コメンテーターをはじめとしたタレント活動のほか、俳優としても活躍するサヘル・ローズさん。今年1月に上梓した『言葉の花束 困難を乗り越えるための“自分育て”』(講談社刊)では、いろんな痛みを抱える人たちに向けた言葉がつめ込まれています。

サヘル・ローズさん「前向きに生きる」原動力とは?

サヘル・ローズさんはイランの出身で、幼少期を孤児院で過ごし、養子縁組をした養母と8歳のときに日本にやってきました。今回は、さまざまな経験をされてきたサヘル・ローズさんが考える自分の労り方や磨き方についてお話を伺いました。

●大事なのは「自分探し」ではなく「自分育て」

――最近よく耳にするようになった「自己肯定感」というワード。読者の中でも、自分自身を肯定できない、自信がもてない、という人も多くいるかと思います。サヘルさん自身が肯定感を高めるためにされていることはありますか?

サヘル:「自分探し」をせずに、「自分育て」をしています。

「自分探し」って、自分は「ここ」にいるのに探していて、今いる自分を認めていないんですよね。自分探しをするのは、嫌われる勇気がないこと、だれかに好かれたい意思があるから。

嫌われる勇気があることで、自分を客観的に見られるようになります。私はその勇気をもった瞬間に好きになってくれる仲間と出会えました。

難しい感情ではあるんですけど、自分を信じてあげること、自分の弱さを長所に変えていくことを大事にしています。だから、みなさんにも自分を信じて、自分を育ててごらん、って伝えたい。自分をちゃんと認められたときに、他者のことも好きになれますよ。

――自分を信じてあげる、ということもですが、自分の愛し方が下手な人も多くいます。自分を信じる、愛してあげるコツなどはあるのでしょうか。

サヘル:日本社会で自己肯定力を上げるためには、幼少期から親が自分の子どもをちゃんとほめてあげること、その子の個性を見つけてあげることが必要だと思うんですよね。そういう言葉をちゃんと聞いてきた子どもは自信がもてるし、比較されてきた子どもは自信をもちたくてももてない。

自信をもつ、自分を好きになるということは、他者からの影響もあるので、ひとりひとりの人間が出会った人にどういう影響を与えるか、ってすごく重要だと思うんですよね。私は出会ってきた人たちには、その人のすてきなところをちゃんと伝えてあげたい、と思っています。

●すてきなものに触れることで、内側から輝く

――出会った人のすてきなところを見つけるためにご自身が心がけていらっしゃる点はありますか?

サヘル:中学時代、私もいじめっ子のことを「こんちくしょー!」って言っていたんです。本にも書いたんですけど、パンの生地をこねながら、叩きつけながら。そうしたら、お母さんが「自分の顔を見なさい、醜いよ」って。人の悪口を言ってるときの口は汚くなっているし、人の悪いところばっかり見つける目はなんの輝きもないよ、って。

本当の美しさは、外面ではなく、中からあふれ出すものだし、優しさはつくれるものでも買えるものでもありません。だから、もっともっといろんなすてきな言葉に触れたり、すてきなものをみつけられる目とすてきな言葉を紡げる口になりなさい、って言われたんです。

人と出会ったときに、その方のすてきなところを見つけていくうちに自然と視野も広がっていくんですよね。

●自分自身に「お疲れさま」と言ってあげる

――ご自身の生活で大切にされていることや、さまざまな活動をされるうえでの原動力はどこからでてくるのでしょうか?

サヘル:毎日、お母さんの目を見て、「おはよう」「ただいま」ということを大切にしています。あとは、日常を噛みしめるということと、自分に「お疲れさま」って言ってあげること。負けず嫌いだし、自分に厳しいタイプなので、定期的にそう言って自分との対話を大事にしたいですね。

私の原動力は、向き合っている人たちの存在ですね。出会ってきた人たちが羽ばたいていったり、笑顔になるのを見たい。出会った人の夢を応援することが生きがいなんです。だから1人になったら原動力は生まれてこないと思います。

親だって原動力は子どもや家庭だし、人って多分無意識に原動力は自分じゃなく、人がいてこそだと思います。

――幅広い活動をされているなかで、これからのご自身の理想や夢はありますか?

サヘル:唯一言えるのが、ロールモデルをたくさんつくっていきたいということです。

今、関わっている施設の子たちや退所した子たちだったり、差別だったりいじめを受けていた子たちにも、こういう生き方があって、ちゃんと自立して生きることができるんだよ、って。

それは自分の背中を見せないとダメですし、常にアクションを起こして、なにか企画を考えて社会を巻き込んでいくことが目標ですかね。

●人を幸せにするためにまずは自分を大切に

――最後にESSEonlineの読者に向けてメッセージをお願いします。

サヘル:すべての人たちに言えるのは、立ち止まることはすてきなことなので、がんばりすぎないでください。ちゃんと自分を愛せていますか、幸せですか、って。

人を幸せにするために、まず自分を大事にしてください。もし生きづらさを抱えていたり、今いる場所に違和感を持ったら、それを変えられるのは自分自身しかいません。

苦しいときにそこに居続けることで、もっとしんどくなるのであれば、変わるという勇気も必要ですし、変わったときは、それが軌道に乗るまで時間はかかります。桜の木だって、立派になるまでには時間がかかる。けれど、自分の信じたものと種まきと、ちゃんと向き合うことを正しく突き進んでいけば、そこに集うものはあります。

いくつになっても、自分がやりたいことを諦める必要はないですし、それが親になったとしても関係ない。人生は一度きりです。後悔はつきものゆえに、後悔の数は減らしてほしいと思います。