西九州新幹線の拠点「大村車両基地」完成 やや小規模もポテンシャル高? N700S「かもめ」も歓迎
西九州新幹線 武雄温泉〜長崎間が2022年9月23日にいよいよ開業を迎えます。それに先立ち、開業区間を受け持つ「大村車両基地」が完成、内部が公開されました。
9月23日の開業まであと半年
車両基地の検車庫に留置されるN700S「かもめ」(乗りものニュース編集部撮影)。
2022年9月23日に開業を控えた西九州新幹線 武雄温泉〜長崎間の開業に向け、車両の拠点となる長崎県大村市の「大村車両基地」が一足先に完成を迎えました。3月19日(土)に関係者や報道陣を対象にした完成記念式典と現場見学会が行われ、内部の様子が公開されました。
大村車両基地は新幹線の新駅「新大村駅」の北側、大村市中心部からは約5km北に位置します。なお、新大村駅は在来線であるJR大村線の駅も設置されます(諏訪〜竹松間に新設)。
今回の開業区間は他のどの新幹線路線ともつながっていないため、夜間の滞泊や折り返し列車の待機などのほか、車両の検査などすべての役割を大村車両基地が受け持ちます。これは九州新幹線の最初の区間である新八代〜鹿児島中央間が開業した時と同じで、当時は川内駅南側に「川内車両基地」が設けられていました。
西九州新幹線の全車両の面倒を見る重要な場所ですが、全車両と言っても、開業当初は6両編成が4本。収容力としてはそれらを賄えればいいということで、敷地面積は11ヘクタール。全景はこじんまりした、どこかアットホームな印象です。とはいえ、将来に備えてある程度の拡張に余裕はあるとのことです。
構内の配線は、2本の留置線に加え、点検用の施設として、仕交検庫には「仕交検線」2本と「全検整備線」、台振庫には「車体検修線」「台振線」、それらとは別に緊急点検用の「臨修線」「転削線」。さらに保守用点検車の待機する留置線などがあり、これらが敷地内に収まっています。
台振庫では新幹線の車両をまるごとジャッキアップする機械があり、点検のため取り外された台車は、90度回転する転車台などを通じて庫内の別の線路に移されていきます。台車の重さは7トンで、大人2人が手で押せば線路上を転がして運べるといいます。
仕交検庫には台振庫ほどのアクロバティックな設備はありませんが、各線路は高い位置に据え付けられていて、線路の間と下部の空間から、車両底部や台車が目視確認できるようになっています。さらに天井から側面下部までくまなく点検・整備できるよう、無数の点検用通路や作業台、照明が配置されています。
「最初の住人」もお出迎え
この仕交検庫へ、納入された最初の車両1編成が留置されていました。西九州新幹線の車両「かもめ」は、東海道・山陽新幹線で走っているN700S系新幹線を、西九州新幹線用に6両編成に組み換え、紅白のカラーリングやからし色のシートをはじめとするオリジナル内外装に改造したものです。
ピカピカのN700S系「かもめ」は、ヘッドライトとテールライトを点灯し、「かもめ101 長崎」「自由席」といったLED表示器を光らせ、約半年後のデビューを待ち遠しげな雰囲気でした。
この車両基地でもうひとつ特筆すべきことは、隣接する在来線のJR大村線に新駅「大村車両基地駅」が開設されることです。駅名が「車両基地」を冠するのは異例のことですが、新幹線を親しみやすい存在にするよう、付近に車両基地を観察できる公園施設を設ける計画もあります。
大村市の園田裕史市長は記念式典の挨拶で「長崎空港に長崎自動車道のIC、そして今回、新幹線が開業して、高速交通の『3種の神器』を大村市は兼ね備えることになります」と嬉しさをあらわに。西九州新幹線唯一の車両基地を、市の新たな観光スポットとして、また市民に愛される施設としていきたいと意気込みを語っていました。