【現地リポート】一人目の新型コロナウイルス感染者からわずか1週間で外出禁止令 ハワイから学ぶ「人と人が180センチ以内に近づかないこと」 - 荒川れん子
※この記事は2020年04月04日にBLOGOSで公開されたものです
ハワイ在住のフリーアナウンサー、荒川れん子です。
ハワイ時間4月2日でオアフ島に自宅待機令(事実上の外出禁止令とも言われています)が発令されてから11日目を迎えました。現時点で確認されたハワイの感染者は285人。うち2人が亡くなっています。
徐々に広まっていった不安
ここまでの経緯を簡単に振り返ると、2月下旬にハワイ州がコロナウイルスによる影響を懸念し、念のため2週間分の水、食料、生活必需品などの備えを呼びかけた後からトイレットペーパーの品切れが始まりました。まだこの頃はハワイ内で感染者は確認されておらず、それほど危機感は蔓延していなかったため、むしろ買いだめに疑問や批判的な意見も飛び交うくらいでした。
その後、3月上旬に大規模なイベントの中止が続々と発表されると、各事業に影響がでてきたため、不安が少しずつ広がり始めました。
3月16日にハワイで初めての感染者の確認が発表されました。翌3月17日、ハワイ州知事が30日間にわたるハワイへの渡航自粛を要請しました。観光産業が主なハワイにとって、1ヶ月にも亘り観光客の自粛を求めることは経済的打撃が大き過ぎると、かなりの動揺が広がります。この頃から激動の日々が始まり、刻々と変わる状況から目が離せない状態になりました。
最初の感染者発表からわずか1週間で外出禁止に
3月18日、ホノルル市長が、市内のバー、クラブの閉鎖とレストラン内での飲食を禁止し、テイクアウトとデリバリーのみの営業に制限することを要請。しかも実施は2日後の20日午前8時30分からと急だったため、飲食業界は対応に追われました。
3月21日、州知事がハワイに到着する全ての住民と旅行者に対し14日間の自己隔離を3月26日から命じると発表。同じく3月26日から日本政府がアメリカからの入国者に2週間の待機要請実施を発表したため、ハワイ滞在中の日本人旅行者の間では予定を繰り上げて急遽帰国手続きをする人が続出しました。
3月23日16:30より4月30日までの予定で、オアフ島で自宅待機・在宅勤務令開始。
3月25日からはハワイ州全体でも自宅待機・在宅勤務令が開始。
3月26日にはハワイに到着する住民・旅行者全員に対する14日間の自己隔離命令が始まりました。
ハワイ最初の感染者が確認されてからわずか1週間余りであっという間に外出禁止になったのです。ハワイに来て14年目を迎えた私ですが、未だ日本の体制の印象が染みついているためか、アメリカは決めるのも実施に移すのもとにかく早くて、行政ってこんなに早く動けるのかと驚くばかりでした。
「どうしても必要な外出」にサーフィンが含まれるハワイ
実質の外出禁止令である自宅待機・在宅勤務令は、いわゆる生活に不可欠なサービスや商品を提供している機関(病院・医療サービス、飲食店、スーパー、銀行、メディア、ガソリンスタンド、公共交通機関、郵便・配送サービス業など)を除き、原則全ての従業員は在宅勤務、また、どうしても必要な外出以外は自宅待機というものです。
違反者には最高5,000ドルの罰金か1年以下の禁固刑、もしくはその両方を科される場合もあります。だからといって外出したら即警察に捕まるということではありません。物々しい雰囲気はそれほど感じませんが、施行直後はまだ認識が甘い方も多かったのか、ホノルル警察によると4月1日までに9人が逮捕され、180の違反チケットが切られたそうで、徐々に外出は本当に必要最低限にしなくてはという認識が強まっています。
『どうしても必要な外出』は何を指すかというと、医療機関への受診をはじめ、食料や日用品の買い出し、散歩・ジョギングなどのエクササイズ、そしてハワイらしいのがサーフィンも含まれていること。でもハワイの公園は全て閉鎖されているので、サーフィンのためにビーチパークを横切ることはOKでもビーチパーク内で散歩・ジョギングをするのはダメですし、公園でたむろするのも違反となります。
ショッピングセンターから人が消えた
「買い出しはOKだからといって毎日お買い物に行くのではなく、どうしても必要な時だけという意味です」とホノルル市長から再度の呼びかけもありました。今は街中の外出では犬の散歩やジョギングをする人など、通常の日曜の早朝程度に人がいるのを見かけるくらいです。
観光地であるワイキキは見違えるほど閑散としていますし、アラモアナセンターもごく一部のお店(テイクアウトをしている飲食店や食品店など)しか営業していないため不気味な雰囲気があります。
治安的にも不安を感じるので、ひと気のない場所へは近づかない方がいいでしょう。
人と人が近づかないことが大切
もともとマスクをする習慣がないハワイですが、今では少しずつマスク姿も増えています。それでも圧倒的にマスクなしの人が多いためか、本日ホノルル市長より外出時にはマスク着用の要請がありました。そのため今日はトイレットペーパーに続きマスクはどこで売っているかの情報のやりとりがSNS上でも盛んに行われることに。中々手に入らないので、マスクを手作りする人も増えています。
しきりに言われているのは『ソーシャル・ディスタンシング』=社会的距離を保つということ。
具体的には6フィート(約180センチ)以上と言われています。それにのっとり、スーパーマーケットのレジ待ちや銀行では床にテープが貼られ距離をあけるよう誘導していたり、入場制限を行ったりしています。
人と話をする時も少し離れていますし、テレビのニュースキャスター達も距離をとって出演しています。何かというとハグで挨拶をすることの多いハワイなので、ハグができなくて寂しいという多くのローカルの声も聞きますが、今は我慢です。
お年寄りに敬意を払い大切にするというのもハワイの文化のひとつで、銀行やスーパーでは最初の1時間をクプナ(ハワイ語で年配者の意味)専用時間にするなど、地域をあげてお年寄りを優先しよう、守ろうという動きも盛んです。
また、地域のサポートを!と、ある銀行が飲食店のテイクアウト料金を半額負担するキャンペーンを実施しました。SNSを活用し、後日ペイパルで半額分を振り込んでくれるというシステムで、飲食店と消費者の両方をサポートする姿勢が話題となり、最初の目標だった10万ドル(約1080万円)分の割り勘をあっという間に達成。飲食店を応援したい気持ちは山々だけど明日の我が身を案じる人も多い中で、この企画は大好評でした。
スーパーマーケットでは相変わらずトイレットペーパーなどの紙製品や缶詰、パスタ、冷凍食品のような保存の利くもの、除菌ジェルなどは品切れや品薄が続いていますが、野菜や肉・魚などの生鮮品、水などは充分あり今のところ特に困ることはありません。
ハワイの公立校は3月16日から1週間の予定だった春休みを延長し、今後はオンラインでの授業が検討されています。私立校ではすでにオンライン授業が始まっているところも。
最近はハワイのミュージシャンがSNSでライブを行ったり、オンラインでヨガ教室を行うところがあったりと自宅待機中の楽しみを見つける動きもあります。
観光業中心のハワイは大打撃 ここが踏ん張りどころ
とはいえ、観光客への自粛要請や航空会社の運休が相次いでいる影響で、現在ハワイ州全体で100近くのホテルが休館しているなど、観光産業が主なハワイはかつてないほどの厳しい局面を迎えています。
4月1日には3月の失業者数が11万人を超えたという発表もあり、今後の不安が募るばかりなのも事実。それでも今はとにかく早く新型コロナウイルスを終息させるために早く対処するしかないと、誰もが我慢の時と捉え、皆で頑張っていこうという意識が強くなっているのを感じます。
人間の出入りが少なくなったため、ワイキキビーチのど真ん中でハワイアンモンクシール(ハワイに生息するアザラシ)が日向ぼっこする姿や、自然環境が改善しているという話も聞こえてきます。もしかしたら今はハワイの土地自体にひと休みが必要な時間なのかもしれません。
「Don’t Spread Corona, Spread ALOHA!」という言葉が広がっているハワイはより良い復活を信じて踏ん張っています。
荒川れん子
ハワイ在住フリーアナウンサー
日本のテレビ局にアナウンサーとして入社し、その後フリーとなる。2007年にハワイに拠点を移し、テレビ、ラジオ、雑誌などでハワイ情報を発信している。ANA SKY CHANNEL『’AiNA HAWAii』出演中。
Instagram:https://www.instagram.com/renren_hawaii/
blog:https://ameblo.jp/hawaii-renkoarakawa