来世に期待する前に、まずは今世で幸せになろう - 蓬莱藤乃
※この記事は2018年12月31日にBLOGOSで公開されたものです
2018年もいろんな記事や映像が世間をザワつかせ、もやっとさせられました。その中でも個人的に気になったのが、オリエンタルラジオ中田敦彦さんが日経DUALのコラムに書いた『良い夫やめた』宣言でした。
中田さんくらい知性があるPERFECT HUMANでも夫婦関係がコントロールできずに悩むんだと驚いたのと同時に、奥様でタレントの福田萌さんがツイッターで『夫への感謝、賞賛はなおざりにしていました』と答えていました。
夫唱婦随。
知性派夫婦が四文字にすっきり収まる、いいやりとりを披露しました。
この辺はさすがご夫婦息ぴったりなんですけど、でも、外野の皆さんは、やりとりを見ていてすっきりされたでしょうか?
10月にこのニュースが報じられて以来、私はなーんか、もやもやしています。 このもやもやが何だろうと考えて、およそ2ヶ月。
少しもやが晴れてきた気がするので、少しずつ掘り下げながら記してみることにした次第です。
夫婦生活のすれ違い
まず中田さんは奥さんからの「ワークライフバランスは!?」「子育て手伝え!!」と求められれば、それに全力で応えるべく、外での仕事量を減らしつつ、収入は増えるように工夫。できるだけ育児に参加できるように努めたそうです。すごく立派だと思います。ご自身でもその結果には自信があったのに、褒めて欲しい奥さんから返ってきた言葉が「あなたは何も変えてくれなかった」「もう耐えられない」。
顔を合わせながら生活していたはずなのに、意識は物凄くすれ違いっていたわけです。
その後、中田さんは記事の上では全女性の味方としながらも、実際の生活では理想の自分とは別人になっていることに気がついて、一旦自身への課題をやめてみようと考え、それが『良い夫やめた』発言につながりました。
受けて奥さんの福田萌さんは反論せず、甘えていましたと反省の姿勢を見せていましたね。
丸く収まっています。
でも、その反省、本当?と思わずにはいられません。
もう耐えられないとまで言った人ならば、相当我慢していたはずです。ただ、福田萌さんも知性派です。
良い夫やめると言われれば、家の中のもめ事を長引かせるのは得策ではないと、自分の主張は一旦引っ込めて沈静化を図った、というふうには考えられないでしょうか。私は福田さんの反応を見て、怒りを交えてまで伝えたかった本来の思いが未だ旦那さんに通じていないのではないかと感じて、気の毒だなと思うようになりました。
福田さんが世の中に向けて主張しなかった部分は推測の域を出ませんが、一般に妻サイドから見た夫との世界はどうなっているのか、一例をお示ししてみます。
男女の思考パターンの違いが悲劇を呼ぶ
家庭を持つ多くの男性は家事にも協力的です。妻サイドから見ると、その仕上がりには思うところがあったとしても、お願いしたことはやってくれる。夫はミッションを遂行したことに満足して、「やったよ、見て見て」とニコニコしている。
一方妻の心の中は、その忠実さを感じてぐっとこらえるけど、『こどもをお風呂に入れるだけじゃなくて、上がったらタオルで拭かなきゃいけないし、パジャマだって着せなきゃいけないのに、何で台所で火を使っている私に『上がったよ』と託す?』と、軽く殺意を抱く……。
よくある光景です。
その時『些細なことだから我慢しよう』と苦虫をつぶしたような妻の顔を見て、夫は『こどもをお風呂入れてって言うから入れたのに?』と、頭の上にハテナマークをいっぱい付けることになるでしょう。
あー、すっごいすれ違ってる。
夫の主張は『言われたことはしっかりやった』、妻の主張は『言われたことだけやればいいってもんじゃない、次は何が必要か、空気を読んで考えて!』です。
こんな些細なすれ違いの積み重ねで『家のことに協力的じゃない』『それじゃもう手伝わない!』と言い争いに発展するのです。
身に覚え、あるでしょう?私にはあります。
やがて顔を合わせるだけでお互いに不愉快スイッチが入るようになり、次第にうちに帰るのも嫌になり、外に部屋を借りて……と、負の連鎖が止まらないことになります。
どっちもこの人ならばと思って結婚したのに。なんでこんなに傷つけあうのか。
男とはこうで、女とはこうであると、昨今の医学部入試じゃあるまいし、人を二分割することなんてできるとは思いません。個人差だとは承知していますが、男女それぞれに考え方の傾向はあるようには思います。
たとえば、男性の場合、言われたことを忠実に遂行するシングルタスクが得意。 だから家の中でも、中心にいる妻のオーダーに応えようと頑張り、その達成度を確認して『頑張ったでしょ、褒めて』と思っている。
一方、女性は料理を作りながらこどもの宿題もチェックして、ママ友から来たLINEに返事をする。思考があっちこっちさまよいながらでも、やらなきゃいけないことに向かって邁進します。マルチタスクが得意です。
そこにバスルームから「上がったよー」と夫から声をかけられると『そこくらいは自分で最後までやってよぉ!』と思いながら、マルチタスクができちゃうから、こどもを受け取る。
そうやって妻の感情は歪められていくわけです。そして夫は認められないことに鬱憤を溜めていくわけです。
ではどうしたら夫も妻もハッピーでいられるのか。
これを2ヶ月考えました。ストレスを溜めたまま正月休みに突入するのは、みんなつらいはずです。私の仲間たちもつらい思いをしているひとでいっぱいです。そしてひねり出した答えが……
夫も、もうひとりの妻になればいい。
何のこっちゃ?でしょう。
極端なたとえですが、妻が今、突然この世から姿を消したとしても、夫がすぐに妻の代わりができるレベルにまでになっていてほしいと、世の中の多くの奥さんはそう思っているのです。
イクメンを求める妻は、夫とふたり、両輪で家庭を運営することを望んでいるのです。楽をしたいからそう思っているわけではないのです。エンジンを2つ積んで、幸せに向かってより力強く歩んでいきたいのです。
家のことは妻がリーダーの方が楽でしょうけど、夫さん、あなたご自身の家 のことです。妻の手伝いではなく、主体性を持って取り組んでほしい。 あなたの奥様はそう思っていらっしゃるはず。
そうだと仮定すると、旦那さん方、求められているミッションは方向性を少し変えるだけでいいんだと思いませんか?確認しながら率先してやればいいのです。今までやってきたことと作業はそんなに変わらないはずです。
夫と妻の役割を今すぐ取って代わることができるくらいになったら、奥様も有難うと感謝を口にしながら、お腹の中では『結婚前に吟味した甲斐があったわ、さすが私』と納得していることでしょう。
とは言ってみたものの、道は厳しいと思います。
でも来世の幸せに期待する前に、まずは今世で幸せになるために。まずはこの年末年始、奥様に対して手伝いという概念は捨てて率先して家のことに参加してください。
そして奥さんは旦那さんに自分の思いを伝えることを諦めないでください。
それも難しいわとお嘆きの場合は、食卓では夫婦横並びになってみてはいかがでしょうか。目を見なくて済むのは少し気が楽です。
まずはざわついた心を落ち着かせて。
諦めないで。
健闘を祈ります。