行われ、臨床支援が確実に進んでいます。
こうしたデータも踏まえながら有効性が確認されれば、医師の処方のもと使えるよう、薬事承認をしていきたい。今月中の承認を目指したいと考えています。あらゆる手を尽くして次なる流行に万全の備えを固めていくそのための一か月にしなければならないと考えています。
医療関係者や家族への差別・偏見を憂慮
感染の恐れを感じながら様々な行動制約の下での生活は緊張を強いられます。目に見えないウイルスに強い恐怖を感じる、これは私も皆さんと同じです。
しかし、そうした不安な気持ちが他の人への差別や、誰かを排斥しようとする行動につながることを強く恐れます。それはウイルスよりもっと大きな悪影響を私たちの社会に与えかねません。誰にでも感染のリスクはあります。
ですから、感染者やその家族に偏見を持つのではなく、どうか支え合いの気持ちを持っていただきたいと思います。各地の病院で集団感染が発生している状況を大変憂慮しております。
しかし、医師、看護師、看護助手、病院スタッフの皆さんは、そうしたリスクと背中合わせの厳しい環境の下で、強い使命感をもって今この瞬間を頑張ってくださっています。
全ては私たちの命を救うためであります。医療関係者やその家族への差別も決してあってはならない。ここに心からの敬意を表したいと思います。
緊急事態の下でもスーパーや薬局で働いていらっしゃる皆さん、物流を支える皆さん、介護施設や保育所の職員の方々など、社会や生活を様々な場所で支えてくださっている方々。そうした皆さんがいて私たちの暮らしが成り立っています。改めて心から感謝申し上げます。
私たちの生活を支えてくださっている皆様へ敬意や感謝、他の人への支え合いの気持ち、そうした思いやりの気持ち。人と人との絆の力があれば、目に見えないウイルスへの恐怖や不安な気持ちに、必ずや打ち勝つことができる。私はそう信じています。
今年は大型連休中も不要不急の外出を避け、自宅での時間を過ごしてくださっている皆さんに改めて衷心より御礼申し上げます。友人同士のオンラインでの交流など、インターネットや SNS を使って人と人との絆を深め、楽しもうという、自宅での時間を楽しもうとする方がいらっしゃることに大変勇気づけられます。
前向きな皆さんの存在が緊急事態を乗り越える大きな力になっています。例年、ゴールデンウィークには実家に帰省するなど、家族で旅行していた皆さんも多いと思いますが、今年はオンライン帰省などのお願いをしています。
そうすることで皆様、そして愛する家族の命を守ることができます。御協力に感謝いたします。いつかきっとまた家族でどこかに出かける。その時のために、今はおうちで家族との時間、家族との会話を大切にしていただきたいと思います。
先日、国立感染症研究所が分析したゲノム分析によれば、我が国は決定的なクラスター対策によって、中国経由の第一派の流行について押さえ込むことができたと推測されます。
そして、700名を超える集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号からのウイルスも様々な対策の結果、国内では収束したと分析しています。
そして、今また欧米経由の第二波についても、感染者の増加はピークアウトし、収束への道を進んでいます。皆さんに大変なご協力をいただきました。大変つらい思いもしていただいていることと思います。
しかし、これまで私たちの努力、取り組みは間違いなく確実に成果をあげています。みんなで前を向いて頑張れば、きっと現在のこの困難も乗り越えることができる。国民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。ありがとうございました。
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