NEXCOなどの高速道路会社が2022年度以降、GWやお盆、年末年始期間などに休日割引を適用しないことを発表。これに二輪車業界が怒りの反応を示しています。長年の悲願「二輪車の定率割引」が、出だしから骨抜きになるのか――との声です。

割引を発表する前に「割引しない」発表

 NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)と本四高速、宮城県道路公社は2022年3月16日(水)、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始期間に22年度以降、高速道路の休日割引を適用しないことを発表しました。このことを知った二輪車ユーザーの多くが戸惑いと批判の声を上げています。今年4月からスタートする二輪車の車種区分をにらんだ「二輪車定率割引」が、いきなり骨抜きになる可能性が高まったからです。


ETC搭載バイクを対象とした高速道路料金の定率割引が4月から始まる予定。写真はイメージ(画像:写真AC)。

「9か月も待たされたあげくに、大型連休は割引しませんって。高速道路会社とは何度も話し合いをしているのに一切説明なかった。これはないでしょう」。オートバイ業界関係者があきれ顔で語ります。

 全国の高速道路では普通車・軽自動車を対象に、土日祝日と大型連休に連続する一部平日で、通常料金から30%を割り引く「休日割引」を実施しています。2022年4月29日から2023年1月3日までの春、夏、年末年始の大型連休あわせて13日間の割引を停止します。「繁忙期に渋滞が激しくなるから」というのが、その理由です。国の委員会での指摘を受け、国土交通省から道路会社に依頼したものとされています。

 休日割引のきっかけは、土日や大型連休に事業系車両の利用が激減するため、割引を通じて普通車を誘導、高速道路の有効利用を図る狙いでした。通行料金の車種区分で二輪車は軽四輪車と同じ「軽自動車料金」なので、同じ30%の割引を受けることができます。

 一方で二輪車ユーザーが問題にするのが、今年4月からスタートする「二輪車だけを対象にした休日割引」です。高速道路会社が二輪車の「定率割引」と呼ぶ制度ですが、二輪車に限定されているだけで、条件は先の休日割引と同じ。割引率だけが普通車の通常料金の半額(=軽自動車の37%引き)になるというものでした。両方の割引は重複して受けられません。7%の違いでしかありませんが、二輪車ユーザーにとっては“悲願”の第一歩でした。

 二輪車の定率割引は2021年6月に与党合意がなされ、同月にNEXCO3社が実施を表明しています。「軽四輪車と二輪車が同じ料金区分なのは、国土交通省がいう利用に応じた公平な負担ではないと20年以上訴えてきた結果だった。それが突然、全体像が示される直前に、割引しない発表が先に出た」(前同)

同じ条件、同じ利用で割引の適用を変えられるのか

 二輪車割引の制度が実現するまでには、政治の理解がありました。自民党二輪車問題プロジェクトチームの新座長・三原じゅん子参議院議員は、二輪車料金についてこう話しています。

「私たちが時間をかけて議論をしてきたのは、高速道路の料金だった。誰に聞いても二輪車が軽四輪と同じというのは理解できない。それが国民の普通の感覚」

 再び業界関係者が話します。

「1年近くたっても、いまだに開始日さえ決まっていない。それより先に大型連休は割り引かないということが発表された。休日に限定したのは、国土交通省が平日は利用が見込めないからと言い始めたことなのに、二輪車割引がますます使えなくなる」


4月はじまりの二輪車の「定率割引」が3月半ばになっても「正式に決まっていないのは、ちょっと問題だ」と指摘する逢沢一郎オートバイ議連会長(左)。右奥は国土交通省高速道路課(中島みなみ撮影)。

 国交省は休日割引で大型連休などが除外されても、二輪車割引を見分ける方法はあると話します。

「利用者が二輪車割引を受ける場合は、事前にオンライン予約が必要。ここで二輪車割引を申し込めば、高速道路会社が割引制度を見分けることはできる」(高速道路課)

 逢沢一郎自民党オートバイ議員連盟会長は17日、超党派のバイカーズ議員連盟の会合に出席。こう訴えました。

「バイクの休日割引の普通車料金の0.5にするという大きな計画の中でのステップ。本来ならとっくの昔に始まっていなければならないこと。我々も100歩も200歩も譲って2022年4月ということをのんだ経緯もある。大型連休を外すというのは何考えているのだということに100%なる」

 しかし、国交省高速道路課は、その取扱いについて「会社に働きかけをしていく」と明言を避けました。