湾岸警察署から出てきた田口淳之介('19年6月)

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 古いブルーレイディスクを整理していたら『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)が録画されていて、4人時代のKAT-TUNが出ていた。現メンバーの3人プラス田口淳之介(36)という構成だ。

【写真】薄っすら笑っていると話題になった移送時の田口淳之介

 ただし、2016年2月の回なので、その春でのグループ脱退とジャニーズ退所を発表していた田口にとって、最後の『Mステ』である。

 それから6年、いろいろなことがあった。

田口淳之介のこれまでと最近

 '17年には、メジャーレーベルからソロデビュー。しかし、'19年、事実婚の相手といわれる女優・小嶺麗奈(41)とともに、大麻取締法違反の疑いで逮捕されてしまう。懲役6か月、執行猶予2年の判決を受け、活動は再開したものの、失速感は否めない状況だ。

 そんな田口がネット番組『迷えるとんぼちゃん』に登場。「けっこう何でもできちゃう」「器用貧乏」なタイプゆえ「個性が薄れていく」「自分の可能性が広がりすぎちゃってる」などと自己分析した。

 たしかに、今年3月には麻雀のプロテストに合格するなど多才なところは示しているが──。MCの加藤浩次からは「何でもできるってことは、何もできないっていうこと」とダメ出しされ「捨てろプライドを。KAT-TUN時代の栄光を捨てろ」と諭された。

 また「コアは音楽。それがやりたくてひとりで旅立った」とも語ったが、それならなぜ麻雀なのかというツッコミもネットにあがっている。

辞めジャニが陥りがちな“錯覚”

 では、どうしてこういうことになっているかというと──。“辞めジャニ”が陥りがちな錯覚が原因だろう。そもそも、アイドルというのは曖昧で不安定な存在。「人気」という実にふわっとしたものに支えられている。初期のKAT-TUNが大ヒットを連発できたのも「人気」の後押しがあればこそだ。

 まして、田口はグループのエースというわけでもなかった。「入り口、出口、田口です」という自己紹介ギャグも、硬派なイメージのグループ内でやるボケだから有効だったのだ。

 韓国公演の際には「イック(入り口)チュック(出口)タグチ(田口)ムリダ(です)」という韓国語バージョンを披露。のちに「どんずべりしましたね」と自虐して笑いをとっていた。そういうキャラだったのである。

 とはいえ、この人気と実力をめぐる錯覚を修正するのは難しい。例えば、彼は逮捕される直前、岩手県平泉の恒例行事『春の藤原まつり』に源義経役で登場。20万人もの観客を集めた。全盛期の滝沢秀明が登場した'05年の30万人には及ばなかったものの「毛越寺があれだけ人で埋め尽くされた東下り行列は久しぶり」(観光協会)と地元を喜ばせたものだ。

 つまり、ジャニーズを辞めてもそれなりに人気者ではあるのだが──。ただで有名人が見られるから集まる人たちと、カネを払って曲を買う人たちとは別モノなのである。

 ちなみに、前述の『Mステ』では中丸雄一(36)がタモリを描いたイラストを持参してトーク部分の主役になっていた。こちらは「何でもできちゃう」というより「何でもやります」的なスタンス。それがよかったのか、この春『朝だ!生です旅サラダ』(テレビ朝日系)の2代目レポーター役に選ばれた。『シューイチ』(日本テレビ系)と合わせ、土日の朝のレギュラーを獲得したわけだ。

 グループ内では似たポジションだっただけに、田口と中丸の違いは象徴的だ。辞めジャニと現役ジャニーズの間にある壁は思いのほか大きい。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)